第3話
「魔王を倒した?」
「セインがね」
後日、母に魔王をセインが倒した事を伝えていた。
「それは…。えぇ…」
「俺もやばいと思ったよ」
「地球征服出来るんじゃないの?」
「まぁ、セインはそんな事しないだろうし」
そう言いながら俺はセインの頭を撫でる。
セインは気持ち良さそうにしている。
「ねぇ、目の前でイチャイチャしなえでくれる?」
「ごめん」
「まぁ、良いでしょう。この事は上にも話さなきゃ行けないし」
「そっか」
「じゃ、下がって良いわよ」
「失礼しました」
俺が母の部屋から出るとティルがいた。
「お待ちしておりました。ウィール様がお見えになられております」
「そうか。ありがとう」
俺は、急いで玄関に向かった。
「遅いよ。フレム」
「悪い。魔王の件で母に用事があったから」
「良いけど」
「で、何しに来たんだ」
「リティ。早く準備して」
「お前は準備が早すぎるんだよ。待ってろ」
「了解ー」
「ティル。急いで冒険の準備」
「かしこまりました」
二分後…。
「待たせたな」
「ほんとだよ。ほら、早く行こう。相棒」
「あぁ、そうだな相棒」
そのまた、更に三十分後。
「よし!今日のクエスト終わり!」
「疲れたー」
「えー、私はまだまだだよ」
「まじか」
「じゃあまた、明日いつもどうり」
「わかった」
「じゃ、」
「「また」」
お前、来んなよ。
あぁ、また、この夢か。
水をかけられる。その臭さに、消毒液だと、分かる。
汚ない。
何だよ。このクソどもが。
この空間にいないでよ。
場面は変わり、駅になる。
キンコンカンコン-!
電車が来る音がした。
ドン!
俺はホームに落ちた。
いや、落とされた。
それから俺は-。
「はぁ!ふぅ!」
夢から覚めたがまだあの続きなのか、分からない。
前世でのいじめ。
これの他にも、嫌な事が沢山あった。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
大丈夫。大丈夫さ。
「俺はもう、あの頃の俺じゃない」
俺は、ただのいじめられっ子から、この世界で、とても信用されてる、
フレム・リティアになったんだ。
「大丈夫。大丈夫。大丈夫、だから」
俺はいつも、こう言う。
俺は、我慢出来る。いつか、忘れるさ。
いつか。
-いつかっていつなんだ?
繰り返す、自問自答。
俺はいつからこんな、
弱くなったんだろう。
「行って来ます」
俺は何も無かったかのように、出ていった。いつもみたいに、あいつに会いに行きに。
「リティ、遅い」
「ごめん。ウィル」
こいつとなら、何かバレるような事は無い。
「待って。リティ」
「何だ?」
「何か、あった?」
「…いや、何も」
一瞬、黙りかけたが言葉を紡ぐように、すぐに返した。もちろん、笑顔で。
「いや、顔に書いてある」
「…」
「リティ、いつもと顔が違う。何日いると思うの?」
「…。は、はは。何、言ってんだよ。違う?大丈夫。大丈夫、だ、から。」
「じゃあ、何で、」
ウィルは俺の頬に手を当て言う。
「泣いてるの?」
「えっ?」
俺も頬に手を当てると、涙が手に伝わる。
「え、何で、だろう。だい、じょぶなのに。俺、は泣か、ないの、に。何で、な、何で、」
「素直に言って。何があったの?」
「言える、訳」
「馬鹿なの!?そうやって自分で抱えてないで、ちゃんと私にも言ってよ!」
「言いたいよ!でも、あれのせいで、人の事を信用出来なくなったんだ!」
「…」
「だから、俺は忘れたい。なのに脳にこびり付いて消えない」
「じゃあ、私が信じさせてあげるよ」
「えっ?」
「フレムは誰の事も信じなくていい。でも、私の相棒は、リティは、私を信じて。相棒として、一緒のパーティとして、信じて」
「…」
俺はどうするべきか。
分からない。だけど。
「信じて、か」
「?」
「良いよ。話すよ」
「言っとくけど、無理して話さなくてもいいから」
「まぁ、な」
「で?」
「俺は、生前の記憶を持っているんだ」
あれは、俺が今の歳ぐらいの時。
俺は、虐められていた。
それも、本格的に。
物を壊され、体に消毒液をかけられ、罵詈雑言を言われ、殴られ、挙句の果てには、
電車が来る時に押されて、死んだ。
気づいたら、この世界に生まれていた。
「転生って言ったら分かるのか。俺は、前のまま、弱くて救いようが無いまま、この世界に来たんだ」
「何で、やり返さなかったの?」
「…。そうか。この世界にはあるのか。あっちの世界は魔法何て存在しなかった」
「それでも…!」
「俺は、お前が思っている以上に弱かったんだ」
「…」
「俺には、力なんてなかったんだよ」
「じゃあ、そうやって人の事を信じ無いで生きてきたの?」
「うん」
「実の母も?」
「…」
「婚約者も?」
「!…」
「そこら辺の人も?いつか知らない人がリティを助けても?」
「ち、ちが…」
「あなたが言っていることはね。そういう事なの。皆はリティの事を助けて来たのに。それでも、リティは誰も信じれなかったの?」
「…」
「もし、そうならここにリティはいない。リティが知らないうちに人の事を信じているんだよ。ここまで落ちこぼれにならなかったのも我慢したんじゃなくて楽しかったんでしょ?」
「!」
「なら、それはあなたが実感していないだけ」
そうだ。俺は、俺たちはいつも何処で誰かに助けられてる。
誰も誰かを信じなければ、人類は発展しなかったのかもしれない。
誰も信じれず生きるって言うのはとても難しい事だ。
人は誰しも、誰かを頼る
だから、俺も、こいつに頼っていいのでは、無いだろうか。
「これは、一本やられたな」
「勝った」
「なあ、ウィル」
「何?」
「もう1個、悩みを吐いていいか?」
「任せて。相棒」
俺は、前世では愛されていた
それは、とても歪な形で。
親に『愛』と言われて殴られた。
親に『愛』と言われてやりたくもない勉強をやらされた。
親に『愛』と言われてお小遣いで買ったゲームを目の前で壊された。
女子に『愛』と言われて意地悪をされた。
女子に『愛』と言われて自分の給食に髪の毛を入れられた。
女子に『愛』を言われ断っただけなのに誹謗中傷をされた。
男子に、女子から『愛』が欲しくて俺を潰そうとされた。
男子に『愛』を吐け言われ、ブサイクと付き合わされ、
そいつに『愛』と言われレイプされた。
誰かが使い物にならない俺を『慈愛』だと言って線路へ突き落とした。
「俺は、そんな『愛』を皆に持ちたくなかった。けど、歪な『愛』を向けられたから正しい『愛』が分からなかったんだ」
「…ごめん。だから、信じられなかったんだねフレムの事も分からないで偉そうな事を」
「いいんだよ。全部、俺に響いたから」
「…ねえ、フレムのその歪な『愛』を無くすにはどうしたらいいと思う?」
「分からない。やろうとしたことは無い」
「きっと、正しい『愛』で埋めつくすしかないんだと思う」
「確かにな」
「…難しいと思う。けど、やってみて。あなたには、あなたの事が好きな人がいるんだから」
「ありがとう」
俺が正しい『愛』に、出会うのは長くなりそうだ。
だが、正しい『愛』を俺に向けてくれる人たちかみいるんだ。
きっと治るさ。
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