第2話

馴れ初め

【シリアside】


第5回戦目(準決勝)


『国守選抜が始まってからもう準決勝!この戦いに勝てば、決勝へと進みます!』


私は準決勝まで勝ち上がっていました。

私は、この国守選抜に買ってお母様に認められないと…!


『シリアは無理しないで国守に入らなくてもいいのよ』


私の顔を見ずにそう言った母は私に期待などしていないような話し方だった。


『フリア。もしシリアと戦う事になったら手を抜かないようにしなさいね。例え、それが最終決戦でもね』


『分かってます』


そんな話も、兄としていた。


『シリア…。さっきの話を聞いていたのか』


『…お兄ちゃんもお母様も嫌い!』


『シリア!』



私は、私は今、自分の為に立っている。

それを誰かに倒されたりされたくない。


『戦うのはフレム・リティアVSシリア・ウォード!』


「フレム・リティア…」


戦闘の名家として有名なリティア家の息子。

きっと、私より強いのだろう。


そんなの、知った事ではない。

私は、愛用の剣を持って戦いの場へと向かう。


『さて、両者準備が出来たようですので始めと行きましょう!』


始まりの合図がなる。

それと同時にウォーターソードを発動させる。

私が持っている剣を纏わせるように、水が集まっていく。


私は、魔力の質が悪く、連発は出来るが、射程や威力は弱い。

水の剣もすぐに崩れてタダの水になって落ちてしまう。


だからこうして硬い鉄の剣に纏わせて少しでも強度を強くしている。


そうして、私はフィールドの隅から隅へとワープする。


ワープは練習したからか、遠くまで届くようになった。

が、街から街へとワープ出来るわけではない。


ただし、連発は出来る。


そんなメリットデメリットが私の微妙が目立つ。


貴族ではないような弱さなのに、貴族でいる物を持っている


私は、こんな自分が嫌いだった。


でも、こんな自分でもここまでこれた。


だから。



私はここで負ける訳にはいかない。


殺すつもりで、首に切りかかる。


「ファイヤシールド」


「!?」


後ろを守る盾は私の剣を跳ね返した。


火の盾だけで跳ね返す威力。

この人の魔力の質は、とても濃厚らしい。


「楽しめそうね」


緊張感。

それが私の体を一気に蹂躙する。

ゾクゾクする。

命懸け。

そう思うと、必要以上に。


「楽しくなってきた…!」


ワープして正面に襲いかかる


「フレムソード!」


パリィの体制に入ったが、ワープして上から剣を突き立てる。


「ファイヤ!」


「クッ!」


飛んできた火玉は私の頬を掠める。


早い…!それに、


私はヒリヒリする頬に手を当てる。


かなり痛いな。


私は、今まで様々な危機に直面してきた。


それは兄や母によって解決されたが、最近は私が解決するようになっている。


命の危険に関する危機だって。

私1人で根元まで燃やし尽くした。


私を圧倒し、兄を負けさせ、堂々と立っているその人に恐怖を抱いた。


「フフフ…。私の勝敗はもう決まっていたのですね」


私は、戦いが決まる前に負けを認めた。

なら私に出来ることは足掻く事だ。

負けると分かっていても足掻く。


「はぁぁぁぁぁあ!」


攻撃する。

受け流される。

跳ね返される。

遊ばれてる。


もっと、もっと!魔力の質を高めろ!

高みを目指せ!認めてもらうんだろ!


バァン!


私のおでこに痛みを感じる。

あぁ、撃たれたのか。


魔法で守られててよかった。


負けた音。

勝利のラッパは、私にそれを示していた。


「フフ…フフフ、アハハハハハハ!」


そういえば何処かで見た頃ある。

人は魔力の質や量を過剰に高めるとになると。


「ヒュウッ」


短く呼吸して襲う。

それは、前までの私とは速度も威力も違うものだった。


「ッ!?」


相手も流石に対処しきれなかったのか攻撃を受けた。


「グハッ!」


戦い終わりは命を守る魔法も無く、痛みも数倍に感じる。


だから彼は痛んでいた。


「お前…!往生際が悪いぞ!」


彼にそう言われる。

私は、それに答えずに体の奥底で湧いてる感情に従った。


「アハッ…」


ワープして彼の後ろに行く。


「フレムカード!」


そんな脆い盾を無くし、彼を切りつける。


「はぁっ!」


その瞬間パリィして隙が生まれる。


「誰か!コイツに睡眠魔法か、魔力吸引魔法を!早く!このままじゃ死人が出るぞ!」


「ハハッ。あなた死ぬ覚悟は出来ているのね…良いわ、その顔!恐怖!その顔をもっと見せてちょうだい!」


「やはり、魔力暴走か…」


「そう!そのおかげでとても気分がいいの!」


「悪いがお前には止まってもらう!」


彼はそう言いながら私に対抗してこようとする。

でも、対抗する力は弱っている。


多分、次の決勝で余り力を使いたくないのだろう。


けど、そんなの知ったこっちゃない。


「ねぇ?どんな気分?」


「最悪な気分だな」


「フフ、それ遺言にならないといいね」


彼が受け止めている剣から剣を離し、

隙が出来た横腹に回転斬りを。


「クゥゥゥ! 」


なっ!?受け止めた!?


彼はパリィしてそのままカウンターしてこようとする。


止めようとしても、体が反応しない。

むしろ、受け止めようとしている。


あぁ、私の中の私が、止めてくれたんだね。


ありがとう。もう、皆にかけないですむよ…。


私は振り下ろされる剣に身を捧げ、目を閉じる。


…痛みが来ない。

むしろ、温かくて気持ちのいい…。


「ん…」

知らない天井。

辺りを見渡すとお母さんが涙目でこちらを見つめていた。


「シリア!」


「あれ?お母さん?私…死んだんじゃ…」


「そんな訳ない!」


「そう…なら良かった」


「シリア…何で無理したの?」


「ごめん。私は、お母様に認めて貰いたくて」


「そんな呼び方止めて。認めて無いだなんて思わないで」


「じゃあ、なんで国守に入らなくていいだなんて…」


「国守はシリアが思うような所じゃないの」


お母さんはその重い口を開けて話してくれた。


「国守は今、起動していない。国守はいま雑用として馬車馬のように働いているわ」


「そんな…」


「私はそんな所に行って欲しくなかったの」


「ごめんお母さん。私、そんなのも知らないで嫌いとか言っちゃった」


「いいの。私はシリアが安全で嬉しいの」


「…そういえば、戦っていた彼は?」


「魔力の使いすぎで済んだみたい。今、魔力回復のポーションを使う事を決勝相手と大会側が許可したわ」


「戦いは?」


「彼が勝ったわ。中々激しい戦いで、避難指示が出たけどね」


ガードで観客に、魔法などが当たらないようにしているのに避難が出ている程とは…。


到底、私には無理な戦いだったのだろう。


「シリア。とりあえず体の回復に集中しなさい」


「わかった」


そして、これで終わった。


そう、思っていた。



1週間後…。

あれから回復に集中していたおかげで1週間で体は動くようになったが、魔法は使えないようだった。

病院からも、退院して気分転換をしようと出かけた矢先。


「お嬢ちゃん…。お金ないから、恵んでほしいなぁ…」


と柄の悪い人達に絡まれていた。

生憎、魔法は使えない。


「誰か!助けて!」


と叫んだ。

その声にすぐ誰かが駆け寄る。


「うるせぇ!騒ぐんじゃねえ!騎士が来たらどうすんだ!」


とチンピラが殴ろうとするが、


「お前も騒ぐな」


と風魔法で倒して立ち上がれないようにした。


「大丈夫?怪我とか無い?」


この人は…フレム・リティア。


「はい…」


「名前は?」


「シリア・ウォード、です」


「もしかして、フリアの妹さん?」


「は、はい」


「そうか…」


彼は何か考える素振りをして


「じゃ、ウォード家までひとっ飛びしますか」


と訳の分からない発言をした。


「えっ…?」


「お嬢さん、捕まっててね」


「え、ちょちょ!」


シリアをお姫様抱っこして飛ぶ準備をする。


「ウィンド!」


「きゃー!」




空を飛んで行く。


「空、空を飛んでいます!」


「ちゃんと捕まっててね」


「は、はい!」


「おっと」


風が吹いて落ちそうになる。


「キャー!」


「ごめんごめん。落ちそうになった」


「ほ、本当に大丈夫なんですか」


「…キツイかも」


「な、なら今すぐ安全に着地してください!」


「冗談だよ。それにもう着いたよ」


「は、はい。あ、ありがとうごさいました」


「どういたしまして」


「どうした?フレム様?あれ?何で、シリアがいるんだ?」


「お兄ちゃん!」


多分、吊り橋効果。というものなのだろう。

そんな、単純な効果は私に大ダメージを食らわせた。


「私、この人のお嫁さんになる!」


「「えっ、」」


2人して驚いた顔をする。

まぁ、当然の反応だろう。


「そ、そうか…。フレム様、いや、フレム。妹はやらない。君が拒否しても殺す」


「チョナモワムテオオレモノトニオナトテルムナオンカオルオルオナイ」


「何て?」


「ちょっと俺も何言ってるか分からない

って言ってます。」


「よく分かったな」


「愛の力ですから」


そう言い彼を見ると逃げようとしているではありませんか。


「ウィ」「おっと、帰らせませんよ」


「はっや!」


「今夜はご馳走です。私が振舞ってあげましょう。夜は…うふふ。楽しみですわ」


「そうか…。そうか。フレム。家を開けといた方がいいのだろうが、俺は妹が、心配なのでここにいるぞ」


えっ?普通にお兄ちゃん邪魔なんだけど。


「帰るわ」


彼はシリアの腕を振りほどき、帰って行った。


「…ねぇ、お兄ちゃん」


「な、なんだい?」


「私、やっと夢が出来たよ。これまで、夢なんか邪魔なんて思って持たないようにしていたけど、彼のおかげでそれに会えたの」


「シリア。言ってる事は正しく、俺も応援しようと思うんだ。けど、夢というのがフレム様と婚約というのであれば…諦めた方が得だ 」


「…」


使わないようにしていた最小の魔力を全て使って彼が向かったとされる屋敷へとワープする。



「はぁ、はぁ…」


見ると、彼は疲れていた。…可愛い。食べたくなる


「疲れてますね。大丈夫ですか?


「あぁ、…え?」


お兄様がこっちを見つめている。

それだけを考えるだけでゾクゾクする…。


「あ、呼び方に疑問を持っていらっしゃるのですね!実は助けられた時に兄のようなカッコ良さがあったのでそう呼ばせて貰いました」


「いやいやそうじゃないだろ!」


「そうですか?なら、あなた。の方がイイですか?」


「呼び方じゃねえ!なんでここにいんだよ!」


「あら?ご存知でない?私、ワープを使えたのですよ。というか、国守選抜の時に戦ったじゃないですか」


「あぁ…確かに」


「ん?つまり逃げようと思えば逃げれたのか?」


「はい!」


「しかしてっきり、フレムお兄様が私がワープ出来るとも知りながらも助けてくれたのと…」


彼は私の事を忘れていたのか…とても残念。


「ですが、助けてくれたのには変わりありません!婚約致しましょう!」


「あら?これはどういうことかしら?」


「!?」


年上の女性。それも綺麗な人が来た。


「母さん…」


お母さん…!?綺麗すぎやしないですか!?

きっとフレム様の顔が整っているのも、遺伝だろう。


「フレム。この子は?」


そう言われて私は咄嗟にお義母様に挨拶する。


「どうも!お義母様!私はシリア・ウォードです!フレムお兄様に求婚を申しております」


「へぇ…?フレム。アンタやるじゃない。こんな可愛い子連れてきて」


「違っ!」


「ごめんね〜。この子他に2人も婚約者がいるの」


ズキン!と心が痛くなる。

『諦めた方が良い』

お兄ちゃんが言っていたのはこういう事だったのですね。


婚約者がいるなら私は諦めていた。

けど、2人。

2人もいるのなら3人目も許されるのではないか。


「それでも!私はフレムお兄様の近くにいたいんです!」


私は正直に言った。フレム様の近くにいれるだけでいいのだ。


私は、彼を襲った。

だから彼を好き勝手に独占する事は出来ない。

だから余計に覚悟をしていた。


「フフフ。その言葉が欲しかったわ」


「えっ?」


帰ってきたのはまさかの答え。


「フレムと将来に関する話をするから明日…遅くて明後日には返事をするわ」


「…!?ありがとうございます!」


私はお礼をして帰っていった。



ウォード家。

「お母さん!私嫁入りする!」


「ブホォォォ!」


「お母さん汚い!」


「な、なににい、いいってててのよよよよよ!」


「えっ?なんて言ってるの?」


「何言ってるのよ!私は反対よ!」


「えー!でも向こうのお義母様には挨拶しちゃたよ」


「なんでよ!」


「とりあえず私、向こうの家で住んでくるね!」


「ええええええ!」


私は、夢を叶える。

その為に今、好きな人の元へと向かうのだった。

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