コンビニ弁当あげたら人生変わった。

大瀧潤希sun

第一部 コンビニ弁当

第1話 コンビニと美麗なソープ嬢との日夜。

 俺、田代広大は自分の分の弁当ともう一人の分の弁当を手早く作っていた。この行為にはもう慣れた。キッチンの窓から朝五時過ぎ特有の清々しい陽光が射し込んでいる。それぞれの弁当箱の中は色彩に富んでいる。そしてもう一人の弁当――俺の恋人の分だ――には彼女への想いが詰まっている。


 ☆


 初めて彼女、俺の恋人である雪野香里奈と出逢ったのは一年前、俺が深夜のコンビニでレジ打ちをしていた頃だった。すると入店のチャイムが鳴り、女性がひかえめに入ってくる。そして飲料コーナーへと向かって缶ビールを二本手に取っていた。そしてお弁当のコーナーにも寄って弁当を手に取っている。値段と品を物色しているのだろうか、眉間に皺を寄せ悩んでいるようだった。しかし嘆息を吐いて結局ビールだけを持ってレジに来た。


 350ミリ缶二本で六百円ほど。女性は七百円を出して立ち去ろうとした。


 俺はこのときどうしてか先程の女性の行動が気になってしまった。弁当が欲しいのだろうか。


「待ってください」


 女性を呼び止める。彼女は睨み付けるようにこちらを窺った。


「なに?」その声は尖っていた。


「お酒を買われたお客様には、サービスとしてお好きなお弁当をおひとつプレゼントすることが出来ますが、どういたしましょうか?」と、嘘のキャンペーンをでっち上げた。


 女性はまるで誰にも表現できないような慈しむ美女だった。だからこそ、俺のこの行動は端から見れば下心見え見えの行為だと見えるだろう。それでも弁当ぐらい俺が奢ってやると思っていた。


 すると彼女はヒューマノイドのようにぎこちない笑みを浮かべ、ならのり弁を貰うわと言った。

 これが出会い。あまり宜しくないような気もするがこれでいいんだ。

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