リフィアは地上で何を願う

クヨミ

第1話 出会ったのは人魚

陽の光が溢れる森の中、俺は走っていた。

風の音も耳の横を過ぎて行く。

振り返ると猛スピードで獣魔物が迫っている。

あいにく立ち止まれないまこの状況では魔法も使えない。

何度か、撒こうとするが、狼型の魔物は目を光らせて逃がさないと言うように草をかき分けて追ってくる。

魔物の息も荒くなっているが僕の体力も限界を迎えようとしていた。

「いつまで追ってくるんだよ!」

何度も岩場など通りにくいところを通るがしぶとく追いかけてくる。

ばててきたところでついに逃げ場のない崖まで追い込まれてしまった。

崖の下には全て飲み込むような大きな波が立っている。

「いや、これなら!」

追い詰められて飛びかかる体制に入っていた魔物は動きを止めて、距離を測っていた。

そう思い、杖をだし魔物に向ける。

「フレイア!」

杖の先に魔法陣が浮かび上がり炎が放たれる。

しかし、魔物は当たっても怯まず飛びかかってる。

「うわっ!やばい!!」

僕ものけぞりバランスを崩してしまった。

そのまま、魔物と共に白波の立つ海へ落ちてゆく。

バシャン!という音とともに魔物は泳げないのかそこに沈んで行く。

僕も水面から顔を出すがすぐに白波に飲み込まれる。

さっき全力で逃げていたこともあり、体力はとうに限界を迎えていた。

僕は波に体を任せて、もう諦めていた。

目を瞑りかけると大きなヒレが見えた。

おそらく、魚型の魔物だろう。

「しっかりして!」

何故か少し少女のような声が聞こえるがこんなところで聞こえるはずがない。


多分幻聴だろう。


そこで僕の意識は途絶えた。



気がつくと波の音が耳いっぱいに聞こえてくる。

光が目に差し込み目を開くと海岸で寝そべっていた。

「俺は死んだのか?」

そんな疑問を持っていると地面に付けていた手にカニが乗り挟んできた。

「いたい!痛い!」

ブンブンと手を振り回すがなかなか取れてくれない。

「もう!えい!」

思いっきり海の方に手を振りかぶるとボールのように飛んで行った。

「痛みがあったなら死んではいないのか」

そう思い、バッグの中を確認した。

バッグには杖と濡れてくしゃくしゃになった地図が合った。

幸い杖は無事なようだ。

「でも、助かるなんて運がいいな」

その時、不意に聞こえてきた少女の声が頭をよぎる。


でもあんなところに人なんて、、いるわけないよな。


しかし、どうしても気になり、翌日改めて海に潜ることにした。


日がさんさんと照り付けるお昼前僕は杖と食料だけ持ってあの崖に向かった。

あの崖を見るとまた足がすくんでしまう。

覗き込むとやはり、白波がうなりをあげている。

僕は杖を取り出し自分の方にむけた。

「トゥレイ」《《水中遊泳》》

そう唱え僕は海に飛び込んだ。

幸い先ほどかけた魔法のおかげで波にも邪魔されず自由に水の中を移動できる。

それから、近くの岸壁や珊瑚のあたりなどをまた回ったがどうも声の正体は見つからない。

(まあ、ただのパニックで聞こえた幻聴だろう)

そう自分の中で納得して引き上げようとした時、かすかだったが耳にあの少女の声が聞こえた。

「今のは、」

声が聞こえる方向へ向かうとそこには1人、

魚と戯れる人魚がいた。

魚は俺に気づくと逃げてしまったが人魚は目を丸くしてこっちに向かってきた。

「あれ?君は昨日溺れていた子だよね?」

「ああ、そうだけど」

正直なところ本当に予想が正しかったと思わずこれは死んでから見ている夢なのではないのかと思ってしまった。

「どうして君はここに?また落ちてきたわけじゃないよね?」

「ああ、違うんだ!気絶する前君の声が聞こえて声の正体が気になってここにきたんだ」

そういうと、人魚は僕を怖がっているような顔で見てきた。

「もしかして、魔物狩りのひとなの?」

そう聞かれた時

僕は全力で首を横に振った。


そう聞いてきたのは人間の世界では人魚は人として見られず魔物として見られているからであろう。

魔物は人類の敵だとして殲滅計画まで出されているのだ。

それだけ、人は魔物に対する悪という思想が強いのだ。

人魚は僕の前からすでに逃げようとしている。

せっかくあの恩人に合ったのだ、せめてお礼だけでもしたいという気持ちがあり大声で呼び止めた。

「本当に違うんだ!僕は君にお礼がしたいんだ!」

そういうと恐る恐る近づいてきた。

「本当に違うんだね?」

そう聞いてきたので僕は持っている持ち物全てを見せた。

すると、信じてもらえたのか少し安堵した表情に戻った。

「あの時は本当にありがとう、お陰で助かったよ」

すると人魚は少し笑ってくれた。

「ええ、気にしないでください

でも、あの時はびっくりしました

魚と遊んでいたら、急に人が降ってくるんだもん」

「それはお騒がせさせました」

「いいのいいの、そういえばあなたの名前はなんていうの?」

名前か、僕の名前は確か、、

「セント、、セント・アルセイヤだ」

「セントね!私の名前はリフィアあなたのように苗字はないのだけれど」

「リフィアか覚えるよ」

僕らはその後も水の中で話を続けていた。

そうして、リフィアは僕が言ったお礼の話になった。

「私、海以外の外の世界のことが知りたいの

そして私はこんな隠れた生活を終わりにしたいの」

さっきリフィアから聞いた話では人魚とは元々人間だったらしい。

「だから!私をあなたの使い魔にして魔法学校で学ばせてくれないかしら!」

僕は水の中だがむせてしまった。

その影響か魔法の効能も溶けてしまう。

僕がもがいているのに気づいたリフィアは急いで海岸まで連れて行った。

「もう、しっかりしてください!」

「でも、リフィア自分が言ってる意味わかってる?」

「もちろん!」

使い魔とは主人と魔物いわば飼い主とペットみたいな関係になるということだ。

もう一度、リフィアの目を見るがもうすでに期待の眼差しで輝いでいた。

いや、まて、こんな美人な人魚が僕の使い魔になるのかそれもいいかも、、。

いやダメだ絶対ダメだ!

一瞬、悪魔の自分が危ない方向へと運ぼうとしたが、なんとが軌道を立て直す。

しかしここで名案が浮かんだ。

「そうだ、リフィアは地上でも呼吸はできるのか?」

「ええ、できますけど」

質問の意味がわからずポカーンとしているリフィアに僕は杖を向ける。

「リフィア少し魔法をかけるけどいいかな?

決して君に害があるものはないから!」

「わかってますよ、あなたは今は信用していますから」

そう言ってリフィアは目を閉じた。

「ディシー!」《欺け》

杖から魔法陣が浮かび上がりリフィアの足元を包む。

すると、ヒレだった下半身が人の足に変わっていた。

リフィアは魔法で変わった足を何度も触ったり

立ってみたりして感覚を楽しんでいるようだった。

しかし、ヒレを人の足に変えたはいいものの

足だけではなく下半身そのものに変えたため

その、、女子の下の大切な場所が丸見えなのだ。

「リフィア、一旦タオルを巻いてくれ

僕は持っていたタオルを巻いてもらいその場をしないでもらった。

「これが魔法ですか?」


「ああ、幻覚魔法で足があるようにしているだけで水に濡れると元に戻っちゃうのが難点だな」

リフィアを使い魔にしないなら残された考えは一つしかない!

「それでどうするんですか?私を使い魔にしてくれないんですか?」


「ああ、君は使い魔になんかしない、

その代わり

僕と一緒に君と魔法学校にに入学しようじゃないか!」

その時、リフィアは驚きの表情を隠さないでいた。




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