2-7

*描写あり



「宝、キス、したいな」


来夢くんと唇を重ねる。


「宝、好き。俺の全部、受け止めて」

「わ、私も、好き。来夢くん、好きっ。いなく、ならないで…もう、今日みたいな…っ」


来夢くんが驚いた顔をする。


「ほんと?ほんとに?」

「うん、好き、好きですっ。だから」


どうかもう、今日みたいなことは。

こんな想いをするのはごめんだ。

私みたいなヒトでも異種族でもない私を、こんなに大切に想ってくれて。

あの時とは違う。

私を愛してくれるひと。

私の愛しているひと。


「来夢くん、愛しています。ずっと、ずっと私の傍にいてくれますか?」

「そんなの当たり前、一生かけて守るよ」


先生、私は今とても幸せです。


『君は私以外を見るべきです。必ず君を心の底から愛してくれるひとに出会えますよ』


私の世界は先生だけだった。

それを変えてくれたあなた。

最初は憎くて仕方なかった。

だけど、そんな私をずっとずっと見ていて、助けてくれて、傍にいてくれて。

あなたの優しさに、私がどれだけ救われたか。

こんな私でもいいといってくれて。

どんな私でも受け止めてくれて。

そんなひと、きっと後にも先にも、あなたしかいない。

だから私も。


「私も、あなたのことを守りたい」


来夢くんをぎゅうっとだきしめる。


「やっぱり宝はかっこよくてかわいいね。大好き」

「私も、好きです。愛してる」

「ん、宝。好き、俺も愛してるよ」


(ああ、私は、幸せ者だ)

─私は意識を手放した。



***



翌日。

怪我人であるはずの来夢くんより私の方が体力を消耗していて、みのると鬼々さんがいる所までお姫様抱っこをして貰うはめになってしまった。


「兄さんおはよー!ってあれ」

「うるさい………」

「あ、兄さんおは…あらら」

「み、みのる、見ないで……!」


なぜか布団にうずくまったままの鬼々さんと正反対でとても元気なみのる。


「あ、あの鬼々さん何か……」

「実は…」

「みのる、殺されたいか」


鬼々さんの声は何故か枯れており弱々しかったが、とても殺意がこもっていた。


「みのるやるねぇー」


来夢くんは何があったのかわかったいるみたいで、聞いてみたけれど答えてはくれなかった。

その後、みのると来夢くんが食事を作ると言ってキッチンに向かった。


(鬼々さんと2人…何を話せば…)


昨日あんな事があったというのもあり、二人の間には微妙な空気が流れている。


「宝」


鬼々さんが布団から顔だけを出して、私の名前を呼ぶ。


「は、はい」

「来夢をよろしく頼むぞ」


それだけ言って、鬼々さんは再び布団にうずくまる。


「は、はい!」


(よろしくって、どういう事…?)

と思ったが、どうやら食事が出来たみたいで、2人に呼ばれる。


「立てますか?」

「吸血鬼をなめ……っ!」


私が差し出した手を鬼々さんに払い除けられ、舐めるな、と言い終わる前に、鬼々さんはガクンと膝から崩れ落ちた。


「鬼々さーん、手、貸しますよ?」


とみのるがこちらにやってきた。


「みのる貴様…」


睨む鬼々さんを他所に、みのるは鬼々さんを軽々持ち上げてダイニングへ向かっていった。


「あの2人も仲良しだねぇ」

「ええ」


見ているだけでもわかる、2人はきっと今幸せだ。

そう分かるのは、今私が幸せだからかも知れない。

一昨日までの自分なら、分からなかったかも知れないこと。


「じゃ、俺らも行こっか。立てる?」

「お願いしても、いいですか?」

「喜んで」


先生、私は今、本当に幸せです。

どうか奥様と見守っていてください。

私の愛しているひとと、歩んでいく姿を。



To Be Continued……

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