2-1

*描写あり



「ふぅ…」


49日も無事終わり、関係各所への手続きもほぼ終わりを迎えていた。


「おつかれさん」

「来夢くん」


彼は吸血鬼である来夢くん。

色々あって、私は今、彼とお付き合いをしている。


「無理してない?大丈夫?」

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」

「だって宝はそういうの言わないから」


と、私の悪い癖を指摘され、何も言い返せなかった。


「じゃあちょっとだけ甘えてもいいですか?」

「どうぞお姫様、こちらに」


来夢くんが膝枕をしてくれる。

とても心地がいい。

気を抜けば寝てしまいそうだ。


「別に寝ててもいいよ、その代わり食べちゃうかも知れないけどね」

「な、あ……っ!からかわないでください!」


部屋が笑いに包まれる。

ずっとずっと、こんな日が続くと思っていた。

あの日までは。



***



ピンポーン


「またか…」


最近の悩みの種。

それは先生の妹さんだ。

お金の事でトラブルになってから絶縁状態だとお伺いしていたが、想像以上に厄介だった。

お別れの会のあの日以降も、時間があればこの調子でやってきては文句を言って帰る。

なんなら最近は親族にあること無いこと言ってくれてるみたいで、その親族の対応もしなくてはいけない。


(暇人にも程があるだろ…)


とは思っても口にはしないけど。


「はい、ってあれ、いない…」


今日は来夢くんもいないし、弁護士さんと打ち合わせの日だから、相手をしている場合ではなかったので、心底ホッとした。


「こんにちは」

「うわあっ!?」


振り向くとそこには。

弁護士の草間集(くさましゅう)先生がいた。


「驚かせないでください」

「すいません、ちょっと反応が面白かったもので」

「本当に怒りますよ?」


と少し怒ると、彼はまたすいませんと謝ってきた。


「今日吸血鬼の子は?」


彼は来夢くんが吸血鬼である事を知っている。

というか、来夢くんが面倒事を避けるために自分から言ったのだが、彼は特に驚く様子はなく、淡々と受け入れていた。


「今日はお兄さんの所にいるらしいのでいないですよ。会いたかったですか?」

「いえ別に?何となく聞いただけですよ」


何で聞かれたのかは分からないけれど、とりあえず草間先生を部屋に案内し、飲み物を持って部屋に入る。


「あの、草間先生どうかされましたか?」

「いや…ちょっと」


どうしたんだろう、何か不備でもあっただろうか。

とりあえず机にお茶を置き、話を進める。


「何かありましたでしょうか?申し訳ありません」

「いいえ、ありませんよ」

「え?」

「いや、無いことは無いんですが」


と、歯切れの悪い返事を返される。


「館山さん、貴方」

「はい」

「ソレ、無意識でやってます?」

「あの、何の事…」


聞き返す前に、草間先生に押し倒される。


「フェロモンですよ、フェロモン。人間だと思ってたんですが、もしかして貴方インキュバスですか?」


そういえば最近、妹さんの事だったり相続の事だったりでバタバタしていたし、来夢くんも忙しそうだったから、精液を貰った記憶がない。


(自分ではそんなに飢えているつもりはなかったんだけど、どうしよう…)


とりあえず、逃げる手段を探さなくては。


「何の事でしょうか?インキュバス?そんな訳ないでしょう。どいてください」

「なら違うって証拠見せて貰えますか?」


つまり、私の腹部に淫紋があるか見せろ、という事だ。

そんな事をしたらどうなる?

犯される?

そんなのは嫌だ。

私は答えることが出来ず、押し黙ってしまう。


「無言って事は、肯定しているとって思っていいですね?」


そう言って草間先生が私のズボンを下ろしにかかる。


「やめてくださいっ!」

「だめです。見せてくれるんでしょう?証拠」


逃げられない。

もう、間に合わない。

私の淫紋が、見られた。


「やっぱり」

「や、やめてください……っ。離して……」

「いいんですか?離しても?」


つつ、と淫紋を指でなぞられる。


「っひ!」


私の体はそれだけでびくんと跳ねる。


「あの子とシてる訳じゃないんですね」


私の渓紋は、精液が足りなくなると、赤く発光する。

フェロモンと同じく、男を誘うために。


「やめっ!なぞら、ないでぇ…!」

「どうなんですか?ヤってるんです?ヤってないんです?どっちですか?答えないならずっとこうですよ?」


ひたすら指で撫でられているだけなのに、私の浅ましい体は更なる快感を求めている。


「ヒィッ!や、やめ、お願い…ですからぁ…っ!」


精液が欲しい。

そんなの言えるわけない。

言ってしまえばどうなるかなんて、分かっているから。


「答えるまではこのままです。こっちは触ってあげない」


そう言って私の勃ちあがっているモノを軽くつつかれる。


「あひっ!」

「答えられたら、これ思いっきり扱いてあげますよ?どうする?」


(答えたら、触ってくれる…?)


私の体と頭はもう快感に飲み込まれかけていた。


「あ、あ…」


足りない、触って、触ってお願い。

誰でもいい、だから。


「わ、わたし……っ」


バン!

と襖が開く音で目が覚める。


「宝、何してんの」

「来夢…くん…?」

「アンタもさ、弁護士先生っつうから目ェ瞑ってたのに。俺の宝に何してくれてんの?」


来夢くんが私に覆いかぶさっていた草間先生を無理やり引き離す。


「あら、旦那様の登場ですか」

「だ、だん……っ!?」

「なんだって?殺されてェの?」

「あら怖い怖い」

「茶化すんじゃねェぞ」


2人の睨み合いが続く。


「あ、あの…」

「宝、ごめん怖がらせちゃって。とりあえずこれ着てて。ズボンもほら、履いて」


来夢くんが着ていた上着と脱がされたズボンを渡してくれる。


「あ、ありがとうございます」

「ううん、大丈夫。それより宝。淫紋触られた以外何にもされてない?」

「ち、ちょっとだけ…あの……」


答えづらそうにする私を見て、草間先生が答えた。


「すいません。少しだけ館山さんの触っちゃいました」


その一言で、来夢くんの手が草間先生の首に伸びる。


「てめぇ……ここに宝いなかったらぶっ殺してんぞ」

「ちょ、来夢く……」

「野蛮ですねぇ」

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