第2話 まずはお風呂ですね!

♪ カツカツ。

(主人公の足音が響く)


 自宅の前で足音が止まった瞬間玄関のドアが開いて、ネコットが顔を見せた。


「お帰りにゃさいませ、ご主人さま。今日も遅くまでお仕事お疲れさまでした」


♪ ピクピクピクッ。

(耳をピョコピョコさせる音)


 主人公の鞄を受け取る。


「メッセージも送ってないのに帰宅がよく分かった理由ですか? はい、私はご主人さまの心が読めるんです。なーんていうのは冗談、ご主人さまの足音はちゃんと覚えてますにゃ! 私たち猫獣人はとっても耳がいいんですよ。私、うれしいんです。ご主人さまが帰ってくる足音が聞こえて。お掃除、お洗濯などの家事は楽しいんですが、ご主人さまがお仕事のときはやっぱり一人ですから」


♪ パン。

(軽く手を叩いた音)


「あ、そうだ! お疲れになってるご主人さまに飲み物をご用意してますんで、よかったら飲んでみませんか?」



――――リビングにて。


「じゃじゃーん! ネコット特製ハチミツレモン水です」


♪ グビグビ、グビグビ。

(主人公の喉越しの音)


 主人公が口をすぼめたので、ネコットが慌てて声をかける。


「はわわわ、そんなに酸っぱかったですか? ご、ごめんなさい……ご主人さま!」


 主人公は飲み干したグラスをネコットに差し出して一言。


「えっ? 『酸っぱ~い、もう一杯?』……はい、まだまだありますから、いっぱい飲んでくださいね」


 主人公が飲み干したところで声を掛ける。


「そうだ、ご主人さま。ご飯かお風呂どちらにされますかにゃ~? ええ、先にお風呂ですか。はい、お風呂はもう湧いていますのですぐにでも。あ、あの……ご主人さま、お願いがあるんですが……」


 少し間を置いてから、上目遣いで主人公の顔色を窺うように訊ねる。


「あの……お風呂に入られたら、籠にお着替えをご用意しに行ってもいいでしょうか?」


 主人公の了承が得られた。


「ありがとうございます! うっれしいにゃ~、ご主人さまのお背……」


 主人公が「おせ?」と訊ねるが……。


「なんでもないにゃ~あははは」



――――お風呂。


 脱衣場から主人公に声が掛かる。


「ご主人さま~、お湯加減どうですか? ちょうどいい? それなら良かったです」


♪ シュルッ、シュルッ。

♪ ファサァァ……。

(服を脱ぐ音)

※脱衣SEは長めに取っていただけると助かります。


♪ギイッ。

(脱衣場と風呂場を隔てるドアが開く音)


※風呂場に入った際は音が反響する。


 主人公はネコットがあられもない姿で入ってきたと思い、目を覆う。


「ご主人さま? いかがなさいました?」


 主人公のことを心配するネコットは恥ずかしそうに訊ねる。


「水着、おかしくないですか?」


 ゆっくりと目を開けた主人公はネコットの黒いビキニ姿に一瞬目を奪われるも顔を伏せてしまった。


「えっ? 目のやり場に困っちゃう? そんにゃあ……せっかくご主人さまの妹さまからお下がりをいただいたのに、ご主人さまから見られないのは悲しいです……」


 主人公はネコットに謝る、ネコットがかわいいと添えて。


「ふにゃぁぁ!? 私がかわい過ぎて、顔が赤くなってしまって見れないと……」


 でも一つおかしなことに気づいた主人公。


「ブリムですか? はい、やっぱりメイドですのでお仕事中は外せませんにゃ」



 ネコットはタオルに石鹸をつけ、背中を洗い始めた。


「かゆいところはございませんか? はいはい真ん中ですね」


 背中をタオルで洗いながら……。


「ご主人さまのお背中、とっても逞しいです。男の人の背中って、格好良いですね。私……大好きなんです」


♪ トクン、トクン。

(鼓動の音)


「ご、ごめんなさい……つ、ついお父さんの背中を思い出して、ご主人さまに甘えてしまいました……てへへ……」



 ネコットは主人公の髪を洗うためにシャンプーを手に取り、泡立て始めた。


「しっかりと手のひらの上で泡立ててから髪につけないと汚れが落ちませんからね」


「ご主人さま、行きますよー」


 主人公は頷く。


♪ シャカシャカシャカー。

♪ シャカシャカシャカー。

(頭皮を指の腹で洗う音)


 主人公は女の子に髪を洗ってもらったことがなく緊張していたが、ネコットは別のことで緊張していると思っている。


「大丈夫ですよ、爪なんて立てませんから。えっ? 女の子に髪を洗ってもらうのは初めてだから?」


「私の指で洗ってもらうのは肉球でマッサージされてみたいですか。あはは、ぷにぷにはしてると思うんですが、私の手に肉球はないですよ~。あったほうが良かったですか」


 主人公は左右に首を振る。


「そういう子もいるんですけどね。私のケモノっぽいところは耳としっぽくらいです。私の耳としっぽがかわいくて堪らないだなんて……。ご主人さまはとってもお世辞が上手いんですね。お世辞、じゃない? 本当のことだから……? ふ、ふにぁ……そ、そんなこと言われたら……」


♪ ジャー。

(シャワーの音)


 ネコットは主人公の前からシャワーベッドを持って洗っていた。主人公はシャワーの水ではなく、ネコットの肌を見て目を瞑ってしまった。


♪ ふにっ、ふにっ。

(ネコットの膨らみが主人公に触れる音)


 洗うことに一生懸命になりすぎて、ネコットは主人公の顔に膨らみを押し付けてしまっている。


「ふふん、ご主人さまの髪を洗えるなんて光栄ですにゃ! あれれ? ご主人さま、顔が赤いですけど、シャワーが熱かったですか? ちがう、そうじゃない?」


 主人公は目を瞑りながらネコットの膨らみを指差した。


「すすすすすす、すみませんにゃーーーっ!!!」


 ネコットはびっくりして、シャワーの水があちらこちらに飛び散る。


♪ キュッ。

(主人公が水道栓を閉めた音)


「ご、ごめんなさい……ご主人さまにご奉仕したくてしたのにご迷惑を掛けてしまって……。えっ? ご迷惑じゃない? むしろうれしい? それって……。私さえ良ければまたお願い……ですか。はい、もちろんよろこんで!」



――――湯上がり。


 ネコットは用意していたバスタオルを主人公に渡す。すると主人公は身体を拭きながら、目を細めた。


「はにゃ? タオルから私の香りがする? 香水はつけてませんが……。私の身体からもいい香りがする? えっ、ご主人さまが……私を拭くタオルになりたい? それってどういう意味なんでしょうか? ご主人さま! ご主人さまったらー」


 主人公は身体を吹き上げると、そそくさと脱衣場をあとにしてしまう。

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