第27話 冬の訪れ
カルドナンド王国に冬が訪れた。カルドナンド王国の冬は厳しく、雪が降り積もる事も多い。王宮内にもひんやりとした空気が絶えず流れている。
「寒い寒い」
私の部屋には暖炉が設置されてはいるものの、すぐ近くが中庭なのでそこからの冷気が流れ込んでいるせいか、あんまり機能していない。フローディアス侯爵家の屋敷の暖炉の方がまだ機能していたかもしれない。
「ぶるぶる……」
(ほんと寒い……!)
何とか布団から起き上がった時、部屋の扉を叩く音が聞こえてきた。
「おはようございます。メアリー様」
「どうぞーー」
メイドが入室してきた。朝の挨拶を終えると着替えに化粧・髪結いに移行する。しかしこの時期の着替えは本当に寒くてきつい。なので一瞬で手早く服の着脱を済ませなければ身が持たない。
「寒いですねぇ、今日は一段と冷え込みがきついようでございます」
「そうですね……皆さんは寒くないんですか?」
とメイト達に聞いてみると彼女達は厚着しているので寒くないと答えた。
「それにここでの仕事は慣れていますからねぇ。あとよく動くのでそれもあるかもしれませんね」
やはり身体を動かした方が暖まるのだろうか? よし、朝食に行くまでちょっと廊下を歩いていようか。
「ちょっと身体を動かしてきます」
「了解いたしました。メアリー様、お気をつけていってらっしゃいませ」
「はいっ」
部屋を出てすぐの廊下を腕を振りながらウォーキングしてみる。歩幅もいつもより大きく取ってかつかつとリズムよく歩く。すると身体がじんわりとあったまってきた気がする。
(効果あるかも)
結局私は朝食の時間の直前まで廊下をひたすら往復していたのだった。
朝食後、レアード様の公務に女官長らと共に同行する予定なので私は馬車へと乗り込んだ。公務はゲーモンド侯爵領地内にある動物園の視察。この度新たに建物が増築され、鯨類や鰭脚類といった海獣の保護活動と研究にもより力を入れるようになった。
「寒くありませんか? このブランケットをお使いください」
「女官長……よろしいのですか?」
馬車の中で女官長から茶色く分厚いブランケットを渡された。どうやら女官長は、ブランケットは使わないつもりのようだ。
「ええ、実は私はこう見えて暑がりなのです。なのでご心配なく」
「女官長、大丈夫か?」
「王太子殿下、お気遣いありがとうございます。私は寒さには強いので大丈夫でございます」
にこっと笑う女官長に私は何度も頭をペコペコさせながらブランケットを被ったのだった。
(やっぱり馬車の中も冷えるなあ……)
「メアリー大丈夫か? 震えているぞ」
「え? そうですか?」
(もしかしたら寒くて無意識に震えちゃってたのかも……)
するとレアード様が私の両手をぎゅっと握りしめた。そして手のひらの一番真ん中をぐいぐいと親指で押しようにして刺激を与えていく。
「どうだ? 少しはましになったか?」
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