第21話 癒しのお茶会
レアード様とマルクとイーゾルの3人を交えてのお茶会。男だらけのお茶会ははじめてだが、弟達とだんらんするのは楽しみだ。
「ぜひお願いしますとお返事お願いします」
「了解いたしました。メアリー様」
仕事をしながら私は弟達に思いをはせる。
正直、弟達との思い出はそんなにない。両親は弟達を溺愛し私にはきつい態度だった。それに弟達が私に懐こうとするもんならそれを阻止していた。
「あんな地味な女よりも私にかまいなさい!」
と母親はよく言ってたっけ。
でも夜中とか隙を見つけて時々話したりしていた記憶もある。弟達はどちらも星が好きだったなあ。
(楽しみだ。まあ、でもイーゾルがなんか昔以上にチャラくなってるのが気になるけど)
という事で3人を交えたお茶会が王宮の応接室の一室を借りて行われる事となった。私は女官としてお茶会のセッティングを行っているとレアード様がやって来る。
「俺も手伝おう」
「いやいや、大丈夫ですよ。王太子様の手を煩わせるだなんて……」
レアード様に手伝わせるのは女官としてどうなんだ。という気持ちだ。だがレアード様から俺が手伝った方がより早く終わってゆっくり出来ると言われたので、最終的には彼に押し切られる形となった。
(確かに手分けして済ましたらその分早く終わるものね)
「姉ちゃーーん!! あれ、まだ準備中だった?」
「い、イーゾル!」
振り返るとそこにはおちゃらけた表情のイーゾルと慌てて彼を連れて行こうとしているマルクの2人がいた。
「姉さんごめん、こいつが様子見に行きたいって言って……!」
「だって姉ちゃんとのお茶会だぜ? 気になるに決まってるじゃんかよ!」
「いやいや、準備がまだなのにお邪魔したら迷惑だろ! てかお茶会の時間までまだ30分もあるのに!」
兄弟げんかがはじまりそうだったので、彼らをなだめつつもう少ししたらお呼びできるから……と言って一旦2人には廊下で待ってもらう事にした。
でも2人が元気そうなのは何よりだ。姉としてほっとする。
「明るい兄弟だな」
レアード様が横からそうつぶやく。ふふっと笑っているのが見えて私も口を緩めて笑ってしまった。
「あの2人、昔からあんな感じだったんです。優秀だけど決して威張ったりはしなくて。まあイゾールはちょっと軽い感じですけど……2人とも良い貴族令息ですよ」
「彼らの優秀さは聞いていたが、なるほど……愉快な兄弟だな。お茶会が楽しみだ」
こうして準備が終わり、お茶会の時間が来たので廊下で待ってもらっていた彼らを応接室へと招き入れた。
「おっやっとかあ! お茶会のサンドイッチ楽しみーー!」
「お前サンドイッチにしか興味ないのかよ」
「だって王宮のサンドイッチだぜ?! 絶対うまいに決まってるよ!」
「僕も楽しみだけどな。サンドイッチ好きだし」
「ほら、兄貴もやっぱりサンドイッチ楽しみじゃん!」
開始早々、にぎやかな兄弟に私はふふっと笑いながら席に着く。レアード様が挨拶を。と兄弟に声をかけるとにぎやかな空気が一瞬にして消えた。
「初めまして。この度はお茶会にお招きいただき誠にありがとうございます。王太子様。僕はマルク・ラディカルと申します」
「兄と共々お茶会にお招きいただき光栄に存じます。イーゾル・ラディカルと申します」
(出たよ優秀オーラ……)
弟2人から放たれる金色の優秀オーラにまぶしさを感じながら、紅茶をひとくち飲んだ。紅茶はすっとした味わいで味は薄め。飲みやすくて良い。
「ありがとう、どちらも噂通りの優秀な人物だな」
「そう仰っていただけて何よりです」
「マルク、跡継ぎとしてこれからも励めよ。イーゾルもマルクとメアリーを支える良き令息として励め」
「ははっ、王太子様」
それからはレアード様が主導する形でちょっとした雑談をする事となった。最初は互いの近況話から入る。
「僕は最近はもっぱら単独で領地視察したりしていますね。父親からお前はもう単独で視察するように。と言われたもので」
「そうか」
「ええ、跡継ぎですからね。それと領地経営の仕事も半分は僕がこなしています。習うより慣れろという感じで」
もうそんなに任されているんだ……。それだけこなしていればもう跡を継いでも大丈夫なんじゃないか? マルクだし。
「それは素晴らしい事だ。マルク」
「ありがとうございます。殿下」
「イーゾルは?」
「俺は……まあぼちぼちやってます。兄貴の領地視察や領地経営の手伝いしたり」
「あとイーゾルは野菜の研究してるんですよね」
え、そうなのか? それは初耳だ。
「そうなの? イーゾル」
「ああ、姉貴はもちろん両親にもまだ言ってないからさ。だって親父に言ったらんなもん平民にやらせとけ! って言いそうじゃん?」
(確かに言いそうだわ)
「クソババア、いや母親に言ったらそんな汚らしいものやめて! とか言いそうだし」
レアード様の面前で容赦なく、己の母親をクソババア呼ばわりするイーゾルに感心してしまっている自分がいた。
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