第6話 午後の魔法の実技の授業で……

 リコちゃんが溜息をついて正面から抱き着いていたけれど、仕方なさそうに右側から抱きしめ直して、スペースを空けてくれた。


 それを見て嬉しそうに戸惑いながら近寄り、私の左側に抱き着いてきた。うわっ……この状況……すごい!美少女の2人に抱き着かれちゃってるよ!


「って、抱き着いちゃってて良いの?誰かに見られたらヤバいんじゃないの?」

「……当たり前じゃないですか!」


 リコちゃんが怒った口調で答えるが、離れる気は無いらしくギュッ♡と力をいれて抱きしめてきた。


「見つかってヤバいなら、残念だけど離れようか……?」

「イヤですっ」

「……あと少しだけお願いします」


 ルリちゃん……あれ?この反応って……私に興味ある感じ?嬉しいけど……私で良いのかな?回りを気にせずにお世話をしてくれてるし……。私にモテ期到来!?


 ニヤニヤしてると、リコちゃんが抱きしめたままでジト目で見上げてきた。


「お姉ちゃん……ニヤニヤしてる……」

「え?あぁ……それは……美少女の二人に抱きしめられたら……ニヤニヤもしちゃうでしょ」

「ふんっ」


 リコちゃんのご機嫌が斜めになり、顔を胸に押し付けてきた。


「リコちゃん、そこ……胸だし……もぉ……だめっ!」

「しりませんっ!えいっ……えいっ……ふわふわぁ……♡」


 リコちゃんが、私に再び抱き着き顔を胸に押し付けてムニュムニュと動かしている時に予鈴がなった。


「むぅ……授業が終わったら迎えに来ます……」

「うん。分かった。一緒に帰ろうね!」

「……はいっ」


 ムスッとしていたけれど、一緒に帰る約束をしたら機嫌良さそうに戻っていった。


「私達も、教室に戻ろうか?」


 ルリちゃんが、頬を赤くさせて私の胸をボーッと見ていた。ルリちゃんも触りたいとか?まさかね……


「ルリちゃん?ん?ルリちゃんも、私の胸を触りたいとか?」


 名前を呼ばれると我に返ったらしくビクッ!と体を動かした。


「え?あ、すみません……ボーッとしてました」

「そ、そう?教室に戻らないとじゃないの?」

「はい。戻りましょう」

「手を繋ぐ?」

「……良いのでしょうか?」


 頬を赤くさせて俯いて答えてきた。あぁ……そっか……あんまりベタベタしてたらおかしく思われちゃうか。


「ベタベタしてるとおかしく思われちゃうかー。変なこと言ってごめんね……。つい、抱き着いてくれたから調子にノッちゃって」


 俯いていたルリちゃんが、顔を上げると私の手を握ってきた。ルリちゃんの手は、緊張で少し汗を掻いて柔らかな感触をしていて、緊張気味な表情をして可愛い。


「るーりちゃんっ♪」

「は、はいっ」

「緊張しすぎだよ!もう友達でしょ?」

「トモダチ……ですか……はい。み、ミサちゃん……」

「うん。仲良くしようねー」

「はい♪」


 ルリちゃんの緊張が解けて優しい笑顔で返事をすると、手を引かれて教室に戻った。


 授業は、魔法の実技で……練習もしていないので当然、使えずにいて、校庭の隅っこで自主練をしていると背後に気配を感じた。


「あら、どうなされたのかしら?元優等生のミサさん」


 えっと……誰?いかにもお嬢様って感じの態度とオーラを放ってるんですけど……口調もイジメっ子っぽいし……。金髪のロングヘアーでウェーブが掛かっている感じで美人さんだね……


「……誰です?」

「……ふん。私など眼中にない感じですか?魔法が使えなければコワくありませんわ!……ただ可愛らしい女の子って感じですわね。うふふ……」


 それバカにしてる気なの……私には褒め言葉で嬉しいんですけど。嬉しかったので笑顔で返事を返した。


「えっと……褒めてくれてありがと。えっと……お名前は?」

「もう良いですわ!ふんっ!」


 入れ替わりでルリちゃんが駆け寄ってきて心配そうに聞いてきた。


「すみません。離れてしまって……大丈夫でした?」

「あ、うん。大丈夫。あのさぁー今の誰?」

「あ、あの方は上級貴族のお嬢様です」

「ふぅ〜ん……お偉いお嬢様って事なんだね……」


 上級貴族様ねぇ……ルリちゃんの口調や表情を見ていると、お金持ちで権力もある感じなんだろうね。私が上級貴族のお嬢さんに感心をしていると、驚いた表情をしていた。


「あ、あのう……ミサちゃんも……その上級貴族様ですけれど……?」

「え?そ、そうだっけ……あはは……」

「はい。その上級貴族の中でも上の方の位の家柄ですよ」

「あのね……」


 言い訳をしようとしていると、絡んできた上級貴族のお嬢様がルリちゃんと仲良く話をしているのに気が付いて戻ってきた。


「あら……下級貴族の娘じゃないですか。貴方は、こちらに付いていた方がよろしくてよ。ミサさんに付いていても今後は無いですわよ?うふふ……」

「いえ。ミサちゃんにお仕えするので、お構いなく……」


 私との付き合いは午前中だけなのに、そんな事を言っちゃって良いの?多分、上級貴族のお嬢さん言う通りだと思うよ……私には、今後はないかもしれないよ?ここの世界は、魔法と魔力量の世界なんでしょ?もぉ……ルリちゃん足が震えてるじゃないの……


「あら……ミサちゃんですって……?下級貴族の娘さんに、その様な呼び方をされて平気ですの?ミサさん?」

「あーはい。お友達ですので、問題ないですよ?」

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