花火の帰り道
歩
いったい何だったんだろう?
あれは
はぐれないようにと手をつないで。
川に、
初めて
ビリビリと耳よりも胸の奥に
何よりその音の
クライマックスに、
花火は何より音を
帰り道でもずっとしきりに、母に「すごかったね!」「また見たいね!」と、つないだ手をぶんぶん
そのうち私もつまんなくなって何も話さなくなった。
帰り道はそんなだから、行くときよりもずいぶん
気がつけば、いつの間にか人は消えていた。
暗い夜道。
あれだけ人がいたのに、今はもう、私と母の
早く帰ろうと足を速くしたいのだけれど、母の足は引きずるようで、暗いなかにも
友だちの家はあるから、遊びに行く時は通ったけど。
駐車場っていうのは、実は
フェンスで
つぶれた何かの
昼間だとアスファルトの
男の子が入りこんでいたずらしていたことがあったみたい。
そのうち
夜になるとなおさら、駐車場の黒さが
ぽっかり黒く切り取られたようだ。
ああ、怖いなあ。
ここは
母の手をぎゅっと
ぼんやり、見える。
一台の車。
ビルに
なんで?
子ども心にもおかしいのは分かった。
家の明かりも、
なかから。
だから見えるんだ。
音までは
車のなかで
「ねえ、お母さん……」
母のほうを見る。
目線で、「あれ」と車を
「なあに」
と、疲れた笑顔を見せつつ、母も奥の車にすぐ
ピタリと、母の
じっと母は車を見ていた。
私はもう怖いから母の足に顔をうずめるようにして
「帰ったらアイス食べようか!」
「いいの!」
「今日は特別ね」
夜にアイスなんて
母の手をまたぶんぶん振って、そこからは元気を取り戻して家へと帰ったものだった。
アイスをもらった時にはもうすっかり車のことなんて忘れていた。
あのとき母はあの車のなかでいかがわしいことをしていると思ったのだろう。
ごまかそう、子どもをそれから遠ざけようと考えたのだ。
それだけの話。
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