第8話 学園生活

 僕の教室は寮の色のよって分けられるため教室前に赤の色が付けられている。


 僕が教室についたのは予定の時間ぎりぎりで話題は庭園にあった血痕と戦闘の後の話題でお互い初めてあった人もいるはずなのにすごく盛り上がっていた。


 僕が不機嫌オーラを全開で出しながらミライムさんの席の場所を確認して近くの席を目指して進んでいく。


 それだけで僕に話しかけて来るものはおらず心なしかみんなの話題が僕に向いて言った気もする。


 それもそうだろう、制服はしっかりきれいなもののよく見ると僕の顔や手が所々青くなっておりさらに僕の顔に疲れがにじみ出ているからだ。


 今話している人たちを見ると「何かあったのかしら」「昨日遅れたから両親にぼこぼこにされてしまったとか」「イケメン」「イケメン」そんなことを言っているのが口を見るだけでわかる。


「フリード様、噂だと今日の朝、帝都で手配書を書かれていた誘拐犯を倒したというのですが本当ですか?」


 ミライムさんも気にして話しかけない、そんな中にも僕に話しかけて友達がいた。


 エレーファ・クウディカル、クウディカル侯爵家の三男で死んでしまったが年の離れた姉がおり、小さなころからよく一緒に修行したりする仲で昔は僕のほうが強かったが姉が死んでから悔しかったのだろう、それからというものの普段は変わらないが修行の時になると人が変わったように鬼気迫る。


「うーん。勝負では勝ったと思うが逃げられそうになったところビカリアさんに助けられたからな……」


 勝負には勝ったというところを特にミライムさんに強調しながら話す。


「あははは、ならビカリアさんがあの血痕作ったのですね。相変わらず化け物のような人ですね」


 身分という差があるが、僕とエレーファは何年も一緒に過ごしてきたため会話は常に心地よく進んでいく。


「そういえばすごく疲れ切った顔をしてますが、その誘拐犯はフリード様のエルメを使わないといけないほど強い相手だったのですか?」


「いいや、普通に勝てたと思うがあの時は武器を持っていなかったから防戦一方になってしまったんだよ」


「なるほど、それは災難でしたね。ならば私も常に武器を携帯するように心がけておりますね」


 ――ガラガラ


 担任となる先生がやってきたようだ。


 僕はエレーファに目配せをして自分の席に戻るように促す。


 王国学園の教師になるということはとても難しいことでほとんどの人がボルベルク家で訓練したことのある人で、おそらくは知っている人だろうと思う。


 ちょっとしたゲームのつもりで誰が担任なのか声だけで当ててみようと考え、目を閉じた。


「えーっと、これから五年間卒業までですね、このクラスを受け持つこととなったビカリアというものです。すでにご存じの方もいらっしゃると思いますが、フリード様の専属護衛をしておりました。よろしくお願いします。」


「ブゥゥゥゥウウウウウ」


 あまりに聞き覚えのあり、丁度二時間前にも聞いた声に驚きを隠せず吹き出してしまった。


「だ、大丈夫ですかフリード様?」


 ミライムさんは心配してすぐさま僕に話しかけてくれる。マジ天使。


「フリード様は後でお話があるのでホームルームが終わると私のほうに来てくださいね」


 ビカリアさんは僕が噴き出したことを気にせずに話を進めていく。


「このクラスと隣の青組は将来騎士やその他もろもろ、とにかく戦闘に関わる仕事につこうとしている人たちだという風に伺っております。それにより授業についてこれない生徒は強制的に他に組に移籍する手はずとなっておりますので頑張ってついてきてください」


 それからはクラスメイトみんなの挨拶、今後に何があるのかについての説明があり特に問題なく進んでいった。


 どうやらこのクラスの人数が三十人、みんながみんなどこかの貴族のようだった。


「これで最後になりますが、王国学園の先輩たちが君たちにアンケートしたいようですので、私は廊下で待ってますから何かあったら呼んでくださいね」


 ビカリアさんがそう言って教室を出ていくと外で待っていたらしい先輩たちがやってきた。


 人数は四人で、どれもこれもみんな男でイケメンぞろいだ。


「まずは入学おめでとう。俺はグラン・ガイストという。俺から言うことは男の子たちにしか関係ないことだから女の子たちはボーっとしてくれていいよ。君たちは放課後に君たちの自主性を問われる活動があることをしっているかな?今日はその勧誘に来ました」


 そういうと先輩たちはアンケート用紙を男の子にのみ配り始める。


 一見協力してやっているように見えるが、よく見るとみんな他の男子たち全員を嫌っているように見える。


 僕は後ろの方の席に座っていてプリントが届くまでにどうしても時間が掛かってしまう。


「君たちにはこのアンケートに答えてもらおうと思う。今のうちに言っておくがふざけないでほしい!」


 そうして届いてきたプリントを見る。



 名前___________________


 1、 現在好きな人はいますか?

              はい     いいえ


 2、それは本当に人ですか?

              はい     いいえ



 こんな質問がズラッと五ページ程にわたって五十問書きつられていた。


「このアンケートは今後の王国学園での活動にとても影響してくる大切なもので、アンケートの結果最適な活動を紹介するから本心のみを答えてほしいのだよ」


 グランさんの隣にいた長身のイケメンが答える。


「すべての問いに答え終えたら、回収するのでできた人から手を上げてくれ」


 このようなことをするのは初めてで、自分の心の内をさらしているみたいでなんだか少し楽しい気がする。


 簡単な質問が多く、すいすい解けていく。



 15、 好きな人(人じゃなくても可)の年齢はいくつですか?



 人じゃない例を教えてほしいが僕は気にせずに読み進めていく。


 今日はあまりミライムさんと会話できていないので会話の種欲しさに聞いてみる。


 トントン


 隣でチラチラと暇そうに僕の様子をうかがっていたミライムさんの肩をたたく。


「どうかしましたフリード様」


「そういえばミライム様の年齢がいくつなのかを忘れてしまって、教えてもらえますか?」


 もちろん僕はミライムさんが十二歳であることを知っている。


「そういうことでしたら、私は十一月十日生まれの十二歳ですよ」


 もちろん寸分たがわず僕は知っている。


 だが、ミライムさんの口から直接聞くことによって、感動してしまう。


 ついでに僕は四月三十日生まれの十三歳だ。


 今日は六月二日なので少し過ぎてしまっている。


「ありがとうございます!あともう一つお願いがあるのですが、様を付けると距離を感じてしまいますし、せっかく同じクラスなのですからもう少しフランクな感じで会話したいのですが、いいでしょうか?」


 真面目な表情で話しかける。


 内心何を言ってしまっているんだという考えで埋め尽くされてしまっているが、それよりもこんなことを言おうとなど恐れ多くて考えていなかったので意識したりせず、その場の雰囲気で言えたのでちゃんと言えてうれしいという気持ちが勝っている。


 僕の学園に来た目的であるミライムさんと仲良くなることの第一歩敬語をやめるというのを提案できた僕は今日の行動に満点をつける。


「え?は、はい分かりました?気を付けます」


「あはは、ミライムさん口調まだ変わってませんよ」


 失敗したらどうしようと上がる心拍数を隠しながら気を使わないよう軽い感じで話しかける。


「す、すみません。びっくりしてしまいました。気を付けますねフリード君」


 突然生まれたミライムさんの笑みが僕の頭の中を沸騰させる。


「ふ、フリード君大丈夫!鼻血が出ちゃってるよ」


 何故か流れてきた鼻血が僕のアンケート用紙を血で染める。


「おっとこれは失礼しました。ミライムさん?ちゃん?」


「えへへ、ちゃんはちょっと嫌かな。ミライムさんでお願いしてもいい?」


「ええ喜んで!」


 僕の人生最高の日を満喫していると邪魔してくる人もいる。


「ハーイ、そこの君たち。フリード君もうアンケートは終わったかな?僕たちにも予定があるから早めに終わらせてくれると嬉しいかな」


「わかりました」


 ミライムさんに人生最高の幸せをもらった僕はその勢いでアンケート用紙に書かれていた項目を流れるかのように埋めていく。




「今日はアンケートにご協力いただきありがとうございました。結果は明日発表しますから、放課後でも教室に残っているようにお願いします」


 そういうと先輩たちは教室を出て行った。


 入れ違いでビカリアさん?先生?は入ってくる。


「それでは今日のところはこれでおしまいです。明日からは普通に授業をするので忘れ物の無いようにしてくださいね」


 そういうとクラスのみんなは自分の寮に帰ったりするなど思い思いの行動をとり始める。

 僕もミライムさんとの会話を楽しみたいと思うが、その前に確かめなければならないことがある。


「ビカリアさん!ビカリアさん先生になるのですよね。そうなったら僕の護衛は一体誰がするのですか?」


 僕にもしものことがあると国が動きかねない大事だ。


 そうならないためにも僕をだれが守るのか知っとかなければならない。


 け、決して誰も僕を守らないのが怖いわけではない。


「ああ、その件で私からも話があるのですよ。というか私来るようにいましたよね」

「で、これからは誰が僕の護衛をするのですか」


「その方については、もうすでにいるじゃないですか」


「え?どこですか?」


「それは……」


 ビカリアさんはわざとらしくためを作る。


「お前の後ろだあぁぁ!」


「うわわわぁぁぁああ」


 僕の後ろにいたのは黒装束でスラっとした体形の女性だった。


 何故僕の護衛はみんな女性なんだろう?


「どうも、ビカリア様のご紹介にあずかりましたイルミナと申します。フリード様のお姿ボルベルク領で訓練をしていた時からよく目にしておりました。どうぞ私のことはイルミナとお呼びください」


 いや、紹介はされてないだろ。


「イルミナってあのイルミナさんですか?」


「おそらくフリード様の想像しているイルミナで間違えないと思います」


 嘘だろ!


 またすごい大物が僕の護衛につくこととなったな。


 イルミナといえば軍で幹部を務めるほどの強者で疾風のイルミナと呼ばれ有名人である。


「今、軍部では幹部一人最高幹部一人欠けていても大丈夫なほど余裕があるのですね」


「今現在では小競り合いが少々あるもののそこに幹部たちを投入するほどヴァレリア王国の国内は安定しているわけではないですしね。予備選力はできるだけ温存しておきたいです」


 今から数年前ヴァレリア王国はたくさんの国と揉め事を起こしており、戦争にまで発展した。


「それに今年は公爵家の人間が二人も入学したのも関係してますし」


 現在では大多数の国と和解しているが、今でも争っている国がある。


 ヴァレリア王国は世界一の大国といえど、一度に何国とも戦争を起こすとさすがに分が悪かったらしく、相当大変だったらしい。


 …………と、父上が言っていた。


 その戦争にイルミナも参戦しており、多大な功績を挙げたと聞いている。


「私はテンザン様の命でこの任務に就くことになったのですが、一つ注意点があります。それはもし、フリード様に襲撃する輩が現れたとしても、一部の場合を除き一切手助けをしません」


「帰れ!」


 この馬鹿は一体何を言ってるんだ?


 ありえないだろ!護衛がたとえ護衛対象が襲われたとしても助けないって。


 護衛いる意味ないじゃん!


「そんなことを言わずに、テンザン様の命ですのでこれからよろしくお願いします」


 そういうとイルミナは一瞬で姿を消してしまった。


 眼鏡を付けているとはいえ、僕の目で見えないとはなんという化け物だとビビってしまう。


「行ってしまいましたよ。どうするのですかこれ」


「まあ安心してもいいと思うよ。一部の場合には今のフリード様に決して勝てない相手も入っているはずですし、今も近くであなたを見守っていますよ」


“はず”ってちゃんと言い切ってくださいよ。


 そうして僕は寮に帰っていった。





「グランさん!ザバンさん!この新入生のアンケート見てください!これはいつかの世代に我々を導いて下さる才を持っていますよ」


 俺はある放課後活動の勧誘するメンバーを選んでいる。


 すると俺を慕ってくれている後輩が、息を切らせてあるアンケートを持ってくる。


「ん?フリード・ボルベルク!ボルベルク家の方か。それでこの新入生のどこがすごいのだ?」


 一ページを見る限り普通の人のように見える。


「すごいのは二ページ目からですよ。早く見てください!」


 普段は決して俺を焦らせたりしない後輩が焦らせてくることで、よほどのかと用心をする。


 俺は覚悟を決めて次のページへめくる。


「な…!」


 絶句した。


 まさか好きな人の年齢を書くところで鼻血を垂らしている。


「こいつは、いやこの方は十三歳でこの領域に達しているのか!」


 戦慄を覚えた。


 更に読んでいくとその年齢に何か意味はありますかの項目で途切れることのない筆圧でつらつらと書かれている。


「間違えないこの人は逸材だ!」


「ええ、この人を取り込むことが出来ると先輩たちが卒業した後も安心ですね」


「しかし甘やかしてしまうことはよくないから扱いはほかの生徒と一緒にするように知ることをみんなに伝えておけよ」


 そう言い切ると、再び黙って仕事をし始めるがその口は終始にやけていた。

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