五苦の瞳 ~すべてを生まれた時から手に入れているはずなのに、人生というものは辛いものだった~
てっちゃん
第1章 少年期
第1話 目覚め……
<王国学園初級>
僕と彼女の通っている学校である。
世界一の大国家であるヴァレリア王国の王都であるダマスクスに位置するこの学校は、ヴァレリア王国全土の貴族はもちろん各国の貴族まで学びにはるばるやってくるほどの大きな学園だ。
またこの学園の生徒はほとんどが貴族ということでみんなプライドが高く事前にしっかりと予習しているため競争意識が高くそれにより将来優秀な人材が育っていく。
近くに王国学園上級があるため研究設備の整備が進んでおり、世界中から研究者が集まるのである。
そのような背景から市場はとてもにぎわっており金さえあれば手に入らないものはないと言われている。
「一限目は薬草学か~」
僕は空いた席に座った後、予定表を取り出し今日の授業が何なのかを確認する。
薬草学には山でけがをした時の応急処置ためなどたくさんの意味があるが実際に見る機会の少ない薬草ではいくら予習をしたとしてもやる気のおこるものではない。
僕が溜め息を吐きながら予定表をしまっていたとき教室内がとてもざわめいたのを感じる。
なにがあったかなんて振り向くまでもない。
彼女が教室にやって来たためだ。
「ミライム様だ」「ねえねえこっちを見てない?」「やはり今日も美しい」
<ミライム・スタローン>
ヴァレリア王国に四つしか公爵家、四大公爵家の一つでありその影響力は他国の王様が顔色を伺うほど高い立場でありとんでもないお嬢様である。
また彼女自身も言葉では形容出来ないほどの美しい容姿に加え誰に対しても差別することなく接しているためあらゆる生徒からの人望を集めている。
そんな僕も四大公爵家の一つであるボルベルク家の長男であるが人望では彼女の足元にも及ばない気がする。
五歳の誕生パーティーの時に初めて見て以来、僕は彼女に夢中だ。
ミライムさんは不躾に向けられる視線をもろともせずに悠々として教室を歩いていく。
この学園に所属している生徒の皆が皆美しい容姿と礼儀を兼ね備えているが、彼女の場合は頭が一つ飛びぬけている。
それにより彼女は今やこのとんでもない学校で一番の話題の対象なのである。
僕もまた不躾に視線を向けている人のうちの一人である。
そんな彼女がまだたくさんある席の中で僕のほうに一直線にやってくる。
「こんにちはフリード君、ここの席あいているのかな?もしよかったら座らせてもらうね」
「……う、うんもちろん大丈夫だよ」
僕は突然のことにフリーズしてしまったが急いで持ち直して返事を返した。
すると彼女は不安そうな顔で僕の顔を覗き込んでくる。
「ありがとうねフリード君、でもさっき浮かない顔をしていたけど本当はいやだったりした?嫌なら別の場所に移動するけど」
「ああ、ごめんね、違うよ。次の時間は薬草学だからね。僕、植物とかを覚えたりするのが苦手だからね、とても憂鬱な気持ちなんだよ」
僕は気になっている子に自分の苦手なところをさらけ出すことに気恥ずかしさと自分のせいでミライムさんを不安にさせたことに対して罪悪感を覚え、ごまかすようにしながら慌てて答えた。
「そうだったんだね、ごめんね返答しずらいことを聞いちゃって」
「大丈夫だよ!君といて嫌に感じる人がいるわけないじゃないか」
ミライムが不安げな顔をしていたため僕はつい大きな声を出してしまった。
「フフッ、フリード君とてもうれしいことをいってくれるね!そうだ今度私と一緒に薬草学の予習をしてみな――」
「――いいの!本当に?ぜひ、ぜひともよろしくお願いします」
僕はミライムの唐突な提案にまだ言い終わってもないのに返答してしまっていた。
「う、うんもちろんです。私さっき言ってもらったこととてもうれしかったからお礼も兼ねてね!!」
「うん、一緒にやろう。今から一緒にできる時間が待ちどうしいよ」
僕は興奮した表情でミライムに詰め寄る。
「私も楽しみにしているね!」
ミライムは元気にそういった後、急に緊張した表情になった。
「これは約束の印だからね。チュッ……」
ミライムが僕の頬にキスして僕が顔を真っ赤にしたとき…………目が覚めた。
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