10.「分からない」

一緒に年をとっていくはずだったその人がもういない

自死を選んだという話だ 私の選べなかった死をその人は――


その人にも好きな人がいたはずだ

その人のことを好きでいてくれる人たちが間違いなくいたはずだ

なのに だのに なぜ――?


僕には分からない 僕には分からないことばかりだ

その人の死ひとつとってみても

その人の死以外に思いを馳せてみても

人の死そのものにこうして考えを巡らせてみても

結局 僕は どの死も「分からない」で済ませてしまっている


それからしばらくして「その人のことを好きでいてくれる人たち」も亡くなって

僕には もう 何が何だか本当に「分からない」のだ

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