身の程知らずの恋心で千年封印された話

公开

序章

 法力を使えないどころか、雑用もダメダメな出来損ない侍女:语嫣ユィエンは、世界の中心で世の秩序である天帝:运月ジュンユエに仕えていた。

 身の程知らずな语嫣ユィエンは、天帝に一途な恋心を抱いており、その信仰は揺るぎなかった。周囲は语嫣ユィエンに呆れ、笑い者にしたが、優しい天帝は彼女を追放しなかった。その優しさが彼女を余計愚かな女にする。


 天界の頂点である天帝が、女神でも眷属でもないただの侍女と結ばれるのは、天地が裏返ってもあり得ない事だ。しかし、馬鹿な语嫣ユィエンは、いつか結ばれると信じていた。天帝の為ならどんな苦痛も耐え、どんな犠牲も払うと心に決めていて、彼女の忠誠は行動として確かに現れていた。誰が見ても彼女の生きる理由は天帝だった。


 そんな誠実な语嫣ユィエンに目を付けたのは、魔界の原点にして頂点の絶鬼王:浩轩ハオシュエンだった。絶鬼王は、天界・人間界・魔界の三界を支配する野心があった。天界を乱すため、単純で落ちこぼれの语嫣ユィエンを利用しようと、正体を隠して接近する。


 絶鬼王が语嫣ユィエンの身体にわざと残した微かな邪気と、手渡した書状の刻印の意味に気が付いた天帝は、语嫣ユィエンを魔界の間諜だとして罪に問う。法力が使えない為に邪気を感知出来ず、書状の刻印が絶鬼王のものだとは露も知らない语嫣ユィエンは、必死に誤解を解く事を試みるも、天帝の正妻候補と謳われている美しい九尾:晓蕾シャオレイの邪魔もあり、間諜罪の中で最も重い刑「千年封印」に処される。


 絶望した语嫣ユィエンは全てを諦め、今までの情動を恥じ、千年の長い時間で己を鍛錬して法力を高め、強大な力を得た。そして、厄介ごとを避けるために、その力を周囲にバレないようにすると決意した。

 _语嫣ユィエンは心に決めていた。色恋の感情に振り回される事なく、己の気の赴くまま、穏やかに生きる。


 そして、千年の時が過ぎ、封印が解かれると_



 「ねぇ、语嫣。昔のようには接してくれないの?」

 「语嫣。运月なんかの侍女じゃなくて、俺の嫡妻になるといい。」



 _何かがおかしくなっていた。

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