第36話 レモン再び登場

ヒトミ

「ふぅ…とりあえず延焼は…なさそうね… 多分 手のひらは やりすぎちゃうんだわ」

サヤカ

「う…うぅ…ご…ごめんなさい…」

ヒトミ

「しょうがないよ…初めてだもん サヤカちゃん もう1回やってみましょう」

サヤカ

「ええーっ…ちょっと トラウマレベルに やらかしちゃったんです…あまり…」

サヤカは 今回は被害がでなかったものの 一歩間違えれば 家を焼いてしまうところだった

ヒトミ

「失敗は 恐れちゃダメよ 自分の力を制御出来ないと 何も出来なくなっちゃうわ」

サヤカ

「……でも 手のひらじゃダメなら どうしたらいいんでしょ?」

ヒトミ

「うーん…そうだ!火の魔法に向かって 命令すればいいんじゃない? その勢いのまま維持せよ!ってね!」

サヤカ

「か…感情論!?…ホントに効果あるのでしょうか?」

ヒトミ

「いい?どんなものでも感情はあるのよ?ただ 私たちには聞こえないだけなの そんなものなのよ…知らないけど…」

ヒトミは 腕を組みながら ウンウンと頷く

ヒトミ

「とにかく そうね…そうだ!未だに燃えているあの炎に サヤカちゃん!命令してみてよ 消えろって!」

サヤカ

「は…はい わかりました…」

半信半疑のまま 火柱に向かって 消えろ!と 念を送る

すると 炎がどんどん小さく弱まり 炎は消えてしまった

サヤカ

「うわ!ホントに消えた!さすがお義母様!凄い!思いは通じるのですね!」

ヒトミ

「…ね…い…言ったでしょ…」

困惑しながら サヤカから 目を逸らす

ヒトミ

『……なんにも 思いつかなかったから 適当なこと言って サヤカちゃんのリアクションを楽しもうと思ってたのに……まさか…それで 火が消えるとは…』

サヤカ

「わわ!お義母様!み…見てください!この火!ずっと維持しなさいって思ったら ほら!ずっと同じ火力のままですよ!」

ヒトミ

「…ほんとだ…うん これならピザ窯でも大丈夫そうね サヤカちゃん そのぐらいの火でいいから いくつか出せる?」

サヤカ

「ええ これぐらいの火なら いくつでも出せそうです」

ヒトミ

「よし 次は本番ね ピザ窯に火を入れましょう!」

サヤカ

「は…はい…今度は 絶対に失敗出来ないから…慎重に…」

しかし 緊張からか さっき出した火よりも 明らかに小さく か細かった…

ヒトミ

「あー…そんな ヘロッヘロの火じゃいくらなんでも 小さすぎるわ…サヤカちゃん 緊張しないで もう一度 最初から やりましょう」

サヤカ

「そ…そうですね ふぅ…」

サヤカは 一旦背伸びをし もう一度 ピザ窯に火を点ける

ヒトミ

「うん!それぐらいなら完璧だわ サヤカちゃんその火力を維持しましょ」

サヤカ

「はい!!」


ピザ窯に火を入れて数分…


ヒトミ

「うん いい感じで ピザ窯に熱が行き届いたわ これなら もう ピザを入れてもいいわね」

ピザを入れて数分 ピザの上にのせているチーズが いい具合にとろけてきて 香ばしい匂いが 庭一杯に広がる

ヒトミ

「そろそろ…いいわね!サヤカちゃん そろそろいけそうよ」

???

「……なにが いけそうなの?」

ヒトミ

「わ!え…な…なんだ…レモンちゃんじゃない?どうしたの?」

レモン

「この辺で いいにお…じゃなくて 危険な匂いを感じたから わたしが様子を見に来たの!巡回よ!巡回!」

ヒトミ

「ふーん…レモンちゃん 別にやましいものなんて 作ってないわ これは ピザと言って 食べ物なの」

レモン

「…へーっ…食べ物…わ! な…なにこれ…上に スライム乗ってる…気持ち悪っ…」

明らかに レモンは嫌がり 後ずさりした

ヒトミ

「これは スライムじゃなくて チーズっていうの 熱を感じると とろけちゃう食材ね どう? 食べてみる?美味しいわよ?」

レモン

「い…いらないわよ!こんなスライム!」

ヒトミ

「あら?そう?美味しいのに…まぁ いいわ サヤカちゃん 食べてみましょう」

サヤカ

「そうですね ピザは焼き立てが美味しいですもの 早速食べてみましょう」

少し小ぶりなピザを 6等分に切る

ヒトミ

「レモンちゃん ホントにいらないのね?」

レモン

「いらないっていってるでしょ!気持ち悪い…」

ヒトミ

「そう?んじゃ 一口……こ…これは!な…なにこれ!めちゃくちゃ美味しい!!」

サヤカ

「えー…大袈裟ですよ さすがに そこまではないでしょう …じゃあ 私も…わあ!な…なんて 香ばしさ!そして…このチーズ…濃厚なのにあっさりしてる…嫌な臭みなんて 1つもないわ…こんな…ピザ食べたことない……」

レモンが 興味深く 観察している…

ヒトミ

「もう一度聞くけど レモンちゃん ホントにいらないのね?この食べ物は 熱々の内に食べないと美味しくないから もうサヤカちゃんと食べちゃうよ?」

レモン

「………ゴクッ……いい…いらない…」

ヒトミ

「わかったわ じゃあ サヤカちゃん 食べちゃいましょう!」

サヤカ

「はい お義母様 ここじゃ太る心配もないですからね 罪悪感無くて助かります」

ヒトミ

「そうそう カロリーの事 考えなくていいからね!」

サヤカとヒトミは そんな雑談をしながら 2枚目を食べ終え 残っている2枚に手を伸ばす

レモン

「………ちょっとまって…」

レモンは 右手でサヤカの腕を 左手でヒトミの腕を掴む

ヒトミ

「ん?どうしたの?」

わざとらしく ヒトミはレモンに問う

レモン

「し…しょうがないから…そのスライム…食べてあげる…仕方なくよ 仕方なく…」

サヤカ

「ぜひ 食べた感想聞かせて それと スライムじゃなくて チーズって言うのよ」

レモン

「覚えているわよ!チーズスライムでしょ いちいち言われなくたって わかってるわ」

ヒトミ

「まあ スライムでもチーズでも 名前何て 何でもいいわ じゃあ 味見してくれる?レモンちゃん」

レモン

「…しょうがないから 食べてあげる……」

レモンは 恐る恐るピザを持ち上げる チーズの溶けた見た目に 目を背ける しかし 2人が美味しそうに食べている姿を思い出し 先の方を少しだけ噛んだ

レモン

「………!!!わ!」

その後 大きく口を開け 口一杯にピザを頬張る

ヒトミ

「どう?レモンちゃん?」

気が付けば 1枚目はすでに食べ終わり 2枚目を食べ始めている

レモン

「…むぐ…ま…むぐ…あ まあ ね! ゴクンッ でも オムライスには及ばないわね」

ヒトミ

「残念 オムライスの牙城は 崩せなかったか」

一方 帰宅中の 男子チームは ユウキの家の方面から 煙が確認をとれるところにまで 来ていた

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