短編:サラリーマン・パチンカーの独り言!!!
立花 優
第1話 独り言のスタート
私が、パチンコにのめり込んだのは、大学3年生の時だった。
ある暑い夏の夕方、大学の下宿の駅前に一軒のパチンコ店があり、既に、就職が決まっていた先輩の4年生が朝からパチンコを打っており、ドル箱、4~5杯は玉で満杯状態だった。
で、「疲れたから、この台お前に謙るは……」と、そう言って、私に、その台を譲ってくれたのだが、しかしこの私が、その後、どのように打とうとも、玉は飲み込まれていくばかり。
即、古本屋で、「パチンコ必勝法」を数冊買って、努力はしてみたものの、初めは、パチンコで、とても飯は喰えそうにも無い程の惨敗。
手打ち式のハンドルで、一発一発打つのである。確かに、猛練習すると、パチンコの腕は徐々に上がった。
当時のパチンコ台は、チューリップに玉が1個入ると、一度開き、十数個の玉が払い戻される。ここで、このチューリップに、一度に2個パチンコ玉を、放り込めれば、チューリップは開き放しになり、無限に玉が出る計算になる事になる。
また、古本屋で数冊買い込んで来た、「パチンコ必勝法」の本には、パチンコ台の傾きも大きく関与するとも書いてあった。
簡単に言えば、パチンコ台の元になっているベニヤ板が、前に、若干傾いていると、玉が前に傾き、いくら、チューリップの上の二本の釘が大きく開いていても、玉は、必ずしもチューリップには入って行かないと言うのである。これを更に詳しく言えば、パチンコ台の傾き故、玉が、釘の上を飛び越えて、チューリップに入らないのだ。
そこで、その解決法として、パチンコ台の下にある玉の受け皿に、多数の玉を置いておくと、その重みで、ベニヤ版の前傾が是正され、玉が、チューリップに入り安くなると言うのである。
さて、大学を卒業して、東証一部上場企業のファッション会社に入社したものの、社風と合わず、わずか、半年で退社。
北陸の地元にUターンしたが、そこでの給与は、前の会社の1/3しか無かった。
ここで、再び、小遣い稼ぎに、パチンコに手を出すのだが、わずかの間に、パチンコが急激に変化していたのである。
いわゆるフィーバー機が出現。玉を打つハンドルも、手動式から、モーターで玉を打ち出す自動ハンドルに変わっていた。……これでは、学生時代に習得した、パチンコの打ち方は、既に、通用しなくなってきていたのだ。
そもそも、フィーバー機とは、何か?
私は、再び、新たな「パチンコ必勝法」の本を、数冊以上買い込んで、研究を再開した。
同僚らは、次々と結婚していく中、学生時代、パチンコ以外は遊んだ事の無い私には、ここで、遊ぶだけ遊ばねばと思ったのだろう。
何しろ、自慢では無いが、某私立大学は総代クラスで出ている。全学部で、1学年に2名しか貰えない、完全給付型の奨学金をもらうために、学生時代は、ホント、良く勉強していたのだ。
それも、見事卒業までの3年間、給付された。その完全給付型奨学金をもらうには、基本的には、大学1年生時の成績で、最低、オール優を取らないと、給付されない。また、2年生で成績が下がれば、即、打ち切りとなるのである。
多分、その反動なんだろうなあ……。
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