【R15版】淫魔キブリーの愉悦〜○○○○しないと出られない部屋に両片想いの男女を閉じ込めるのが性癖の淫魔〜

柚香町ヒロミ

一組目 魔法使いと剣士

 とある男女の二人組、剣士と魔法使いがダンジョンの攻略をしていたある日の事。順調に歩を進めていた二人であったが事態が一転、謎の光に包まれダンジョンとはかけ離れた部屋へと飛ばされてしまった。異様な程にピンクに染め上げられたその部屋にはデカデカと大きな文字が掲げられている。



『セッ○スしないと出られない部屋』


「は?」

「え?」

「「ええええええええ!?!?!?!?」」


 仲良しな二人は顔を見合わせた後、真っ赤になり悲鳴にも似た叫び声をあげる。


「セック…………何だそれ!?何でそうしないと出られないんだ!?」


 剣士が率直な疑問を魔法使いに投げ掛けると魔法使いは少し考え込んだ後頬を赤くしながら口を開く。


「……き、聞いた事があります……魔族の中には他種族のセック………性交渉を見るのが三度のご飯よりも大好物な方がいて色んな種族を拐っては強制的に……そ、そういう事をさせるとか……」

「は、はあ!?要するにデバガメって事!?ならそういう店に行きなよ!?」

「私もそう思います……ですがそういうお店に行くのとそういうプレイをさせるのは趣が全く違うとかなんとか……」

「ええ……」


 理解が追い付かない魔法使いの話にドン引きしながら剣士は部屋を見回すが部屋には扉や窓はなく中央にはい、ここでヤッテネ!と言わんばかりのドピンクハートマークなキングサイズのベッドがあるばかりであった。


「出口も見当たらないしどうすれば………まてよ?何でそんな話を君が知ってるんだ?」

「以前宿屋に置いてあった雑誌にインタビューが載ってまして」

「インタビューしちゃったの!?しかも魔族も答えちゃったの!?頭おかしいの!?」

「ですよね……噂によるとその魔族……種族は淫魔らしいのですがかなり強いらしくて自ら生成したその部屋はあらゆる耐性を有していてどんな要塞よりも堅固なんだとか……。セッ……性交渉をせずに死なれたら困るから空腹にはならないようにし一日経てば身を清める魔法が自動的に発動するとも……」

「何その性癖にかける情熱と福利厚生………おりゃあ!!」


 試しに手持ちの剣でおもいきり壁を切りつけるが切り傷一つつかない状態なのを確認し剣士は溜め息をつく。魔法使いも杖で炎の玉を作り出し放つがそれもまた傷をつける事は叶わなかった。ため息をついて二人はベッドに腰を下ろす。ベッドは座り心地が最高でここで寝そべったら気持ちいいんだろうなと剣士は思うが今この状況でする気にはなれない。


「……本当にし、シないと出られないのか…?」

「…………らしいです……あくまで雑誌に書いてあった記述によると、ですが。被害者の中には一年部屋で過ごして仲を深めた結果、なんだかんだそういう事をして出られた方々もいるとか……」

「一年!?その淫魔気が長いな!?」

「『少しずつ距離が近づいていく二人のやり取りが最高でしたね……今でも覚えてます……』という文章と共にどや顔の写真が貼り付けられてました」

「顔割れてんの!?捕まれ早く!!」

「……それが……その淫魔、訴えられてないんですよね……」

「………え?同意も無しに拐って監禁した挙げ句セッ………そういう事させてるのに?」

「そうなんですけど……その淫魔が拐うのは……………性交渉してもいいくらい想い合っている友人以上恋人未満の二人らしくて。この部屋がきっかけで恋仲になるので………その……」

「訴えるほどの恨みがないと。…………あれ?」


 魔法使いの言葉に不本意ながらも納得する剣士だがふと疑問が脳内によぎる。では今閉じ込められている自分達は、と。


「え……」

「……そ、そういう事なのではと……」


 魔法使いもその思考に至ったのかもじもじと指を動かしたり頬を赤らめている。その姿は可憐な花のようだと剣士は思い、見惚れる。魔法使いもまた剣士が初々しく自分を意識する様に胸を高鳴らせていた。


「ええ!? そ、そんなわけないだろ!? 君が僕みたいな奴を好きなわけ……」


「そんな事ありません! いつも後ろ向きなわたしがあなたの明るさに何度助けられた事か……。わたしは……ずっと前からあなたを想っていました」


「……っ……ぼ、僕だって君がいてくれたから迷いなく剣を振るう事が出来たんだ。優しくて頼りになる……大好きな君がいてくれたから……」


 互いに秘めていた想いを吐露すると一気に『そういう』ムードになる。二人が若い男女というのもあるが座っているベッドや部屋そのものがピンクなのも要因の一つかもしれない。


「……今も僕達のこと、見てるのかな」

「……かもしれません。 …………あの……」

「な、なに……?」

「このままここで暮らしますか? それとも……」


「出られるように『行動』しますか?」


 魔法使いが剣士の方へと体を傾け囁く。重心が移動しギシリとベッドが軋む音が部屋に響き青いリボンを解いたのかサラリと魔法使いの長い髪が剣士の頬を撫でる。魔法使いの纏う雰囲気が艶めいたものへと変化し剣士はゴクリと喉を鳴らした。


 それが緊張からなのか、それとも興奮によるものなのか。己の心も分からないままにベッドに倒れ込んだ。そのまませめて直接黒幕に行為を見られないようにと布団に潜り込むと魔法使いも後に続く。


「あのさ。僕、経験ないんだけど……」

「そうですか。なら私がリードしますね」

「……経験あるんだ?」

「一応私の方が年上ですからね。……嫉妬してます?」

「……そんな事は……あるけど」


 剣士が肯定すると魔法使いは嬉しそうに微笑みながら口づけを落とす。その口づけはこれからの行為を示すようにゆっくりと深くなっていきやがてぐぐもった声が布団の中からするようになったのだった。




   ◇◇◇




「……出られたね」

「……はい。体調の方は大丈夫ですか?」

「…………まだちょっとダルいけど平気。君は?」

「幸せです」

「……気分を聞いたわけじゃ……まあいいけど……」


 アレコレを終えた二人は謎空間から脱出した。二人の距離は閉じ込められる前よりもずっと近く指が絡み合ったまま手を繋いでいた。どちらもその手を振りほどこうとせず寄り添うように仲睦まじく歩くのだった。




   ◇◇◇


 


 そんな初々しい二人の様子を水晶玉を通して見続けている男がいた。男の名はキブリー。セッ○スしないと出られない部屋に両片想いの男女を閉じ込めるのが性癖の淫魔である。


「はー、やっぱり両片想いの、あと一押しでくっつくカップルを強制的にセッ○スさせて一部始終眺めるのは最高ですなー!!!!!!ボーイッシュな僕っ娘と年上お姉さんみたいな青年の組み合わせは初めて見たが……いい………尊い……ご馳走様でした………次はどんなカップルを拐うかな……うへへへ……」

『素直になれず喧嘩ばかりしてしまう幼馴染の男女が検出されました』

「マジで!? ツンデレ幼馴染ケンカップル(未満)ですと!? 王道✕3じゃん……その二人にするぅ!!」


 元凶はしばらく恍惚の表情を浮かべた後限りない欲望──己の性癖のために次のターゲットをロックオンするのだった。


 めでたしめでたし……?

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