第26話 拠点がやっぱり良いねぇ

「はぁー!参った参った!」


 拠点に戻って来て早々、リビングのソファーに倒れる俺。


「あれ?お兄ちゃん達早かったね?」


「コー!」「わふっ!」


 俺の声が聞こえたんだろうな。凛がトーニャと源を連れてヒョコっとリビングに顔を出したんだ。


 ……やべえ、癒される。って、どんだけ肩に力入ってたんだ?俺……


「おー。ただいまー」


 横になりながら片手を上げる俺に、「コー?ドラゴンたすけたの?」ってトコトコ歩いて来るトーニャ。


 あ、そっか。トーニャには絵本の物語に合わせて教えてたっけ。


「トーニャ、残念ながらまだなんだ」


 トーニャの頭を撫でながら、ちょっと困ったように言った俺。その表情がトーニャには疲れているように見えたんだろうなぁ。


「コー、がんばった!」


 逆に小さな手で頭を撫でられたよ。因みに、源にも顔舐められているけどな。


 あー……なんか帰って来たわぁって更に実感したなぁ、俺。


「お兄ちゃん、お父さんとお爺ちゃんは?」


「今、話し合いにジャンさん家に行ってる」


 そうなんだ。父さんと爺ちゃんは帰って来てすぐにジャンさん達に情報を伝える為に動いているんだよ。


 俺も行こうか?って一応聞いたんだけどさ。


 「洸にしては頑張ったからなぁ」


 「まあ、大人に任せておけ」


 って感じで、疲れた俺の表情に父さんと爺ちゃんが気を使ってくれたんだ。


 あの二人、体力ありすぎだろ。


「そっか。じゃあ、お兄ちゃんが元気になる情報教えるね。なんと!今夜は焼き鳥なんだよ!しかも、異世界版焼き鳥だから焼き串?」


「マジで!?」


「ワンッ!」


 思わずガバっ!って起き上がった俺。あ、源ごめん。驚かせたか。


「……ところで。凛、それ……?」


 さっきから気になってたんだよ。凛が持っている串の束……


「へへへ〜!やっぱり必要でしょう?40cmくらい!」


 自慢気に木串を見せる凛。どうやら源とトーニャを畑で遊ばせて、自分は外で串を作る作業をしていたらしい。


「良いねぇ!これくらいが丁度良いんだよ!」


 それを見て俄然やる気になった俺。するとタイミングで母さんから声が掛かったんだ。


「凛〜?串出来た〜?」


「あ、今持ってく〜!」


 キッチンから声を上げている母さんに、凛が走って持って行く様子に今から腹が減ってきた俺。


 つい柄にもなく「手伝おうか?」なんて言いに行ったら、当然ケイトさんもいる訳で……結局トーニャと源の相手を時間までしていたんだ。


 まあ、リビングで源と遊ぶトーニャを見てただけだったけどな。


 そして、母さん達が畑が見える庭でジュージューと音を立てて肉が焼けてくると、匂いにつられて父さん達もこっちに合流して来たんだ。


 「さあ、良いわよぉ〜!」


 待ち侘びた母さんの声に、始まる焼き鳥ならぬ焼き串バーベキュー!


 まず手を伸ばしたのは定番の塩味だけど……なんだこれ?すっげえ柔らかっ!


「くうう〜!染みる〜!」


「かあっ!美味い!」


 俺が肉で感動している中……父さんはビール、爺ちゃんは冷の日本酒にまず口をつけたらしい。


 こう言う姿を見てるから酒って美味いのかって思ってたけど、こっそり舐めてみても美味いって思えなかったんだよなぁ、俺。


「遥さん、とっても美味しい!」


「おいしーねー!」


 ケイトさんもトーニャに食べさせながら一緒に食べて驚いていたなぁ。ジャンさんとディグレンさんとヤレンさんの三人は、勢いよく黙々と食べてるし。


「あれ?お母さん、串にアルミホイル巻いてるのなんで?」


「そうしないと燃えちゃうのよ〜。後ね、凛も覚えておいた方がいいわよ?焼き鳥は先に蒸してから焼くと美味しいの。あとは、お酒を入れた霧吹きでふきかけて焼くの。良い焼き色になるわよ〜」


「へえ〜そんな裏技もあるんだね」


 凛と母さんの話しを聞きながらモグモグ肉を頬張る俺は、そういえば、と思い出して父さんに聞いてみたんだ。


「父さん。そういえば話し合いどうなった?」


「ん?」


 七味をかけた肉を食べてクイっとビールを飲んでから、父さんが話してくれたんだけど……


「え?今度は俺も留守番?」


 何気に次も行くつもりだっただけにショックだったけど、ディグレンさんが苦笑しながら教えてくれたんだよ。


「悪いな、コウ。流石に皆んなの顔を覚えている俺かヤレンのどっちかが行かないと気が済まなくてな。……もし、逃げられたらスラムに居るだろうと思うと……」


 言葉を飲み込みグっと拳を握るディグレンさんの姿を見ると、流石に我儘は言えないよなぁ。


「うん、まあ、仕方ないね。でもさ、どっちが行くの?」


「それはまだ決めてないが……今回はヤレンに頼もうかと思っている」


 隣で梅大葉串を食べてるヤレンさんが、顔を上げてディグレンさんを見ているって事は話し合いでは両者譲らなかったんだろうな。


 でも、そんなディグレンさんがヤレンさんに譲るって事は……


「そっか!ヤレンさんの【遠見】か!」


「ああ、それに何かあった場合回復魔法もあった方が良いだろう。コウのポーションは効果が凄すぎるからな」


 ちょっと困った表情のディグレンさんだったけど、自分が1番そのポーションの威力知っているもんなぁ。へへっ、威力が凄過ぎるのも困りもんだぜ。


 なんとなく鼻が高くなる俺の様子に、わさびをつけた焼き鳥を齧る爺ちゃんが「調子に乗りやすいのも問題だぞ?」と笑って釘を刺してきたけどさ。


「だが、今回はコウが作ってくれた魔導ネックレスがあるから行動出来るんだ。コウの力は本当に凄い」


 なんてヤレンさんも持ち上げてくれるんだもんなぁ。照れるぜ。


 お礼に、俺のお気に入りの辣ニンニクネギ味噌をそっと渡してみたさ。そしたら「匂いが強烈だが、これも美味い!」って気に入ってくれたみたいだな。いや、本当に美味いんだぞ?


 「まあ、洸にはこっちで色々作って貰いたいものがあるからな」


 なんて言いながら、父さんが俺の取っておいた一本を奪っていく。あ、油断したぜ。


 「そうだな。俺や繁の分もヤレン達が持っている機能を増やして貰えるたら助かるな」


 爺ちゃんが今度はおろしポン酢味の焼き串を食べながら提案をしてきたけど……今回みたいな事があれば、[気配遮断]や[透明化]確かに必要だよなぁ。


「後は、悪いがワイヤレスイヤホンを貸してくれると有り難いな」


 奪った肉の代わりに俺の皿にネギ塩胡麻油の焼き串を乗せながら頼んできた父さん。お!味変も良いね。


「お父さん、凛も何かしておいた方がいい?」


 どうやら凛もネギ塩胡麻油を食べてみたくなったんだろうな。母さんに頼んでいる。匂いがたまらないもんなぁ。


「凛はこの辺りの開拓をやって欲しい。ジャンがその護衛につく予定だったが、今の話だとディグレンも加わってくれるだろ?」


「当然だ」


 おお!なんかうちの戦力増強されていくなぁ。こりゃ、防具も改造したいところだけど……


「なあ、父さん。デジカメ拠点に持ってくる気ねえ?」


 それがあれば、映像俺らもみれるし証拠にもなるからって思って軽く言ったんだけどさ。


「むぅっ!あれは……っっ!俺の給料から積み立ててようやく手に入れた坂木家の歴史を紡ぐ物……!!だがっ……!今まさに坂木家の歴史に関わる重大な案件に携わっている……!だが、こっちで洸に渡すと、地球では使えない……!……!!!」


 あ、やべ。父さんテーブルに突っ伏して苦悩してるわ。本気で「ぬおおおっ」て悩む人初めて見た。


「繁も凝り性だからなぁ」


「溜まって行くのよ……データで残してくれたら助かるのに……」


 爺ちゃんと母さんが「はああ……」と顔を合わせてため息を吐いているのは、自宅に結構な写真のが飾られてあるからなんだ。


 確か「作品は飾ってこそ意味がある」とかなんとか言って、パソコンで処理したのをわざわざ印刷頼みに行ってるんだからなぁ……


 それにしても、誰も一眼レフを持ってきてくれとは言ってないのになぜその考えに至らないんだろ?


 ——なんて、結局真面目な雰囲気になりきれない坂木家の話し合い兼食事会。


 そういやあ、ジャンさん話してねえじゃん。とまぁくだらない事が頭の中をよぎりつつ、それでもしっかりやる事をやるのも坂木家なんだぜ。


おっし!しっかり寝て充電したら動き出すぞ!


   ——————————————

次回更新は9/15です。

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