第25話 情報を収集しよう

「ふはあ!無事街に入れた〜!」


 街に入る事ができてホッとする俺。


 だって、結構長い列だったんだぜ?珍しさもあったけど、いい加減飽きてきていたからなぁ。


「確かになぁ。まあ、一人一人確認するから時間がかかるのも当然だけどな」


 ちょっとため息を吐きつつ、俺の頭にポンと手を乗せる父さん。


「疲れるのもわかるが、先に魔石や素材の換金に行くぞ」


 爺ちゃんはそんな俺達の姿に苦笑しながら、先頭を歩いているんだけど……ちょっとげんなりしている俺達より体力のある65歳。流石は坂木家の元気印……!


 なんて思いつつ爺ちゃんの横を歩いていくんだけど。


「オレンジのレンガ調の家が多いんだなぁ。覚悟してた匂いがしないし、それなりに綺麗じゃね?」


「まあ、よくある中世の設定ではないって事は助かるがな」


 爺ちゃんもちょっと安心した表情で俺に同意してたけど、正直綺麗好きの日本人には、糞尿の匂い蔓延した街なんて耐えられないからなぁ。


 歩きながら周囲を見ると、やっぱり髪色や体格の違う人達だらけだし、服装もそれなりに様々だから結構華やかだ。


 ん?俺達だって、日本の服着てるわけじゃないぞ?


 ケイトさんが作ってくれた村人がよく着るようなロングベストとズボンに革の靴を履いているんだ。


 あ、白のTシャツは自前だけど。


 但し、服は余っていた緑のカーテン生地を使っているから、全員がお揃いみたいになったけどさ。


 まあ、浮いてないみたいだしよかったぜ。


「さあて、洸。どうやら商業ギルドについたぞ」


「おおー!これが!」


 爺ちゃんに言われてついお上りさんのように騒いでしまったが、仕方ないよな。だって、本で読んで想像していた通りだったんだぜ。


 他より大きな建物に行き交う商人であろう人達。街の人も多く入っていく感じがするから、役所みたいなものかな?


「洸、離れるなよ」


「はいよ」


 ワクワクしながら入っていくと、入り口入って右にはデカい掲示板に依頼書が貼ってあって、左は待合室。正面に受付というセオリー通りの作り。


 だけど、ザワザワとあちこちで商談の会話や依頼の会話が聞こえてくるって事は、紛れもない現実なんだよなぁ。なんかすげえ。


「ようこそ、ロックシュリー支部商業ギルドへ」


 ようやく俺らの番になった時、綺麗な受付のお姉さんが言った言葉で此処がロックシュリーという街だと知った俺。


「新規登録と魔石と素材の換金をお願いします」


 ここは事務が慣れている父さんが代表でやってくれたんだけど、基本何事もなかったから俺がまとめて説明するよ。


 ここではギルド登録に一人銀貨一枚(千円相当)がかかるらしいんだ。


 当然俺達はお金持ってないから魔石払い。因みに、街への入場料も魔石で支払ってきたんだ。三つ取られたけどさ。


 そして書くのは名前と性別と主に何を売るかなんだけど、一応魔石と野菜にしているんだ。


 魔石はギルド内で換金。野菜は市場で売るんだけどさ。


 (おわっ、魔石だけで結構いった!)


 つい口に出しそうで危なかったけど、それだけ袋にいっぱい金貨や銀貨が入っていたんだぜ?


 父さんは営業スマイルで、更に両替をお願いするくらい冷静だったけど、俺はつい凝視しちゃったんだよなぁ。


 爺ちゃんがすぐにマジックリュックに仕舞ったけど、俺だったら持ちたくねえわ。


 現役高校生の所持金は結構シビアなんだぜ。


 って話それた。素材はどうやら隣の冒険者ギルドで取り引きされているみたいだったけど、今回は見送る事にしたんだ。まあ、稼ぎに来たわけじゃないからなぁ。


 で、市場だけど……治安の良し悪しで場所代が違うみたいなんだよ。


 安いところはスラムが近い場所で、ほどほどが街中、場所代が高いけど治安が良いのは貴族街より。


 俺達は貴族に奪われた獣人達の情報が欲しいから、場所代が高い貴族街よりを選んだんだ。


「へえ〜。結構色々種類あるんだなぁ」


 商業ギルドから出てまっすぐ行くと、貴族街に近い広場があるんだけどさ。そこが俺達の予約した場所があるところなんだ。


 食べ物屋台、武器、魔導具っぽいもの、食器や服まで雑多に並んでいるんだ。中東の市場みたいだなって思ったなぁ。


「ほら、洸。俺達も用意するぞ」


「あ、わかった!」


 父さんに言われてマジックリュックから出すのは、木箱に入った野菜や果物達。


 あんまり多くの種類を出すのも良くないからって、玉葱とじゃがいもと葡萄(デラウェア)を大量に並べてみたんだ。


 勿論、木箱には品質保持付与をかけているぞ。


 後は俺達が座る木の折りたたみ椅子(父さん作成)を三つ出して、三人共[鑑定]が付与されたリストバンドをつけて完成!


「よし!後は俺と親父で接客するから、洸は手配通り頼む」


「了解!」


 更に俺はワイヤレスイヤホン(俺のお気に入りだったけど、泣く泣くこっちに持って来たもの)を装着。


 ワイヤレスイヤホンには、悪意感知・集音・ノイズ除去・トリミング・音量音質調整・抽出付与をかけているんだ。


 勿論俺専用だから、他の人がつけても何にも聞こえないって仕様だ!結構頑張ったんだぜ、俺。


 ……さて、と。とりあえずあの商人っぽい人達の会話を抽出してみるか。


 俺は斜め前で話をしている大量買いをしている商人の声に注意を向ける。


『見たか?今来た家族の店。かなりの容量のマジックバック持っているぞ。しかも、品物もどれも新鮮って事はあの木箱も魔導具なんだろうよ』


『っかあー!見せつけてくれんじゃねえか!まあ、だからこそここの場所を取れたんだろうが……見た感じ良さそうだな。値段もそこそこ良い値段するだろうが、俺も土産に買って行くかな』


 あちゃー……思いっきり目立ってるわ、俺達。しかも、結構バレてる。


 でも、あの人達はすぐ違う会話に移ったし、奥さんの話やどこそこの看板娘が良い身体してるとか言う話しになったし……他の人に移った方が良いだろうなぁ。


 お?身なりのいい女の人だな?もしかしてどっかのメイドさんかな?


 ちょっと遠いけど、真剣に品物を見る女性を見つけて、今度はその人と店主さんの会話を抽出してみた。


『ミナちゃん、何か急な入り用かい?』


『ちょっとね。うちのご主人かなりの食道楽でしょう?変わったものがないか常に偵察にお使いに出されるのよ』


『ああ、チェルノ家だったなぁ、ミナちゃんの勤め先。あの家は良いものばっかり食べているから、変わったもんが食いたくなるんだろ。そういや、さっき開いたばかりの店も奥にあるよ』


『あら、そう?じゃ、行ってみるわ』


 っと、もしかしてうちの事かよ?流石市場!口コミはえぇな!


 あ、やべ。目線合いそう……!他には……?


『最近また獣人を目にするようになって来たなぁ』

 

 え!?待て!何処だ?


『ああ、スラム近くの広場だろ?あそこは治安悪いからなぁ』


 いた!ちょっと遠いけど、木の側で立っている二人組か……!


『ああ。ちょっと様子見に行ったら、あっという間に財布盗まれちまった!』


『どーせ端金だろ。たいして入ってないだろうが』


『まあな。2銅貨しか入れてねえから別にいいんだが、やっぱり悔しいじゃねえか』


『まあな。アイツら逃げ足速いからなぁ。サッサとスラム取り締まってくれりゃいいのによ』


 スラム?スラムに獣人がいるのか?


「あの?これ幾らかしら?」


 更に聞こうとしていたところで、さっきのメイド服の女性が来て声をかけられてしまった俺。


 父さんも爺ちゃんもお客さんに対応中だったし、俺に声をかけざるを得なかったんだろうな。


「いらっしゃいませ。葡萄ですね?」


 くっそぉ!タイミング悪すぎだろう!?


 仕方なく俺も接客に回ったものの———


 その日はそれ以上の収穫は無し。それどころか、売り上げが良すぎて完売するという思いもよらない成果をあげた俺達。


 ササッと店を畳んで近くの宿屋に部屋を一室とり一息つくも、どうやら俺達の事を嗅ぎ回る奴らがいるのが聞こえて、そのまま転移フラフープで拠点に戻って来たんだ。


 勿論、フラフープごと転移したから何も残して来てないぞ?宿屋も先払いだったからな。


 むしろ、また街に行くためには、再度移動が必要になるけど仕方ないよな。


 今はジャンさん達を交えて、早急に相談しなきゃいけない案件ができたんだから———


     ————————————


 次回更新は9/12の予定です。こちらの作品はゆっくり更新にさせて頂きますのでご了承下さいませ🙇🏻‍♂️

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