天に届けたい想い

若福清

プロローグ

第1話 いい顔してるでしょ?

登場人物


山西やまにし太希たいき

性別:男

年齢:中学3年

身長:172

髪型:黒のショート。


神川かみがわ水樹みずき

性別:女

年齢:中学3年

身長:155

髪型:黒のセミロング。


四条しじょう七海ななみ

性別:女

年齢:中学3年

身長:147

髪型:黒のボブ。





山西やまにし太希たいき。高校生になる前日。


「太希も明日から高校生か~ぁ。」


そう母親が嬉しそうな表情で朝食の食パンを食べる太希を見つめる。


「どう?楽しみ?」


そう母親は太希に尋ねる。


「別に。中学と変わらないだろ?」


そう愛想のない声で太希は答えるとチョコがられた食パンにかぶりつく。


「それは太希次第よ。」


「え?」


そう太希は母親の言葉に聞き返す。


「太希が何か夢中になれるものを見つければ、世界は一気に変わるわよ。」


そう母親は優しく微笑む。


「じゃぁ、それの見つけかたを教えてくれよ。」


そう太希が無愛想なまま言葉を返すと母親は目線を宙に向けて考える。


「恋でもしてみれば?」


そう返ってきた答えは適当なものだった。


そんな母親に太希は呆れた声で「さいで。」と返す。


🥁


「あれ?どこか出かけるの?」


そう母親が玄関でくつをいている太希に尋ねる。


「うん。暇潰しに散歩してくる。」


そう太希は答える。


「そう。だったらついでにトイレットペーパー買ってきて~。」


そうお願いすると母親はリビングに入って行く。


そんな母親を不機嫌そうに睨むと太希は家を出て行く。


(変わらない日常。

目の前に出されたものをこなすだけのつまらない日常。

小学校も中学校もそうだったのだから、高校でもそうなんだろう。

もしかしたら、大人になってもそうなのか?だとするなら、人間の人生は意外と最初から最後までつまらないものなのかもしれない。)


そんなマイナスな事を考えながら歩く太希の耳に心地いいが届く。


その音の方へ太希が目線を向けると多くの人達がを作っていた。


「なんだ?あの輪は。」


そう太希が不思議に思い呟く。


「バケツドラムですよ。」


そう誰かが太希の後ろから声をかける。


その声に太希は振り返ると同い年ぐらいの女の子が笑顔で立っていた。


「・・・君は?」


そう太希が尋ねる。


「あぁ。ごめんなさい。

神川かみがわ水樹みずきって言います。

あの輪を作ってるドラマーの四条しじょう七海ななみの幼なじみです。」


そう水樹は優しく微笑んで答える。


その微笑みに太希の心はみょうかれる。


「どうせなら、もっと近くで聞きませんか?」


そう言うと水樹は太希の手を掴んで人の輪に連れて行く。


人の輪をき分けて水樹と太希は1番前に立つ。


太希の眼に映るのは

綺麗な汗を流しながら自分の全てを音として叩き表現している女の子の姿だった。


「いい顔してるでしょ?」


そう水樹が太希に話しかける。


そんな水樹に目線を向けて「・・・そうだね。」と太希は答える。


🥁


演奏が終わり、人の輪がりに去って行くと水樹が七海に声をかける。


「七海、お疲れ様。」


その声に七海は目線を向ける。


「あぁ。水樹。来てくれたんだ。

ありがとう。」


そう七海は嬉しそうに微笑む。


「もちろん。そうだ。紹介するね。

こちらさっき知り合った・・・。

え~とお名前なんでしたっけ?」


そう水樹が太希に尋ねる。


「山西太希です。」


そう太希が答えると七海があからさまに不機嫌そうな表情を太希に向ける。


(え?オレなにかした?)


そう太希は心の中で焦る。


「山西君。七海の音めてたよ。」


そう水樹は話を続ける。


「それはどうも。」


そう無愛想な声で七海はお礼を言う。


「いえいえ。そ、そうだ。

オレ母親から買い物頼まれてたんだ。

悪いけど、オレはこの辺で。」


そう言うと太希は逃げるように去って行く。


「今日はありがとう~!!」


そう水樹は笑顔で太希に手を振る。


その笑顔を心に強く刻みながら太希は軽く頭を下げる。


これが太希と水樹の出会い。

そう・・・ここから始まるのだ。

あの辛く悲しい現実の道が。


そして、その先の・・・。


(神川…水樹…か。)

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