マルチヴァース〜地球は多元宇宙に統合されたようです

シルリム

第零部 システム統合、マルチヴァース暦167

統合

 俺の平凡よりちょい上?な日常は、同じループの中で繰り返されている。


 月曜日から金曜日までのルーチンは変わらず、朝6時に薄暗い部屋の中で目を覚まし、7時には家を出る。外に出ると、すでに街が目を覚ましている。


 駅と通勤電車の中は、騒がしい。うるさいが、イヤホンをつければ苦痛ではない。同じような表情をした人々の中に混じって、俺はただ黙って立っている。


 8時頃には会社に着き、夕方19時半までオフィスで仕事をする。週末には、家にこもってゲームを楽しんだり、その様子を録画、編集、公開したり、ジムで汗を流したりする。至ってシンプルだ。


 今日は木曜日だ。待ちに待った週末まで、金曜日が残っている。ああ、早くその日が来てほしい!早くゲームをしたい!きっと今回の週末で金策は終わるはず!


 「もう出ないと、電車に遅れちゃうな。」そう思って家を出る。外に出ると、身の回りの空気がひんやりと感じる。出発してから1時間12分後、やっと会社に到着する。


 エレベーターで12階まで上がり、オフィスのドアを開けると、いつもの光景が広がっている。同僚たちが座って、隣の人と話したり、コーヒーを淹れたりしている。


 俺も、見慣れた顔たちに向かって挨拶をする。「おはようございます。」と声をかけると、「おはようございます。」と返って来る。これが終わると、今度は自分も返す側に回り、部長がオフィスに現れると、仕事が始まる。


 たった12分後、部長がオフィスに入って来る。


「みんな、おはよう!今日も仕事頑張ろうね!」


 ため息を吐く。部長は陽キャだ。会社の中で陰キャ?というか人と関わるのがあまり得意ではないの方な俺には、少し眩しい。


 一旦仕事を始めると、誰も喋らなくなる。それが楽だと、俺は思う。いや、人と話すのも必要だとは思うが、やはり一人がいい。


 11時55分、今日の昼食の時間が近づいてきた。俺には一応友達がいるので、いつものように一緒に食事に行くことになった。


 友達の所へ行き、「今日は何を食べようか?」といつものように問いかける。すると、部長の坂本が答えてくれた。そう、部長は俺の友達の友達なのだ。まあそんなことは正直どっちでもいいが。そして返ってくる言葉は、「うーん、今日はラーメンかな?気温も温い感じだし。」だ。


 この一言で、今日はラーメンを食べることが決まった。しかし、やはり坂本は食事を決めるのが上手いな。


 俺たちはすぐ近くのラーメン屋に入る。店内は活気にあふれ、食欲をそそる香りが充満している。ラーメンを注文すると、ものの数分で熱々のラーメンがテーブルに運ばれてくる。


 「いただきまーす!」そう言い、スープを一口味わおうとしたその瞬間、急に目の前にゲームのウィンドウのようなものが現れた。


 驚きと共に思わず吹き出してしまった。隣の席でも、同じように驚いているのが分かる。つまり、これは俺の幻想などではなく、現実ということだ。こんなメッセージが現れるなんて普通ではあり得ない。


【この宇宙ヴァース多元宇宙マルチヴァースに統合されます。10秒後にチュートリアルへ転送します。】


 え?10秒後?ラーメンを食べ終える時間なんてないじゃないか!そう焦っている間にも、時は過ぎていく。


 そして、その10秒が経つと、あっという間に人類はこの世界から消え去った。


宇宙ヴァース167のチュートリアルを開始します。以下の変更を加えます。

  -『ステータス』の追加

  -『クエスト』の追加

  -『クラス』の追加

  -『プロフェッション』の追加

  -『高速装備』を2セットまで設定出来る様変更

  -『称号』の追加

  -『スキル』の追加

多元宇宙マルチヴァースバージョン1.0宇宙ヴァース167へようこそ。】


---

直後、多元宇宙マルティヴァースの全員に一斉にメッセージが送信された。


多元宇宙マルチヴァースの皆様にご案内申し上げます。160日後、宇宙ヴァース167が多元宇宙マルティヴァースに統合されます。現在は統合プロセスのチュートリアル前であるため、神級以上の皆様にはチュートリアルに関与する猶予が30分与えられます。チュートリアルへの関与においては、E級以下のダンジョン及びE級以下、エピック級以下のアイテムのみ追加可能です。チュートリアルに入場することは不可能です。

宇宙ヴァース167の統合後、暦はヴァース167へと進みます。お間違えのないよう、ご注意ください。】


ーーー

恥ずかしいことに、一人称「俺」と「僕」を混ぜていたので、「俺」で統一しました。-2024/09/18 23:27

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