異世界を生き抜いた悪党の美学
横切カラス
第1話
異世界から帰って来て一晩が経った。
昨日は惰眠を貪り清々しい朝だ。
外に出て適当に山から食料を調達して朝食を済ませる。
それから唯一僕の手元に残ったアメジストを眺めてながら思う。
お金が無いや。
こっちにあったお宝は全部向こうの世界に持って行っちゃったし、家も売ってお金は姉さんにあげた。
つまり、正真正銘無一文だ。
まあ、無い物は奪えばいい。
早速行くとしよう。
◇
「ねえねえ、お金頂戴」
僕は特殊詐欺とかで荒稼ぎしている半グレグループのアジトにアポ無し突撃してお願いしてみた。
「はぁ?
なんだお前?
何言ってるんだ?」
あれ?
聞こえて無かったのかな?
仕方ない。
もう一回言ってあげよう。
「お金が無いんだ。
だから頂戴」
「なんだこいつ頭おかしいのか?」
「えー、言ってる事わかんないの?
もしかして日本語出来ない?
あっ、そうか。
頭悪過ぎてわからないんだ」
「おい、コラ!
舐めとんのか!」
「まあまあまあ、落ち着いて聞いてよ。
何怒ってるの?
もしかしてカップ麺食べるの邪魔してるから?」
僕は机の上に置いてある美味しそうなカップ麺を確認してから続けた。
「でも、まだお湯入れて無いからいいよね?
先に僕の話聞いてよ。
僕はお金が欲しいんだ。
わかる?
お金。
換金するの面倒だから現金ね」
「ふざけてんのか?」
「ふざけて無いよ。
本気だよ。
別に無理を言うつもりは無いよ。
有り金全部でいいからさ」
「おいガキ。
寝言は寝てから言いな!」
半グレの1人が横かな殴りかかって来た。
だけど遅い遅い。
振りかぶりきる前に僕の裏拳が顎を撫でただけでおねんねした。
「なにをした!?」
今の裏拳見えなかったの?
そんなに早くしたつもり無かったんだけどな〜
これは少し力入れるだけであの世にご案内しちゃうね。
半グレ達がナイフを出して襲って来た。
ドラマとかだったらここから大立ち回りの見せ場なんだろうけど、相手が弱過ぎてそうはならない。
だって撫でただけでダウンしちゃうんだもん。
「テメェ!!」
半グレのリーダーっぽいのが銃口をこっちに向けた。
「それ本物?」
「そうだ。
なんだビビったのか?
だけど今更遅え!」
「あーあ。
そんなの出しちゃうんだ。
せっかく僕がお金だけ奪って帰るだけにしようと思ってたのに」
「死ねや!」
飛んで来た銃弾を軽く払い除ける。
弾かれた弾は半グレの1人の頭を貫通した。
「そんなバカな!」
『ひれ伏せ』
僕は霊力を込めた言霊で全員を地面に叩きつける。
おや?
お湯が沸いたみたい。
せっかくだしカップ麺も奪っちゃおっと。
僕は電気ケトルを超能力で動かしてカップ麺にお湯を注ぐ。
3分後が楽しみ〜
「お前は一体何者なんだ?」
「え?僕?
悪党だよ。
君達と一緒だよ」
気力によって身体強化した右足で近くにひれ伏していた半グレの頭を蹴る。
するとそいつの頭が取れてコロコロとリーダーっぽい奴の顔の横まで転がった。
それを魔力で生成した刀で真上から突き刺す。
「ひぃ」
恐怖からか短い悲鳴を上げたけど気にしない。
「だから君達が他人から奪って来たように僕も君達から奪うの。
簡単な話でしょ?」
僕はリボルバーを生成して順番に半グレ達を撃ち殺していく。
そして最後にリーダーっぽいのに銃口を向ける。
「頼む。
金ならやるから命だけは」
「何言ってるの?
君が悪いんだよ。
だって引き金を引いたのは君じゃないか。
バン」
最後の1人も頭が吹き飛んで絶命した。
「まあ、僕の方が悪いんだけどね」
さて、お金探ししようっと。
僕は透視と超能力を駆使して家探しを始める。
結構出てくる出てくる。
死体の財布からも一円残らず貰っていく。
だって死んだらお金いらないからね。
その間にカップ麺も頂いちゃおっと。
おっ、これ美味しいじゃん。
覚えておこうっと。
「本日のゲストは、ドラマや映画に引っ張りダコ。
出演作品は必ずヒットすると言われてる大人気女優の
偶々付いていたテレビのバラエティー番組に綺麗な女性が映る。
ふーん。
今はこう言うのが人気なんだ〜
確かに美人だけどね。
だけど、姉さんの方が断然美人で可愛い。
僕はカップ麺を啜りながらお金を探しつつテレビを眺めていた。
「尾崎 八枝さんは今、相方を探しているとの事ですが――」
「漫才師目指してませんから!」
間髪入れない完璧なツッコミに笑いが起きる。
僕も思わず拍手しそうになった。
「こんな風にツッコミも出来て、バラエティー番組にも引っ張りダコの尾崎 八枝さんですが、今日は仕事からプライベートまで根掘り葉掘り聞いてみたいと思います」
そう言う系の番組なんだ。
みんな芸能人の事ってそんなに知りたいの?
僕にはわかんない。
他人なんてどうでもよくない?
おっと、これは大金発見。
頂いちゃおっと。
あと、このカップ麺のストックも頂きっと。
さあ、カップ麺も美味しく完食したことだし帰るとするか。
「今日は尾崎 八枝さんのお話を聞いて来た訳ですが、お時間になりましたので最後に大事なお知らせをお願いします」
「はい。
今回の映画は神出鬼没と言われた怪盗ナイトメアが、唯一盗むのに失敗したブローチを守った人達の実話を元にした映画です。
私はナイトメアからブローチを守る為に奮闘する警察官の役をします――」
怪盗とか言っといて失敗したんだ。
世の中鈍臭い奴がいるものだね。
……ん?
怪盗ナイトメアって僕だよね?
盗むの失敗した記憶なんて無いんだけど?
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