第2話
絶対に勝ってはいけない戦いです。
ここ最近、筋トレは怠けてる。とは言え、体格も運動能力も、山並君よりは勝ってしまう僕。
戦う前から結果は歴然です。
でも、わざと負けたとして、彼は納得するだろうか?
見抜かれて、機嫌を損なったら呪いをかけられそうですよね。
でも、これと言っていい案が思いつかなかった僕は、意気揚々とやる気満々でテーブルの上に肘を付いている山並君の腕に自分の腕を組み合わせました。
それに気づいた女子たちが、集まって来てテーブルを取り囲みます。
彼女らは何もしらず、わいわい、きゃっきゃと興味津々で声を上げました。
「二人とも、頑張って~」
変な汗が額に滲みます。
――勝ってたまるか。
組んだ僕たちの手を包み込むように、女子が両手を重ねました。
組んだ感触でいうと、山並君の腕はふにゃふにゃで、一押ししたら簡単に倒れてしまいそう。
すでにふらふらしてます。
これはやばい。
僕は倒しやすそうに、浅めに腕をずらしました。
「レディー、ゴー!」
女子の掛け声が響いたその時です。
「へっくしゅん!」
くしゃみがでた瞬間——。
あっけなく、僕は山並君の腕を倒してしまいました。
「神楽耶君の勝ち~! 山並君、相変わらずよっわ」
女子がそんな暴言を吐きます。
会場はたちまち笑いで埋め尽くされました。
山並君は、唇をプルプル震わせながら、声にならない声でこう呟いたのです。
「シ ネ バ イ イ ノ ニ」
それから、およそ3週間が経ちましたが、僕はなんとか生きてます。
夜道や車の運転にも極力気をつけて、刃物からも遠ざかる事にしてます。
高い所にも極力上りません。
けど、ふと思い出したんですよ。
中学の頃、山並君は自分から進んで腕相撲をする事はなかったんです。
絶対に勝てる相手として、クラスメイトみんな山並君とやりたがりました。勝ちという快楽のために、彼を利用していたんですね。
あれは、いじめだったのかなぁ?
彼は復讐のために呪詛を唱えたのかもしれません。
僕はあの時、彼に対してどんな態度を取っていたのだろうか?
みんなに混ざって、彼をバカにし、笑っていたかもしれません。
今となっては思い出せないのです。
あとがきへ続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます