母と娘の1日交換

古都礼奈

母と娘の1日交換

朝の光がカーテンの隙間から差し込み、娘の美咲は目を覚ました。


前夜、憧れのお母さんのようになりたくて、こっそり試したおまじないが効いたのだろうか。


ベッドから起き上がり、洗面所に向かうと、鏡に映ったのは確かに母の姿だった。


「えっ…ほんとにお母さんになっちゃった!」


美咲は驚きつつも興奮を隠せなかった。


憧れの母のように振る舞えるチャンスだ。


急いで母のクローゼットから服を選び、身支度を整えた。


そしてリビングに行くと、自分の姿をした母がいた。


「美咲、これっておまじないのせい?」


「うん!お母さん、今日は代わりに学校行ってみてよ。私、お母さんの一日を体験してみたいの!」


母は少し戸惑いつつも、興味津々で同意した。


「じゃあ、今日は私が美咲の代わりに学校に行くわね。ちゃんと楽しむのよ。」


母が学校に向かうと、美咲は自分の予備の制服を持ち出し、母の身体でそれを着てみた。


やはり少しアンバランスで、袖やスカートが短く感じる。


鏡に映るその姿に、美咲は思わず笑ってしまった。


「なんだか不思議な感じ…でも、なんだか楽しい!」


その日、美咲は家で過ごしながら母の身体での一日を楽しんだ。


母の視点から見る世界は新鮮で、家事をこなすのも一興だった。


一方、母は美咲の制服を着て学校に向かった。


校門をくぐると、すぐに友達が駆け寄ってきた。


「美咲、おはよう!今日は何する?」


母は一瞬戸惑ったが、娘の友達の名前を思い出しながら自然に振る舞おうと努めた。


「おはよう、今日は…普通に授業だね、たぶん。」


教室に入ると、懐かしいような新しいような感覚に包まれた。


授業が始まると、先生の話に耳を傾けたが、久しぶりの勉強に少し苦労した。


休み時間になると、友達と談笑し、学校生活の話題に興味深く耳を傾けた。


「ねぇ、美咲。昨日のドラマ見た?」


「うん、見たよ。あの展開には驚いたね。」


何とか自然に会話を続けることができ、母は次第に楽しみを見出していった。


お昼休みには友達と一緒にお弁当を食べ、放課後にはクラブ活動を見学した。


夕方、学校が終わると、母は疲れながらも充実した表情で家に帰った。


「どうだった、学校?」


「楽しかったよ、みんな若くて元気で。美咲はどうだった?」


「お母さんの身体で制服着るの、ちょっと変だったけど、すごく楽しかった!」


こうして、二人はお互いの一日を共有し合い、貴重な体験を喜びあった。


そして夜が更けると、おまじないの効果が解け、元の身体に戻った。


「またいつか、こんな体験してみたいね」と美咲は言い、お母さんも微笑んで頷いた。


「そうね。でも、やっぱり自分の身体が一番落ち着くわね。」


その後、美咲はお風呂に入り、母も一息つくために部屋に向かった。


しかし、好奇心に駆られた母は、美咲の制服を手に取り、自分の身体に合うかどうか試してみることにした。


「こんな機会、なかなかないものね」と、母は呟きながら制服に袖を通した。


やはり少し窮屈だったが、なんとか着ることができた。


「ふふっ、なんだか若返った気分ね。」


その時、玄関のドアが開き、旦那が帰宅した。


「ただいまー、今日も忙しかったよ…って、なにしてるんだ?」


驚いた表情で立ち尽くす旦那に、母は少し照れ笑いを浮かべた。


「ただ、ちょっとした気まぐれよ。美咲の制服を着てみたくなってね。」


旦那はしばらく呆然としながらも、笑顔で応じた。


「まあ、たまにはそんな遊びもいいかもね。でも次は、事前に教えてくれると助かるな。」


その後、家族はリビングで笑い合い、楽しいひとときを過ごした。


美咲はお母さんの大胆な行動に驚きつつも、また新たな一面を見たことに嬉しさを感じた。


「お母さん、最高だよ!」


「ありがとう、美咲。でもこれからは、おまじないはほどほどにね。」


家族は笑い声に包まれた。

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母と娘の1日交換 古都礼奈 @Kotokoto21

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