隠岐咲夜とデモ悪魔事件(雷)
十六夜 つくし
幕前
何が大事か。そんなことは考えるまでもないことだった。
「命」だ。自分の命が、何よりも大事である。
自分が生きてさえいれば、その他のことは全て些末な問題でしかない。
同族を殺そうが、家族を殺そうが関係無い。
「幸せ」を感じる必要はない。
その感情は「生きたい」と思う性質を紛らわす。
「生きる」以上の贅沢を覚えさ、太らせる。
まるで「死ぬ」以外の不幸が存在するかのような感覚に陥らされる。
いや、最悪なのは「死ぬ」方がましだなんて戯言を吐けるようになってしまうことか。
そこに、人間性など捨てた化け物は存在していた。
何をすることも、何をされることも、不満に感じない文字通りの“モノ”。
カレらは体をいいように弄られ、人類の進歩の為に使い潰される。
実験に耐えられなかったモノ
弱者は捨てられるまでもなく死ぬ
残って行くのは、人を捨てたバケモノばかり。
しかし、カレらが社会で使われることはなかった。
カレらを生み出した研究室は、ある一人の人物によって破壊された。
そうして生産されていたバケモノ達は一人残らず処理された。
―――筈だった。
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