第2話 夕食が怖い
やはり2日仮病は厳しそうだ、家族は心配してくれるが心が痛い。
カレンダーを見るとまだ水曜日で、あと三日間他の人に気取られずに隠し通せるか不安になる。しかし、先ずは朝食を食べなければ幻覚どもについてキチンと考える事もできないのだ。腹が減っては戦はできぬ、だ。
英気をつけるために肉でも食おうかと冷蔵庫を開いて俺は固まった。
「うわっ・・・」
中は埋め尽くさん限りの蛾、スライム擬き、蛙、人型・・・俺の食欲は一瞬で失せた。
ーーー
「行ってきまーす」
もう家族は全員各々の場所へ向かったのだが挨拶をする。俺の視線は母の靴近くにいる半透明の猫に向かっていた。
俺の言動で何か行動が変化するのかの観察だ。もはや幻覚相手にする事では無いが、そんなの一番自分が分かっている。だが、もしかしたらファンタジー的な何かかも知れないと本気で思い始めている自分がいるのだ。
猫は何もリアクションを取らないので諦め、いつものようにドアを閉めようとした瞬間、そいつはずっとしていた毛繕いの様な仕草を止めてもう直ぐ閉め切るドアの隙間を通り抜けようとした。
一瞬止めようかとも思ったが、そうすると相手に認識されていると気づかれかねないとそのまま閉め切る。見る側は良くても、見られる側にはなりたくなかったのだ。
もしかしたら・・・と心配したが、猫は何事も無かったかの様にドアをすり抜けて何処かへ走り去っていった。
ほっと安心したと同時に、また疑問が出てくる。
「何ですり抜けられるのにドアを避けようとしたんだ?そういや猫も蛾も地面はすり抜けて無かったし、何かしらの条件か制限、使い分けがある・・・?」
いや、至る所を貫通し顔を出していた馬鹿でかいナニカもいたし、決めつけるのはよした方がいいか。
そしてついで、というか本題なのだが、猫が俺の言動によって動かない事が分かった。耳を此方に向けるぐらいはすると思ったのだが・・・。まぁ、全ての幻覚に共通するかは分からないので、機会があったら他のにもやってみよう。
そう一通り考えた後、覚悟を決めて庭から学校までの道のりを見る。徒歩20分程度で着く近さとは言え、恐ろしい見た目だったり、地面から突然ニュッと現れる幻覚どももいる。
無反応を貫いて登校するのは至難の業だろう。それに、幻覚によってできた死角にも対応しなければならないのだ。
「・・・・・よし、行くか」
気を引き締めるために頬をパチンと叩き、一歩踏み出・・・そうとして足元の光る蟻を避けるために後ずさった。
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