綴る欠片

こい

世界を! 救う!

わたしには……いえ。わたしは一人じゃない!

……わたしたちには三分以内にやらなければいけないことがあった。




恐怖。

その一言に、世界は覆われていた。

誰一人だとて、この世の終わりが本当に来るなど想像したろうか。


空。

どこまでも広がる大空。

爽やかに晴れる昼日中であれば青空だろう。

満天の星空を眺められるならば夜空だろう。


海。

母なる海。

どす黒くすら思える、赤い赤い飛沫を波が撒き散らしていた。


大気を埋め尽くす、天使たち。

大地を覆い尽くす、悪魔たち。


後ろに控えるのは神か魔神か。


この星に住まうすべての生き物が恐れ慄いていた。


希望?

未来?

夢?

愛?


粉の一粒でさえ、微塵も感じられないほどの重圧が、この星を押しつぶすほどに覆い尽くしていた。


あまりの圧力に発狂する者。

誰かも知らない隣人と抱き合う者。

もはや絶望ということさえ、忘却の彼方に置き去りにした者。


筆舌に尽くしがたい。

まさにこのことであろう。


天使と悪魔の背後に控える超常の存在が采配を振るう。

そこかしこで、人智を超えた争いが始まる。


この星に住まう、生きるものたちへの配慮、想いはまるで感じられない。


神とは。

多かれ少なかれ、人と交わり、人と信を共にする存在ではなかったか。


魔神とは。

老いも若きも、男も女も、欲望や憎悪を見い出す存在ではなかったか。


もはや。

塵芥すら羨むほどに、この星の生命には、なんの救いも絶望もなかった。



「みんな! いくよ!」

「これが最後の戦いよ!」

「世界各地の魔法少女たち!

命をかけて! みんなを守るよ!」


「見て!

天使と悪魔たちの最大攻撃がはじまる!!!」


「本当にあと三分しかないの!?」


「信じられないけど、そうよ!!!」

「未来を識るマジカルパワーで予見したもの!」


「誰も! 一人も!

悲しい思いなんてさせない!」


「みんな、みんな!

みんなの幸せな未来が絶対あるんだから!」


一体。

どれほどの少女たちが叫んでいるのだろう?


一人じゃない。

少女たちの想いに心を寄せる生ける者たち。

世界に残る希望の種。


魔法少女。

科学少女。

超能力少女。

異能少女。

不思議少女。

宇宙少女。

武道少女。

騎士少女。

侍少女。

忍者少女。

獣人少女。

人魚少女。

悪魔少女。

魔王少女。

幼女少女。

他にも、様々に特異な少女たち。


残り。

残りたったの180秒。

分にして、三分。


「みんな! 世界を! みんなを救うよ!!!」



〜完〜



☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

このお話をお読みいただいた方!

今後続けて、「綴る欠片」を読んでみようかなあというお方!

ボクっ娘天使リュリュエルのお話をぜひお読みください!

重っ苦しいこのお話とは全く関係ありません!


「はちゃめちゃボクっ娘?天然天使リュリュエルが勇者を大量爆誕!異世界無双!」

https://kakuyomu.jp/works/16818023213105901664

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