どうして傘を持ってない。
今日は朝から雨が降っているが、僕は今は傘を持っていない。傘を持っておらず、ずぶ濡れになっている高校生たちの全力疾走を眺めながら、窓ガラスの乾いた面の上に指で線を走らせつつ笑った。その際、窓板に指を強く押し当てると、吹き入ってくる風の下手な笛が鳴る。それで僕は、ふと、自分の部屋の嗅ぎ慣れた匂いに気がついた。
僕は自分の部屋で傘を持っていない高校生たちの姿を眺め、彼らが全力疾走している様子を窓越しに指でなぞって追いかけながら笑っていた。窓ガラスを押すと、ヤカンのいななきのような音を立てながら入り込んでくる隙間風が、僕の部屋の匂いを巻き上げた。そう。今の僕は部屋の中にいる。だから、傘なんて持ってなくて当然だ。
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