一作品目・CURSE+HOLIC 〜呪われフェチ子とおせっかい聖女〜

【タイトル】CURSE+HOLIC 〜呪われフェチ子とおせっかい聖女〜


【キャッチコピー】「呪い」でつながる女子+女子コンビの異世界ファンタジー


【作者】紙月三角


【URL】 https://kakuyomu.jp/works/16818023212216713122




【あらすじ】おせっかいな見習い聖女のアンジュが出会ったのは、他人から呪われるのが大好きな変態少女のマウシィ。

強力なチートスキルで暴走する異世界転生者たちと戦いながら、二人は絆を深めていく。


【拝読したところまでのストーリー展開】

 第1話はプロローグを済ませたあと、メインの話が続いていく、という感じですね。

 シュエルドラードという大陸に、ある日「スキル」という強大な能力を持った異世界人が20名ほど、日本からやってきます。シュエルドラード原住民は異世界人の来訪に歓喜し、彼らを「地異人ちいと」と呼び始めます。

 一時期は原住民と良好な関係を築いていた地異人ですが、私腹を肥やすために「スキル」を持って暴走。原住民を支配するようになります。

 原住民は邪智暴虐の意を込めて、彼らを「血異人ちいと」と呼び、驚異として認識。



 時が流れ、見習い聖女と呼ばれるアンジュ・ダイアースは、見窄らしい格好をした少女、マウシィ・オズボーンを血異人のミナトから庇うために立ち塞がります。

 アンジュはマウシィに逃げるよう指図しますが、マウシィはそれを拒否。それどころか、身を挺してマウシィを守ろうとしたアンジュに、マウシィは言うのです。


「だ、だ、だからぁ……だめデスってばぁーっ! だってそれじゃあ、私じゃなくてあなたが血異人さんに痛めつけられちゃうじゃないデスかぁ⁉ そ、そんなのズルいデスよぉ⁉ せっかく私が、わざと・・・血異人さんの乗ってる馬車の前に飛び出して、怒られてたのにぃぃぃ!」(1話より引用)


 後に、マウシィは呪いを愛し、興奮を覚え、呪いを集める「呪われフェチ」であることが判明。アンジュは聖女の役目を果たすためと称して、マウシィにかけられた呪いの解除のため、彼女に同行します。旅の先々で、ミナト以外の血異人が引き起こすトラブルに巻き込まれて……というのが大筋でしょうか。



【世界観描写解説】

 世界観として、最も近いのは1600~1700年代のヨーロッパでしょうか?

 宗教国家・トラウバートが大陸内でも大きな存在になっていること、歴史博物館の存在、毒消しの存在、劇場、脚本家の存在、また人々の生活の営みからこのくらいの時代かなと判断いたしました。

 ただ、ホテルや女子ウケのよいスイーツを売るお店という、この時代にはそぐわないものの存在がみられます。しかし、血異人の来訪という点も考えればあってもおかしくはないかなという感じですね。

 1話目のミナトの台詞からもある程度推測してみたのですが、おそらくホテルやスイーツ店のある国・レディアベルは血異人が治めているのでしょうか?

 そうであれば、血異人が元いた日本のルールをレディアベルに落とし込んで統治、そのお陰で男女差が緩和されて、レディアベルのあり方のバックボーンが作れるかなと思いました。

 


【キャラクター解説】

 主人公であるアンジュ・ダイアースとマウシィ・オズボーンについて解説します。


 アンジュ・ダイアース

 とにかく正義感が強く、自己犠牲も厭いません。(ただ、自己犠牲は戒律に従っているだけという可能性もあり、実際がどうかは判断しかねます)

 正義感が強いあまりに、少々強引なところがあります。タイトルの通り、『おせっかい聖女』です。

 性格に自己愛、自信過剰な傾向があるように思えました。理由付けをするなら、母親と共に大陸中を巡る旅の道中で、聖女という肩書きが付けられたことにありそうです。周りがもて囃すので、それに乗っかっていた……けど、自身の未熟さや母の偉大さは理解しており、今のような性格になったのではと推測します。




 マウシィ・オズボーン

 彼女が持つ思考は、おそらく次の通りでしょう。

「優しさ、好意は嘘をつくけど、呪いは本当の感情がないと掛けられないから、呪いは嘘をつかない! 強い呪いは強い思い、本当の感情、だから、もっと自分を呪って、本当の感情をぶつけてほしい!」

 

 こういう思想に陥ったのは、彼女の両親が死に際に放った呪いの言葉が原因でしょう。今まで気味悪がって無視し続けてきた彼女に向けた本物の感情。それが負の感情であろうと、彼女は今までの境遇から悦びを感じずにはいられませんでした。

 おそらく、彼女には感情を仕分ける力が環境により欠如していたのでしょう。彼女が感知できるのは、感情の大きさだけ。それが愛でも憎しみでも関係なく、「自分を気に掛けてくれた」と認識してしまいます。



【タイトル・キャッチコピー・あらすじの批評】


 タイトルはそれなりの塩梅を保っていると思います。どんな内容なのかは伝わってくるのでそれは評価できます。ただ、このタイトルで読者を引っ張ってこれるかについては微妙なところ。

 キャッチコピーは正直物足りなさを感じました。タイトルで触れていたところに再度触れ直している感が否めません。あらすじも同様で『ありっちゃありだけど、もっと目を引く書き方があるのでは?』と感じました。


【世界観の批評】

 特に食い違いは見られませんでした。

 強いて言うなら、1話目冒頭のプロローグですかね。人間、亜人、動物、魔物の衝突は時々あるレベルなのに、1年後、地異人がやってきた頃には民族紛争。えっ、なんで? と思いました。人間内部にも民族や語族が分かれており、その中で紛争が起きているのかと解釈しましたが、この辺は誤解を生む可能性があります。

 さらにツッコむならば、亜人、魔物の立ち位置ですかね。亜人が半人半獣なら、動物側に従属して食肉をする人間たちとの対峙は免れられないでしょうし、魔物が人を襲う描写があったことから、魔物が別の生物種に対して害を為すことは確かです。はたして彼らの中に、領分を守って平穏に暮らそうという派閥がどれだけいたのか……。


【キャラクターの批評】

 アンジュとマウシィは外見からして16、7歳だと予想されますが、年齢よりも口調が子供っぽい印象を受けました。物語を破壊するほどではないのですが、終盤にかけて、アンジュの幼さが表れていったような気がします。


【まとめ】

 個人的に、「一発目からすごい作品を引いてしまったなぁ」と、このレビューを書きながらつくづく思います。

 激辛レビューと銘打っておきながら、批評で重箱の隅をつつくようなことを書かなければべた褒めになってしまいそうで……。


 文章に不安要素はなく、キャラクターや風景を頭に思い浮かべながら読むことが出来ました。ただ、所謂キャラクターの自分語りが長く、その間に誰も口を挟まないのかと疑問に思いました。特にマウシィの台詞回しが、身の上を語るためとはいえ長々と続くのはよくなかったかなぁと。それに、三点リーダーと合わせた不気味な笑い声の演出がしつこすぎるなぁとも感じましたね。

 設定も理解に困る点は少なかったのですが、まだまだ詰められるところはあると思います。

 私の激辛レビューでは世界観やキャラクターについて、特に重視して語っていると思いますので、よければ私が指摘した点を見直して、次の作品作りの時は意識していただければ幸いです。

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