私のしっぽはファントムテール
ラグト
プロローグ 頼むから妖怪に勝ってほしい
小学校から帰ってきた私はテレビの前に正座で座っている。
今から始まる『
どうして私がこの番組を意識して見ているのかと言うと、私のクラスメイトがピュアエクレールを演じているからなの。
テレビの中では正義の巫女戦士ピュアエクレールが悪の妖狐、
私はハラハラしながらツインテールにまとめている自分の髪をぎゅっと両手で握った。
「エクレールさん、私はただ広めたいだけなのよ。妖怪の恐怖を。怪談すなわちホラーテールでね」
黒衣の美女に立ち向かうのは巫女の装束に似た戦闘服と目の周りが隠れるマスクを身につけた黒髪の少女だ。
「黒明姫、誘拐した子供たちはどこにいるの!」
「ふふ、人の恐怖というものはなかなか変わっているものでね。元は人の一部というのにそれが恐ろしくてたまらなくなるのよねえ」
黒衣の美女が立っているのは体育館の闇の中からはいずりながら現れた大きながいこつの肩の骨の上だ。
「今宵のテール妖怪は怪異テール大どくろ、存分に楽しむといいわ」
テール妖怪は
今回は夜の学校で動き回る骨格標本という怪談に
はいずっている上半身だけでもエクレールの3倍の高さはある大骸骨の肋骨の中には誘拐された子供たちが閉じ込められている。
「
「いいわよ。私とのバトルに勝ったらね。さあ謎幻術でテール大どくろを強化するわよ!」
「エクレール、謎幻術で大どくろが強化されちゃうよ」
「銀子ってば、いつものことなんだから、わかってるよ」
「謎幻術は謎を解かないと解除されないよ!」
「それもわかってる!」
エクレールに注意したのはパートナーの銀子、大きなしっぽが特徴の銀色の狐のマスコットだ。
「それじゃあ、謎幻術よ。骨はふつう白いものなのに、ものすごく真っ黒な骨ってなーんだ」
(えっ、うそでしょ。そのままじゃない)
より不気味になるテール大どくろとは反対に私は
「ふふっ、難しそうな謎だけど、私にはお見通しよ」
「な、なんですって」
「ものすごい黒、つまりド・黒ってことで、どくろ。正解の骨はどくろね!」
エクレールが言い放つと同時にテール大どくろの黒く凶暴な姿が元の白い骨へと戻っていく。
エクレールはすかさずテール大どくろの胸の肋骨を両腕で開いて中の子供たちを開放する。
「ぐぐっ、お、おのれえ、エクレールめ」
「今度は私から問題よ、
「な、なんですって」
「答えはゲンコツよ。食らいなさい。悪を滅するきらめきの花、サンダーフラワーパーンチ!」
稲光放たれるエクレールのこぶしがテール大どくろの頭に直撃すると、どくろはバラバラに吹っ飛んで崩れ落ちた。
「お、覚えておきなさい。次こそはおまえを倒すテール妖怪を生み出してあげるから!」
絶叫しながら妖狐の姫は夜の闇の中に逃げて行った。
後には体育館の床の上にテール大どくろの元となった走る骨格標本だけがバラバラに散乱していた。
「ううっ、また勝てなかった」
私は正座の姿勢のままがっくりと両手をついてうなだれると、そのまま床の上をゴロゴロと転がりまわる。
「来週こそエクレールが負けるように怖いテール妖怪と難しい謎幻術を考えて黒明姫に届けないと!」
番組ではテレビを見ている子供たちから学校の怪談妖怪となぞなぞにちなんだ謎幻術を募集している。
番組の最後に黒明姫がテレビを見ているみんなに呼び掛けているのだ。
「あなた達からも身の回りの怪異となぞなぞを私に送ってちょうだい。どんなワクワクする冒険もあなたたちが怪異に触れることから始まるのよ」
私は黒明姫のこの言葉が大好きだ。
私は自分で色々な学校の怪談を取材したし、なぞなぞも勉強した。
おかげで学校の怪談に登場する妖怪となぞなぞには随分詳しくなってしまった。
「ちょっと、その番組、
ママが不思議そうに問いかけてくる。
そんなの決まってるじゃない。
私には
私は人間じゃなく、妖怪なんだから。
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