[総ルビ]転移者ホクトの異世界ハーレム旅行記

２４. 王都アルバーン(４)

●２４. 王都（おうと）アルバーン(４)

　今日（きょう）の夕食（ゆうしょく）は、鶏肉（とりにく）の串焼（くしや）きで大（おお）きめの焼（や）き鳥（とり）みたいな物（もの）がメインのセットだった。

「カエルの串焼（くしや）きを思（おも）い出（だ）して懐（なつ）かしいです」

　ピーテは村（むら）のカエルを思（おも）い出（だ）す味（あじ）なんだろう。塩胡椒（しおこしょう）を振（ふ）っただけのシンプルな味（あじ）でかなり美味（おい）しかった。

　今日（きょう）はまた部屋割（へやわ）りを見直（みなお）す必要（ひつよう）がある。今日（きょう）はアリスの番（ばん）なので俺（おれ）のベッドにはアリスを、横（よこ）のベッドにピーテ。隣（となり）の部屋（へや）にはフルベールとソティになった。

「ついに私（わたし）の番（ばん）が来（き）たウサ」

　アリスが嬉（うれ）しそうにくっ付（つ）いてくる。しかし温（あたた）かい所（ところ）は良（よ）いが、ぺったんこで肉付（にくづ）きがあまりないので感触（かんしょく）は悪（わる）くないが柔（やわ）らかくもない微妙（びみょう）な感（かん）じだ。

　アリスが左（ひだり）手（て）を伸（の）ばしてつないでくる。

「ああ、おやすみ」

　俺（おれ）は適当（てきとう）に挨拶（あいさつ）して眠（ねむ）るのだった。

　翌日（よくじつ）。今日（きょう）は何（なに）をしようか。もう旅立（たびだ）ってもいいのだが、もう少（すこ）しゆっくりしていってもいい。ベッドもふかふかだし。

　迷宮（めいきゅう）は蜂（はち）の巣（す）退治（たいじ）をして一段落（いちだんらく）したところだ。

　訓練（くんれん）にはいいがレベルが見（み）える訳（わけ）ではないので、積極的（せっきょくてき）にやる気（き）にはならない。

「蜂（はち）は簡単（かんたん）だったのです。今日（きょう）はもっと下層（かそう）に行（い）きたいと思（おも）うのです」

　フルベールの提案（ていあん）だ。まあ、それなら今日（きょう）も迷宮（めいきゅう）に潜（もぐ）ることにするか。

　冒険者（ぼうけんしゃ）ギルドに寄（よ）ってみたところ、フルベールはランクＣに上（あ）がっていた。

　俺（おれ）たちは特（とく）に何（なに）もなかった。

　迷宮（めいきゅう）七（なな）階層（かいそう）の最初（さいしょ）の魔物（まもの）に出会（であ）った。マッドスライムだ。泥（どろ）のゲル状（じょう）生物（せいぶつ）である。

　ソティとピーテが剣（けん）で斬（き）りつけても、また元（もと）に戻（もど）ってしまう。

　体全体（からだぜんたい）で覆（おお）いかぶさって攻撃（こうげき）しようとしてくるので、慌（あわ）てて後（うし）ろに避（よ）ける。

「これ、なんとかならないにゃ？」

　軟体（なんたい）系（けい）といえば、凍（こお）らせるのが常（じょう）とう手段（しゅだん）だ。

「アイス・フリーズ！」

　アリスは氷（こおり）魔法（まほう）初級（しょきゅう）の凍（こお）らせるだけの魔法（まほう）を放（はな）つ。

　少（すこ）しだけ凍（こお）り付（つ）き始（はじ）めた。

　気合（きあい）を入（い）れて魔法（まほう）を継続（けいぞく）する。

　しかし、完全（かんぜん）には凍（こお）らせられない。

「ハイ・アイス・フリーズ！」

　今度（こんど）は俺（おれ）が強（つよ）い単体（たんたい）氷（こおり）魔法（まほう）を発動（はつどう）させる。

　白（しろ）い霜（しも）に覆（おお）われて、あっという間（ま）に凍（こお）り付（つ）いた。

　ソティがロングソードで体重（たいじゅう）をかけて斬（き）りつけて粉々（こなごな）にする。

「ふう、なんとかなったにゃ」

　バラバラになった中（なか）から魔力（まりょく）結晶（けっしょう）を拾（ひろ）い上（あ）げる。

　透明（とうめい）だが灰色（はいいろ）の中（ちゅう）くらいの結晶（けっしょう）だった。

　その後（あと）も出（で）てきたマッドスライムを俺（おれ）のハイ・アイス・フリーズで片（かた）づける。

　しかし、これは魔力（まりょく）消費（しょうひ）が高（たか）いのであまりよろしくない。

　しょうがないので、早々（そうそう）に切（き）り上（あ）げる。今日（きょう）の迷宮（めいきゅう）探索（たんさく）は終（お）わりだ。

　お城（しろ）に帰（かえ）り、変（か）わり種（だね）ラーメンに挑戦（ちょうせん）しようと思（おも）う。

　まずラーメンの麺（めん）がない。ので乾燥（かんそう）パスタで代用（だいよう）する。

　次（つぎ）に醤油（しょうゆ）がないので、コーンスープ風（ふう）の物（もの）を作（つく）ることにした。

　まずタマネギをみじん切（ぎ）りにしてバターでキツネ色（いろ）になってもさらに炒（いた）める。

　それにトウモロコシ粉（こな）を水（みず）に溶（と）かして、牛乳（ぎゅうにゅう）を入（い）れて塩（しお）・胡椒（こしょう）で味（あじ）を調（ととの）える。

　そんな感（かん）じのスープに麺（めん）を茹（ゆ）でて入（い）れる。

　具（ぐ）がないので、マッシュルームを炒（いた）めたものと茹（ゆ）で卵（たまご）を載（の）せておく。

　ラーメンというかコーンスープパスタになってしまった。まあいいや。

「これはスープパスタというのでしょうか」

「なかなかいけるウサ」

　少（すこ）し遅（おそ）めの昼食（ちゅうしょく）となった。

　四人（よにん）娘（むすめ）たちにはなかなか好評（こうひょう）だった。複雑（ふくざつ）な心境（しんきょう）だ。たしかにこれもうまい。

　厨房（ちゅうぼう）スタッフにも試食（ししょく）用（よう）の物（もの）を何杯（なんばい）か作（つく）った。こちらの人（ひと）たちにもご好評（こうひょう）をいただいた。

　しかし俺（おれ）はラーメンが作（つく）りたかったのに。今（いま）食（た）べたいのは醤油（しょうゆ）ラーメンなの。

　午後（ごご）は暇（ひま）である。

　また街（まち）に繰（く）り出（だ）そうということになった。今日（きょう）は絶対（ぜったい）高（たか）い物（もの）は買（か）わないぞ。

　まず、武器（ぶき）屋（や）を冷（ひ）やかす。防具（ぼうぐ）も売（う）っている。高級店（こうきゅうてん）で金貨（きんか）何枚（なんまい）という値段（ねだん）の装備（そうび）ばかりだ。

　おれはカッコいい大盾（おおたて）とかを装備（そうび）してみる。

　重（おも）くてうまく動（うご）けない。残念（ざんねん）。

　フルベールに防具（ぼうぐ）を着（つ）けないのか聞（き）いてみたが、アリスと同（おな）じ例（れい）の霊（れい）糸（し）の服（ふく）とやらであり、見（み）た目（め）以上（いじょう）に防御力（ぼうぎょりょく）が高（たか）いのだそうだ。

　霊（れい）糸（し）はエルフが生産（せいさん）しているので、フルベールはエルフの村（むら）を出（で）てくるときからその装備（そうび）だった。

　雑貨（ざっか）屋（や）に寄（よ）っていく。女子（じょし）という生（い）き物（もの）は、小（ちい）さな可愛（かわい）い雑貨（ざっか）が大好（だいす）きである。異世界（いせかい）でも変（か）わらないらしい。

「雑貨（ざっか）とか買（か）っても荷物（にもつ）になるぞ」

「いいんです。見（み）るだけでも楽（たの）しいです」

　可愛（かわい）い動物（どうぶつ）の絵（え）のマグカップ、爪切（つめき）り、よく分（わ）からない置物（おきもの）。よく分（わ）からない小箱（こばこ）。壁（かべ）かけ。絵画（かいが）。観葉（かんよう）植物（しょくぶつ）。色々（いろいろ）な木（き）のスプーン、フォーク。ランプ。

　魔法（まほう）のランプ！　しかし残念（ざんねん）ながらランプから精霊（せいれい）のジンが出（で）てくるわけではなくて、魔道（まどう）具（ぐ）として光（ひか）るランプだ。

　ああ、猫砂（ねこすな）も売（う）っていた。

　あと品揃（しなぞろ）えの良（よ）かったのが弁当（べんとう）箱（はこ）。異世界（いせかい）でも弁当（べんとう）男子（だんし）や女性（じょせい）に大人気（だいにんき）である。

　水筒（すいとう）。俺（おれ）たちも水筒（すいとう）を収納（しゅうのう）して持（も）っている必需（ひつじゅ）品（ひん）だ。もっとも今（いま）では魔法（まほう）で水（みず）だけなら出（だ）せるけれど。

　ペンと紙（かみ）。パピルスセット。

　子供向（こどもむ）けおもちゃ。木（き）のタイヤのついた馬（うま）とかサイコロとか木製品（もくせいひん）が多（おお）い。

　髪飾（かみかざ）り。パッチンやカシューシャ。そういえばメイド衣装（いしょう）はあるがカチューシャは付（つ）いていなかった。

　鏡（かがみ）は銀色（ぎんいろ）のピンボケのやつしかなかった。ガラスの鏡（かがみ）は高級（こうきゅう）品（ひん）だそうだ。

　俺（おれ）はあるものを買（か）った。むふふ。今（いま）から楽（たの）しみだ。そう、耳（みみ）かきである。

　次（つぎ）は楽器店（がっきてん）を見（み）る。

　アリスは笛（ふえ）を吹（ふか）けるようだが、ここにはその種（たね）類（るい）の笛（ふえ）はなかった。

　意外（いがい）と種類（しゅるい）があるのに驚（おどろ）いた。ギターモドキに管楽器（かんがっき）と木琴（もっきん）・鉄琴（てっきん）などがある。

　不思議（ふしぎ）なことに音階（おんかい）もドレミファソラシで同（おな）じらしい。

　ピアノはないらしい。

　また食（た）べ物（もの）系（けい）の店（みせ）の前（まえ）をうろうろした。

　乾燥（かんそう）した魚（さかな）専門店（せんもんてん）やお肉屋（にくや）、八百屋（やおや）、フルーツ屋（や）、香辛料（こうしんりょう）屋（や）、粉（こな）もの屋（や）、パン屋（や）などなど。

　専門店（せんもんてん）系（けい）は卸（おろし）を兼（か）ねている店舗（てんぽ）になっているそうだ。街（まち）の飲食店（いんしょくてん）に品物（しなもの）を卸（おろ）すのが主（おも）な仕事（しごと）だという。

　普通（ふつう）の飲（の）み屋（や）、居酒屋（いざかや）、レストランなどはあるが、ケーキ屋（や）とかクッキーとかの嗜好（しこう）品（ひん）を売（う）ってる店（みせ）はほとんど見（み）つけられなかった。

　俺（おれ）たちが夕方（ゆうがた）お城（しろ）に帰（かえ）ると、お客（きゃく）さんが来（き）ていた。

　ミルク飴（あめ）を売（う）っていた少女（しょうじょ）だ。

「私（わたし）、まさかお城（しろ）まで連（つ）れてこられるとは思（おも）っていませんでした」

「いっぱい売（う）れてよかったね」

「はい。村（むら）に戻（もど）って沢山（たくさん）作（つく）ってお城（しろ）まで運（はこ）ばないといけないんです」

「頑張（がんば）ってな」

「はい。ありがとうございます」

　飴（あめ）の少女（しょうじょ）は村（むら）に帰（かえ）っていった。

　俺（おれ）は、さっそく耳（みみ）かきをするのだ。

　まずピーテからだ。むむ。膝枕（ひざまくら）をしたんだが、耳（みみ）が頭（あたま）の上（うえ）に生（は）えている。ちょっとずらして膝（ひざ）に乗（の）っける必要（ひつよう）がある。

　俺（おれ）はライトの魔法（まほう）を併用（へいよう）しつつ、耳（みみ）かきをする。

「ホクトさんありがとうございます。すっきりした気（き）がします」

　続（つづ）いて、犬耳（いぬみみ）のソティ、うさ耳（みみ）のアリス、そして長（なが）耳（みみ）のフルベールと順番（じゅんばん）にこなす。

　一息（ひといき）入（い）れて、交代（こうたい）する。

　今度（こんど）は俺（おれ）がやってもらう番（ばん）だ。今日（きょう）はピーテにやってもらう。

　ピーテの膝（ひざ）に頭（あたま）を乗（の）っけて耳（みみ）をほりほりする。膝枕（ひざまくら）で下側（したがわ）の頬（ほう）が温（あたた）かい。

　なんというか、やってもらうのも結構（けっこう）いい。地球（ちきゅう）では自分（じぶん）でやってたから。

　俺（おれ）の耳（みみ）からは沢山（たくさん）の収穫物（しゅうかくぶつ）が取（と）れた。

　これからも定期的（ていきてき）に耳（みみ）掘（ほ）り大会（たいかい）をしようと思（おも）う。