[総ルビ]転移者ホクトの異世界ハーレム旅行記

２２. 王都アルバーン(２)

●２２. 王都（おうと）アルバーン(２)

　午後（ごご）も迷宮（めいきゅう）でもいいが、魔力（まりょく）が減（へ）っているのでウィンドウショッピングをする。

　王城（おうじょう）の周（まわ）りは高（たか）そうなお店（みせ）ばかりだ。綺麗（きれい）なドレスや高級（こうきゅう）装備（そうび）の飾（かざ）ってあるお店（みせ）が多（おお）い。高級（こうきゅう）奴隷（どれい）店（てん）もあった。

　高級（こうきゅう）なお店（みせ）の店先（みせさき）にはガラスの窓（まど）がついている。ガラスも高級（こうきゅう）品（ひん）だが一部（いちぶ）で普及（ふきゅう）している。ガラス細工（さいく）の店（みせ）も高級店（こうきゅうてん）の中（なか）にある。

　俺（おれ）たちは高級店（こうきゅうてん）は外（そと）から眺（なが）めるだけで素通（すどお）りした。庶民（しょみん）向（む）けの商店街（しょうてんがい）に移動（いどう）する。

　女性向（じょせいむ）けの作業着（さぎょうぎ）の店（みせ）を発見（はっけん）した。ようするにメイド服（ふく）やウェイトレスだ。

　俺（おれ）が目線（めせん）だけで注目（ちゅうもく）していると、ピーテが俺（おれ）の目線（めせん）を目（め）ざとく見（み）つけてくる。

「やっぱりホクトさんはああいう服（ふく）が好（す）きなんですね」

　色々（いろいろ）言（い）われてちょっと寄（よ）っていくことになった。

　長（なが）めのワンピースから短（みじか）いのまである。エプロンも装飾（そうしょく）の多（おお）い高（たか）めのものからシンプルな短（みじか）い前掛（まえか）けまで取（と）り揃（そろ）えているようだ。

　店員（てんいん）はいるが、俺（おれ）たちがしゃべりながら見（み）ていると遠慮（えんりょ）してなのか話（はな）しかけてこなかった。

　女子（じょし）四人（よにん）は色々（いろいろ）な服（ふく）を見（み）ては寸評（すんぴょう）している。よく聞（き）いてみると、俺（おれ）の趣味（しゅみ）かどうかとか話（はな）しているようだ。

　しばらくするとピーテが紺色（こんいろ）の長（なが）いスカートのシックな衣装（いしょう）を持（も）ってきて体（からだ）に当（あ）てて見（み）せてくる。

　ソティも水色（みずいろ）の短（みじか）いスカート、フリフリのエプロンで胸（むね）が強調（きょうちょう）されている狙（ねら）った感（かん）じの衣装（いしょう）を体（からだ）に当（あ）てて見（み）せてくる。

「ホクトはどっちが好（この）みかにゃ？」

「えっと……俺（おれ）は水色（みずいろ）のほうかな」

「やったにゃ」

　ソティが嬉（うれ）しそうに衣装（いしょう）を抱（いだ）きしめる。ピーテはそそくさと衣装（いしょう）を戻（もど）しに行（い）った。

「私（わたし）の衣装（いしょう）とどっちが好（この）みウサ？」

　アリスの衣装（いしょう）はというと、いつもと同（おな）じだ。

「どっちも可愛（かわい）いよ」

「えー。そんなのずるいウサ」

　そんなことをしているうちに、俺（おれ）が四人（よにん）の衣装（いしょう）を買（か）うことになってしまった。なぜかフルベールの衣装（いしょう）までだ。

　皆（みな）でお揃（そろ）いの先（さき）ほどの水色（みずいろ）の短（みじか）いスカートの奴（やつ）を欲（ほ）しがった。

「でも、そんなの買（か）ってどうするんだ。家（いえ）もないのに」

「お城（しろ）で着（き）るから大丈夫（だいじょうぶ）にゃ」

「収納（しゅうのう）は私（わたし）がするから場所（ばしょ）も取（と）らないです」

「可愛（かわい）い私（わたし）たちの格好（かっこう）が見（み）たいと思（おも）わないウサ？」

　はい。全員（ぜんいん）分（ぶん）見（み）たいです。俺（おれ）は言葉巧（ことばだく）みに誘導（ゆうどう）され、誘惑（ゆうわく）に負（ま）けてしまったのだ。

　ギルドカードから四（よん）セット分（ぶん）のお金（かね）を支払（しはら）う。しかし幸（さいわ）いなことに既製品（きせいひん）だったようで思（おも）ったより安（やす）かった。

　女性（じょせい）の店員（てんいん）は余分（よぶん）なことは一切（いっさい）言（い）わずに、作業（さぎょう）だけをしてくれる。この店員（てんいん）プロだ。分（わ）かっている。

「ホクトさん。私（わたし）の分（ぶん）まですまないのです」

　フルベールはエルフなので美人（びじん）さんだ。それにあの衣装（いしょう）は胸（むね）が大（おお）きめの彼女（かのじょ）にぴったりだろう。

　次（つぎ）は食（た）べ物屋（ものや）を物色（ぶっしょく）する。ポコ肉（にく）もあるにはあるが主流（しゅりゅう）は牛肉（ぎゅうにく）のようだ。

　さっきまで服（ふく）に夢中（むちゅう）だったのに食（た）べ物（もの）を見（み）たらすぐに飛（と）びついた。

「お肉（にく）うまいにゃ」

「ビーフジャーキーもいけるウサ」

　ビーフジャーキーをアリスが買（か）った。少（すこ）しだけ食（た）べて、残（のこ）りは収納（しゅうのう）しておく。まだポコジャーキーも残（のこ）っている。

　俺（おれ）たちは輸入（ゆにゅう）雑貨（ざっか）屋（や）に入（はい）ってみる。

　東（ひがし）隣（どなり）のアンダルシア帝国（ていこく）や俺（おれ）たちがいたセルフィール王国（おうこく）の雑貨（ざっか）を主（おも）に扱（あつか）っているようだ。

　中（なか）でも俺（おれ）が注目（ちゅうもく）したのは帝国（ていこく）製（せい）の腕時計（うでどけい）だ。魔道（まどう）具（ぐ）であり、デジタル時計（どけい）のように「１７（じゅうしち）：（じ）３４（さんじゅうよんふん）」とだけ数字（すうじ）が浮（う）かんでいる。

　装飾（そうしょく）は最低限（さいていげん）だが文字（もじ）の部分（ぶぶん）は金属（きんぞく）製（せい）でベルトは革製（かわせい）だった。

　俺（おれ）はさっそく店主（てんしゅ）と交渉（こうしょう）する。できれば全員（ぜんいん）分（ぶん）ほしい。四個（よんこ）だ。

「お客様（きゃくさま）はお目（め）が高（たか）い。それは時計（とけい）です。デコアでも正確（せいかく）な時間（じかん）は重要視（じゅうようし）されていないので、注目（ちゅうもく）されていません。しかし私（わたし）は正確（せいかく）な時間（じかん）こそが生（い）きるために重要（じゅうよう）だと思（おも）っています」

　店主（てんしゅ）が力説（りきせつ）してくる。

「四（よっ）つも買（か）ってくださるなら勉強（べんきょう）させていただきます」

「私（わたし）にも一（ひと）つ時計（とけい）というのをくださいなのです」

　フルベールも興味（きょうみ）を持（も）ったみたいだ。

「では五（いつ）つ分（ぶん）ですね。一（ひと）つは別（べつ）会計（かいけい）で」

　値段（ねだん）は一（ひと）つ八〇〇（はっぴゃく）ポルンだった。全員（ぜんいん）の腕（うで）に着（つ）けて回（まわ）る。

「こんな物（もの）必要（ひつよう）あるか疑問（ぎもん）ウサ」

「ホクトさんのことです。きっと必要（ひつよう）だと思（おも）います」

「わーい。買（か）ってもらったにゃ」

「お揃（そろ）いで買（か）っちゃったのです」

　基本（きほん）一緒（いっしょ）に行動（こうどう）しているので要（い）らないかもしれない。しかし、いつ別（べつ）行動（こうどう）が必要（ひつよう）になるか分（わ）からない。あるならあった方（ほう）が便利（べんり）だろう。

　もうすぐ夕方（ゆうがた）だ。フルベールと別（わか）れて王宮（おうきゅう）に戻（もど）る。

　今日（きょう）の夕（ゆう）ご飯（はん）は、白（しろ）パン、牛肉（ぎゅうにく）のヒレステーキ、サラダだった。

　ステーキは以前（いぜん）国境（こっきょう）で食（た）べたものと味（あじ）が似（に）ている。塩（しお）、胡椒（こしょう）、ニンニクで味付（あじつ）けしてある。

　あと醤油（しょうゆ）ベースのソースが付（つ）いていれば日本人（にほんじん）好（ごの）みだなという感（かん）じだ。

　体（からだ）をふいて寝（ね）る。今日（きょう）俺（おれ）と寝（ね）るのはソティの番（ばん）だ。

　ソティは一緒（いっしょ）の布団（ふとん）に入（はい）り挨拶（あいさつ）するとすぐに眠（ねむ）ってしまった。

　翌朝（よくあさ）。今日（きょう）も迷宮（めいきゅう）に行（い）く。

　迷宮（めいきゅう）前（まえ）の冒険者（ぼうけんしゃ）ギルドに行（い）くとフルベールが俺（おれ）たちを待（ま）ち構（かま）えていた。

「あの！　しばらく私（わたし）も一緒（いっしょ）に行動（こうどう）させてくださいなのです」

「それは別（べつ）にいいけれど、俺（おれ）たちは帝国（ていこく）に行（い）くことになっている」

「そうですか。とりあえず王都（おうと）にいる間（あいだ）だけでも結構（けっこう）なのです。そういえば、ホクトさんたちはどこに泊（と）まっているのですか？」

「ああ。実（じつ）はお城（しろ）に泊（と）めてもらっているんだ」

「なんですって！」

　俺（おれ）はフルベールに諸（しょ）事情（じじょう）でお城（しろ）にいると言（い）っておいた。

「フルベール、お城（しろ）のご飯（はん）も美味（おい）しいにゃ」

「私（わたし）も一緒（いっしょ）にお城（しろ）でお泊（とま）りしたいなのです」

　こういう流（なが）れでフルベールもお城（しろ）に招待（しょうたい）するには王様（おうさま）に許可（きょか）がいると思（おも）う。

　そのためいったんお城（しろ）へ戻（もど）った。メイドを捕（つか）まえてフルベールのことを王様（おうさま）へ伝言（でんごん）で頼（たの）んだ。

　偉（えら）いメイドの人（ひと）の判断（はんだん）で許可（きょか）自体（じたい）はすぐに下（お）りる。人数（にんずう）が増（ふ）えたので隣（となり）の部屋（へや）も借（か）りることになった。

　再（ふたた）び迷宮（めいきゅう）前（まえ）に戻（もど）ってくる。

「今日（きょう）の目標（もくひょう）は？」

「それはもちろん、蜂（はち）の巣（す）退治（たいじ）なのです」

　迷宮（めいきゅう）地下（ちか）四（よん）層（そう）へまた来（こ）た。ベア・ビーが姿（すがた）を現（あらわ）す。

　フルベールが補助（ほじょ）魔法（まほう）を発動（はつどう）する。

「ウィンド・アーマー」

　パーティー全員（ぜんいん）分（ぶん）に風（かぜ）精霊（せいれい）の防御（ぼうぎょ）魔法（まほう）を使（つか）ってくれた。敵（てき）の物理（ぶつり）攻撃（こうげき）を風（かぜ）の力（ちから）を利用（りよう）して、威力（いりょく）を弱（よわ）めてくれるらしい。

　フルベールを合（あ）わせて四人（よにん）の剣（けん）で散発的（さんぱつてき）に襲（おそ）ってくる熊蜂（くまばち）をつぎつぎ切（き）り捨（す）てていく。

　俺（おれ）たち三人（さんにん）に比（くら）べてフルベールの剣（けん）はあまりうまくない。それでも昨日（きのう）は一人（ひとり）で熊蜂（くまばち）を倒（たお）しただけあって弱（よわ）いわけでもなかった。

　段々（だんだん）襲（おそ）ってくる間隔（かんかく）が短（みじか）くなり、死体（したい）から魔力（まりょく）結晶（けっしょう）を回収（かいしゅう）するのをやめる。間（ま）に合（あ）わないのだ。

　そして、ついに普通（ふつう）の熊蜂（くまばち）の二（に）倍（ばい）の大（おお）きさの女王蜂（じょおうばち）を見（み）つけた。

　眉毛（まゆげ）が紫（むらさき）で体（からだ）の部分（ぶぶん）の毛（け）が金色（きんいろ）のファーみたいになっている。マダム風（ふう）の蜂（はち）である。

「ウィンド・カッター」

　先制（せんせい）でフルベールが風（かぜ）の攻撃（こうげき）魔法（まほう）で仕掛（しか）ける。

　小（ちい）さい竜巻（たつまき）が発生（はっせい）して、女王蜂（じょおうばち）を風（かぜ）で切（き）り刻（きざ）む。女王蜂（じょおうばち）は風（かぜ）で羽（はね）や毛並（けな）みがボロボロになってしまった。

　ピーテとソティが剣（けん）を叩（たた）き付（つ）ける。女王蜂（じょおうばち）は大（おお）きいので狙（ねら）いやすい。動（うご）きも普通（ふつう）の熊蜂（くまばち）より良（よ）くない。

「魔法（まほう）行（い）くぞ。――ファイヤー・ボール」

　ピーテとソティが避（よ）けて場所（ばしょ）を開（あ）けてくれ、俺（おれ）は火（ひ）魔法（まほう）を発動（はつどう）させた。

「ピギャー。グルグル。ガー」

　女王蜂（じょおうばち）が断末魔（だんまつま）を上（あ）げる。暫（しばら）くは耐（た）えていたが、墜落（ついらく）して燃（も）え上（あ）がる。火達磨（ひだるま）になり丸焼（まるや）きになった。

　女王蜂（じょおうばち）はあっけなかった。

「私（わたし）に掛（か）かればこんな敵（てき）やっぱり楽（らく）ちんなのです」

　フルベールが余裕（よゆう）を見（み）せる。

　女王蜂（じょおうばち）からは大（おお）きめの黄色（きいろ）く透明度（とうめいど）の高（たか）い結晶（けっしょう）が取（と）れた。

「わ、私（わたし）の出番（でばん）が取（と）られたウサ……」

　アリスはしょんぼりしていた。しかし、のんびりはしていられない。

　残（のこ）った熊蜂（くまばち）がまだたまに現（あらわ）れる。それらを皆（みんな）で片（かた）づける。

　帰（かえ）りは行（い）きに倒（たお）した熊蜂（くまばち）の死体（したい）から結晶（けっしょう）を集（あつ）めつつ、残存（ざんそん）兵（へい）をやっつけていく。

　集（あつ）めた結晶（けっしょう）はかなりの数（かず）になった。五十（ごじゅっ）個（こ）ぐらいだろうか。

　ギルドに報告（ほうこく）に行（い）き、結晶（けっしょう）をカードマネーに交換（こうかん）する。

「女王蜂（じょおうばち）の退治（たいじ）ですね。確（たし）かに大（おお）きな結晶（けっしょう）です。ランク昇進（しょうしん）もあるかもしれません。ご苦労様（くろうさま）でした」

　ギルド職員（しょくいん）はこのように言（い）った。俺（おれ）たちはランクＣだ。フルベールはまだＤらしい。