11. 王都フクベル

●11. 王都おうとフクベル


 おれたちは王都おうと手前てまえ五〇〇ごひゃくメートルにいる。王都おうと石壁いしかべ城門じょうもんかこわれておりるからに立派りっぱつくりだ。もん手前てまえにもいくつかの露店ろてんなら商売しょうばいをしているひとえる。

 うしろははやしだがかべ手前てまえ見通みとおしやすいようにひく草地くさちになっている。

 馬車ばしゃひとれつ多少たしょうならんでいるようだが、そこまで時間じかんはかからないだろう。


 おれたちはおしのびなので、一般人いっぱんじんれつならんでつ。王女おうじょさまうには貴族きぞく階級かいきゅう本来ほんらいならばずにさきとおれるそうだ。


 門番もんばんたちは、さんチームにかれてたてならんだひとたちを先頭せんとうからどんどん処理しょりしていく。門番もんばんいぬねこ半々はんはんぐらいだ。

 おれたちの順番じゅんばんになった。あらかじめ馬車ばしゃりてよこならぶ。ギーナさんがなにやら門番もんばんにささやく。その門番もんばんはアリスをのぞきむ。アリスはなるべく目立めだたないように半分はんぶんだけフードをかおをみせる。

 すると門番もんばんがアリスに小声こごえった。


握手あくしゅしてください」


 アリスがそっとると門番もんばんはすぐにをピッとばして敬礼けいれいしてみせる。今度こんどこえげてった。


「いってよーし」


 おれたちがすすむと門番もんばんたちがかるくこちらにってくる。全員ぜんいんいい笑顔えがおだった。


かれてるんだな」

「ありがたいことウサ。でもちょっとだけ、うっとうしいとおもときもあるウサ」


 人気者にんきものにもそれなりの苦労くろうがあるようだ。

 馬車ばしゃっすぐ王宮おうきゅうかうのかとおもったら、商店しょうてんっていく。ギーナさんがみせひと交渉こうしょうしている。交渉こうしょうわると商店しょうてんのバイトがうしろのはこはこはじめた。どうやらうしろのリンゴをけるようだ。


「ただたびをするのももったいないウサ。すこしだけ商売しょうばいもするウサ」


 はこはこぶのを手伝てつだおうかとおもったが、なぜかことわられた。


 つぎっすぐに王宮おうきゅうかった。おう宮門きゅうもんではとくそとることもなくギーナさんのかおパスだった。おれたちは結局けっきょく王都おうとにいるあいだ王宮おうきゅうでお世話せわになることになってしまった。おれまち宿やどると主張しゅちょうしたのだがアリスが強引ごういんめてしまったのだ。

 ギーナは馬車ばしゃ保管ほかんしにった。アリスのうしろにつづいて王宮おうきゅう建物たてものはいる。正面しょうめん玄関げんかんではなく、よこ通用口つうようぐちみたいなところからはいった。とくむかえもいない。

 おれたちはだいよん応接室おうせつしつというところとおされて、高価こうかそうな椅子いすすわらされる。沢山たくさん椅子いすはあるが、とびらから一番いちばんとお一角いっかくあつまってすわっている。

 しばらくするとメイドがおちゃかたくてあまいパンもどきをってきてくれた。メイドはつづけて発言はつげんする。


「アリス王女おうじょさま国王こくおう陛下へいかがおびです」


 アリスはってメイドさんとおれたちだけがのこされる。

 おれたちはアリスに家臣かしんにならないかとさそわれたが、とりあえずことわった。異世界いせかいのことははなしてあるので、もど方法ほうほうがないかさがすのを手伝てつだってくれるそうだ。

 おれたちはパンもどきをかじってアリスがもどってくるのをった。

 結構けっこうながったがするが時計とけいがないのでからない。ほかのメイドがはいってきてった。


みなさま、謁見えっけんしつにおしください。国王こくおう陛下へいかがおいになります」


 おれたちはメイドにれられて謁見えっけんしつまえとびらまでくる。けん収納しゅうのうみだ。左右さゆうきスペースのすみ近衛兵このえへい待機たいきしている。ここからさきおれたちだけでくらしい。作法さほうからないが、とびらけられたのでとりあえずすすむ。

 謁見えっけんしつあか絨毯じゅうたんなかかれている。国王こくおう正面しょうめんすわっている。そのよこにローブをったアリスがっていた。

 おれたちはすこ距離きょりってよこ一列いちれつならんだ。


「ふむふむ。本当ほんとう黒髪くろかみじゃな」

ったウサお父様とうさま

べつ敬語けいごでなくてもよい。らくはなせ」


 おれたちは名前なまえ名乗なのった。おれ苗字みょうじ名乗なのらなかった。


「ホクトは異世界いせかいからて、魔法まほう上達じょうたつはやく、政治せいじ色々いろいろなことにくわしいとか」

「はい。それほどくわしくはないですけど」

美味おいしいものをたくさんっているとアリスはっておったぞ」

おれ世界せかい平和へいわだったのでしょく文化ぶんか発達はったつしていました」

「ふむ。異世界いせかいもど方法ほうほうはわしにはからん。賢者けんじゃ紹介しょうかいしよう」

「ありがとうございます」

「ポテチというのをつくってくれるそうじゃな。わしもたのしみにしておるから明日あしたたのむ」

「はい」

今日きょうはもう夕方ゆうがただ。わしはいそがしいからアリスと一緒いっしょ食事しょくじをしていきなさい」

「はい、ありがとうございます」


 おれともうすこ会話かいわをしたあと王様おうさまはピーテとソティとも会話かいわをして、おれたちはアリスととも応接室おうせつしつもどった。

 応接室おうせつしつのおちゃセットはかたづけられていて、すこししたらゆうはんになった。


 王宮おうきゅうゆうはんのメニューは、カニパスタ、牛肉ぎゅうにくのステーキ、サラダ、野菜やさいスープだった。デザートはないらしい。ピーテとソティの二人ふたりはナイフとフォークをギクシャクと使つかいながらステーキと格闘かくとうしていた。


「とっても美味おいしいごはんだったです」

「はい。カニパスタがとく美味おいしかったにゃ」


 女子じょし三人さんにんはまだ余裕よゆうがありそうだ。おれはもうおなかいっぱいだ。

 王宮おうきゅうのとってもいい部屋へやをあてがわれそうになったのをなんとか交渉こうしょうして、普通ふつう部屋へやにしてもらった。さん部屋へや個室こしつだ。

 ピーテは王宮おうきゅう共有きょうゆう浴場よくじょうがあるのにとてもよろこんでいた。ソティとあらいっこをするそうだ。


 つぎ朝食ちょうしょくは、四人よにんかたいパンになぞのジャム、サラダだった。

 そのあとおれたちは王室おうしつ厨房ちゅうぼうにいた。そうポテチをつくるのである。

 まずジャガイモのかわく。ピーテとソティも手伝てつだってくれた。うする。結構けっこうむずかしい。ついでにフライドポテトもつくろうと、半分はんぶん細長ほそながる。

 オリーブごろ深手ふかでのフライパンによんセンチほどれてにかける。あったまったら、ジャガイモを投入とうにゅうがったらすぐにしおる。

 はじめてつくったがおもったより簡単かんたんだ。

 メイドが王様おうさま一家いっかぶんってどこかへく。

 おれたちは厨房ちゅうぼうすみで、四人よにんでポテチとフライドポテトをでつまんでべる。ひとさら見学けんがくしていた厨房ちゅうぼうのスタッフにまわしてあげる。


あぶらげるというのははじめてたウサ」

「こうやってつくってるんですね」

「どっちも美味おいしいにゃ」


 どうも調査ちょうさによるとムニエルはあるようだが、カリッとげるるいのものはこのくににはないようだ。料理りょうりちょうは「あぶらがもったいないですな」とかっていた。


 午後ごごからはおれだけで王様おうさま紹介しょうかいしてくれた賢者けんじゃいにく。王宮おうきゅうつとめらしい。名乗なのるほどでもないとわれてしまい、名前なまえらない。

 異世界いせかい召喚しょうかんというのはこのくにではやっていないそうだ。一般的いっぱんてきにはられていないけれど、ひとぞくくにでははるかむかしおこなわれていたという。だからひとぞくくにってみたらどうかとわれた。

 おれすこしは地球ちきゅうもどりたいようながするので、ひとぞくくにこうかなとおもった。

 女子じょし三人さんにんは、三人さんにんでお茶会ちゃかいだそうだ。アリスはこころからの友達ともだちというのがいなくて、同年代どうねんだいいはうさぎひとぞくばかりだそうだ。学院がくいんでもいていたらしい。だから気軽きがるにしゃべれる二人ふたり仲良なかよくしたいそうだ。


 おれ賢者けんじゃところからもどってくると、アリスの私室ししつれていかれた。そこでは女子じょし三人さんにんたのしそうにおしゃべりをしていた。


「なんじゃはやかったウサ。もっとゆっくりでもかったウサ」

「ホクトさんおちしていました」

「ポテチはうまかったにゃ」


 そのあとだれ一番いちばん意地いじっているかでがった。


「一ばんはソティだウサ。でも本当ほんとうの一ばん普段ふだんすましたかおをしているがお父様とうさまウサ」


 あの王様おうさま意地いじってるのか。べつはらてないし、普通ふつうのウサギだったけど。

 そのあとおれみんなに、ひとぞくくにくことをめたのをはなした。しばらくは迷宮めいきゅうってきたえることをはなした。魔法まほう練習れんしゅうももっとしたいし。


「それなら、わらわ一緒いっしょ迷宮めいきゅうくウサ。騎士きしたちとくと過保護かほご全然ぜんぜんたたかわせてくれないウサ」

迷宮めいきゅう明日あした午後ごごからにする? おれたてあたらしくしたいんだけど」

「いや、まだれるまで時間じかんはあるウサ。いまからたていにくウサ」


 アリスはシンプルなワンピースからいつもの似非えせ制服せいふく着替きがえてくろのローブを羽織はおっている。おもったより着替きがえははやいようだ。姫様ひめさまとしてはまちくにはワンピースは防御力ぼうぎょりょくひくいので危険きけんだという。おれたちは、ちゃくしかない普段着ふだんぎ姿すがたのままだ。

 ってあるいて城門じょうもんからまちかう。


護衛ごえいとかれてこなくていいの?」

「なに、かげからこっそりついてきている問題もんだいないウサ」


 たしかに冒険者ぼうけんしゃふうかたなったひと何人なんにんかただあるいているふうよそおってついてくる。

 おれたちは城門じょうもんからあるいてさんブロックさき武器ぶきはいる。ぐちのドアのカウベルがひびく。いぬひとぞく店員てんいん出迎でむかえてくれた。


「いらっしゃいませ」


 アリスがフードをると店員てんいんおどろいた表情ひょうじょうをしてから店長てんちょうしてくれる。

 店長てんちょう茶色ちゃいろうさぎひとぞく男性だんせいのようだ。


「おやおや、これはこれは。ようこそいらっしゃいませ」

「このひとに、たてえらんでほしいウサ」

「かしこまりました姫様ひめさま。どのようなたてがいいですかな」


 おれ小型こがた金属きんぞくたて要望ようぼうした。


少々しょうしょう値段ねだんがしますが、こちらのオリハルコンせい小型こがたたてはいかがかな」

「いくらくらい?」

金貨きんかまいでございます」

おれそんなにってない」

わらわもそんなにってないウサ。ギーナが大金たいきんたすとくないといおってウサ」


 どうやらアリスには贅沢ぜいたく禁止令きんしれいているようだ。


「ではこちらの鉄製てっせいのバックラーではどうでしょう。銀貨ぎんか十九じゅうきゅうまいでございます」

「もうちょっとやすくして」


 交渉こうしょう下手へただがとりあえず値引ねびきしてみる。


姫様ひめさまのご紹介しょうかいですし、銀貨ぎんか十五じゅうごまいでいかがでしょう」

「いいですよ」


 交渉こうしょう成立せいりつだ。結構けっこうやすくなった。


わらわ半分はんぶんだすウサ」


 アリスが収納しゅうのうから銀貨ぎんかななまいしてせてくる。


「でも」

「なに先行せんこう投資とうしじゃウサ。たっぷり迷宮めいきゅうはたらいてもらうウサ」

「なるほどね。ありがとう」


 おれはアリスから銀貨ぎんか店主てんしゅわたしバックラーをる。たてはピーテに収納しゅうのうしてもらう。

 いつかオリハルコンせいとか装備そうびしてみたい。迷宮めいきゅうでワンチャンあるかな。


 王宮おうきゅうもど四人よにんでごはんべてお風呂ふろはいって一人ひとり部屋べやねむった。

 明日あしたから迷宮めいきゅう探索たんさくだ。頑張がんばろう。


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