[総ルビ]留学生は同棲JKエルフちゃん

第50話 エルフちゃんと一周年

■第（だい）５０話（わ）　エルフちゃんと一周年（いっしゅうねん）

　眠（ねむ）れない夜（よる）を過（す）ごしてなんとかゴールデンウィーク休（やす）みも終（お）わった。

「また学校（がっこう）だ」

「イヤだぁ、なんとなく行（い）きたくない」

「エリカそんなこという子（こ）だっけ」

「お兄（にい）ちゃんと同（おな）じクラスじゃないんだもん」

「お昼（ひる）だって一緒（いっしょ）に食（た）べてるだろう」

「うん。それで我慢（がまん）してるの」

「そうだったか」

　まったく兄（あに）にべったり過（す）ぎる。

　まあかわいいかわいいエリカなので目（め）に入（い）れても痛（いた）くはない。

　それでそろそろ一周年（いっしゅうねん）なのだ。

　ララちゃんがうちに居候（いそうろう）もとい留学（りゅうがく）するようになって。

「ララちゃん、一周年（いっしゅうねん）だね」

「はいですぅ」

「お祝（いわ）いするから楽（たの）しみにしてて」

「やったですぅ」

　俺（おれ）はララちゃんが来（き）た日（ひ）、カレンダーの五月（ごがつ）十日（とうか）に花（はな）丸（まる）を付（つ）ける。

　五月（ごがつ）十日（とうか）の放課（ほうか）後（ご）。

　アキラも呼（よ）んでみんなでパーティーとなった。

　なんかこの前（まえ）も桜祭（さくらまつ）りをやった気（き）がするが、気（き）にしてはいけない。

「ララちゃん一周年（いっしゅうねん）、おめでとうございます」

「「「おめでとうございます」」」

「ありがとうございます。ううぅうぅ」

　ララちゃんが全力（ぜんりょく）の笑顔（えがお）を浮（う）かべてうれしそうにする。

「いろいろあったね、一年（いちねん）」

「そうですぅ、そうですぅ、ぐすん」

「どうしたララちゃん。また悲（かな）しくなってきちゃった？」

「はいですぅ。一年（いちねん）楽（たの）しい思（おも）い出（で）いっぱいでした」

　さて俺（おれ）もララちゃん視点（してん）で振（ふ）り返（かえ）ってみる。

　いきなりタクシーで山女（やまめ）家（け）に来（き）たこと。

　妹（いもうと）のエリカちゃんが病気（びょうき）で入院（にゅういん）していると言（い）われてお見舞（みま）いに行（い）った。

　エリカちゃんは魔力（まりょく）障害（しょうがい）だと判明（はんめい）した。

　レトルトカレーの種類（しゅるい）が多（おお）くて買（か）いに行（い）った。

　体育（たいいく）があって胸（むね）が揺（ゆ）れて恥（は）ずかしかった。

　ソフトクリームを食（た）べっこした。

　かき氷（ごおり）を食（た）べた。

　遠足（えんそく）に行（い）った。

　――ホームシックになった。一年（いちねん）間（かん）イベントをこなして頑張（がんば）ろうと約束（やくそく）した。

　薄着（うすぎ）の夏服（なつふく）になった。

　水泳（すいえい）の水着（みずぎ）が恥（は）ずかしかった特（とく）に背泳（せおよ）ぎ。

　雨（あめ）が降（ふ）ってカタツムリとアジサイを見（み）た。

　七夕祭（たなばたまつ）りでお願（ねが）い事（ごと）を書（か）いた。

　期末（きまつ）テストがあった。

　夏休（なつやす）みになった。

　海水（かいすい）浴場（よくじょう）に行（い）った。

　山（やま）キャンプに行（い）った。

　市民（しみん）プールに行（い）った。

　花火（はなび）大会（たいかい）があった。

　お盆（ぼん）でお墓参（はかまい）りがあった。

　防災（ぼうさい）訓練（くんれん）があった。

　運動会（うんどうかい）があって紅組（あかぐみ）が勝（か）った。

　ケート君（くん）の誕生（たんじょう）日（び）があった。

　校外（こうがい）学習（がくしゅう）で幼稚（ようち）園（えん）児（じ）とドングリを拾（ひろ）った。

　エリカちゃんが退院（たいいん）した。

　ハロウィンでケート君（くん）をコスプレでメロメロにした。

　ハルカさんの誕生（たんじょう）日（び）があった。

　林間（りんかん）学校（がっこう）でオリエンテーリングとキャンプファイアをした。

　カエルを逃（に）がしてヘビを投（な）げた。

　ララの誕生（たんじょう）日（び）があった。

　手作（てづく）りカレーを食（た）べた。

　クリスマスがあった。

　ケート君（くん）の両親（りょうしん）が一時（いちじ）帰宅（きたく）して大晦日（おおみそか）があった。

　神社（じんじゃ）に行（い）ってカニやおそばを食（た）べた。

　大晦日（おおみそか）、除夜（じょや）の鐘（かね）が鳴（な）って甘酒（あまざけ）を飲（の）んだ。

　お正月（しょうがつ）があってお年玉（としだま）を貰（もら）った。

　おじいちゃんの家（いえ）に行（い）った。

　七草粥（ななくさがゆ）を食（た）べた。

　どんど焼（や）きに参加（さんか）した。

　成人（せいじん）の日（ひ）を遠（とお）くから眺（なが）めた。

　スキー場（じょう）でスノーボードをした。

　節分（せつぶん）で豆（まめ）まきをした。

　エリカちゃんの受験（じゅけん）があった。

　バレンタインでケート君（くん）に生（なま）チョコを贈（おく）った。

　エリカちゃんの誕生（たんじょう）日（び）があった。

　桃（もも）の節句（せっく）でお雛様（ひなさま）を飾（かざ）った。

　ホワイトデーでリンゴの石鹸（せっけん）を貰（もら）った。

　卒業式（そつぎょうしき）があって春休（はるやす）みになった。

　エイプリルフールでケート君（くん）の嘘（うそ）でみんな泣（な）いちゃった。

　新年度（しんねんど）で二年（にねん）一組（いちくみ）になった。

　桜祭（さくらまつ）りをして文芸（ぶんげい）部（ぶ）でファンタジーの短編（たんぺん）を書（か）いた。

　そしてゴールデンウィークで映画（えいが）を見（み）て、夜（よる）怖（こわ）くて一緒（いっしょ）の布団（ふとん）で寝（ね）た。

　ケート君（くん）はとっても温（あたた）かくて安心（あんしん）できた。

　他（ほか）にもいっぱい、いっぱい、いろんなことがあった。

「うわわあああああああんん」

　エイプリルフール以来（いらい）にララちゃんが泣（な）き出（だ）す。

「今年（ことし）一年（いちねん）間（かん）、とってもとっても充実（じゅうじつ）してました。うれしかったですぅ」

「うわわあああああああんん」

　でもこれは悲（かな）しいから泣（な）いているわけではない。

　確（たし）かに少（すこ）し寂（さび）しい気持（きも）ちもある。

　一年（いちねん）があっという間（ま）だったことはちょっと悲（かな）しい。

　でもそれ以上（いじょう）にみんなで楽（たの）しく生活（せいかつ）できた。

　そういうことらしい。

「ララちゃん」

「ケート君（くん）、抱（だ）っこ」

「もう、しょうがないなぁ」

　ララちゃんをぎゅっと抱（いだ）きしめる。

　温（あたた）かいぬくもりが伝（つた）わってくる。

　ララちゃんにも俺（おれ）の体温（たいおん）が伝（つた）わっているだろう。

　こうして一年（いちねん）頑張（がんば）ってきたから今（いま）の俺（おれ）たちがある。

「どうするララちゃん」

「うん」

「もう一年（いちねん）、契約（けいやく）、延長（えんちょう）するか？」

「はい。ララはケート君（くん）と一緒（いっしょ）に生活（せいかつ）する契約（けいやく）を一年（いちねん）延長（えんちょう）しますぅ」

「よかった」

「はいですぅ。また一年（いちねん）よろしくお願（ねが）いしますぅ」

　こうして俺（おれ）たちの「家族（かぞく）」はもう一年（いちねん）は続（つづ）くことが決（き）まった。

　できることなら、これからもずっと永遠（えいえん）に家族（かぞく）でいられますように。

　次（つぎ）の日（ひ）曜日（ようび）。

　おれたちはみんなで南（みなみ）太平洋（たいへいよう）のサンレイク諸島（しょとう）に来（き）ていた。

　島（しま）なのにレイクつまり湖（みずうみ）はおかしいと思（おも）うかもしれない。

　いわゆる環礁（かんしょう）というサンゴ礁（しょう）が大（おお）きな輪（わ）の形（かたち）になる現象（げんしょう）がある。

　真（ま）ん中（なか）の島（しま）は地盤（じばん）沈下（ちんか）で沈（しず）んでしまったが周（まわ）りのサンゴ礁（しょう）だけ成長（せいちょう）して残（のこ）ったものだ。

　その形（かたち）が湖（みずうみ）のように見（み）えるからこの名前（なまえ）らしい。

　サバ、カツオの漁場（ぎょじょう）となっていて日本（にほん）向（む）けに鰹節（かつおぶし）とカツオ缶（かん）、鯖缶（さばかん）を輸出（ゆしゅつ）しているそうだ。

　その事業（じぎょう）には日本（にほん）企業（きぎょう）が絡（から）んでいて日本（にほん）と強（つよ）いつながりがある。

「でだ、これが転移（てんい）門（もん）か」

「そうですぅ」

　ララちゃんが飛（と）ばされてきた転移（てんい）門（もん）とご対面（たいめん）をしていた。

　飛（と）ばされてきた当初（とうしょ）は半分（はんぶん）地面（じめん）に埋（う）まっていたが今（いま）は発掘（はっくつ）が進（すす）んでいて地表（ちひょう）に遺構（いこう）が出（で）ている。

「なるほど確（たし）かに魔法陣（まほうじん）みたいだね」

「そうですぅ」

　ララちゃんに案内（あんない）されて親父（おやじ）つきで見学（けんがく）をしていた。

　これが起動（きどう）したら俺（おれ）たちは異世界（いせかい）に行（い）けるが、そう簡単（かんたん）ではないことくらい分（わ）かっていた。

「えへへ、異世界（いせかい）に行（い）きたいですか？」

「え、あ、うん。まあ行（い）きたいと言（い）えば行（い）きたいし、今（いま）の生活（せいかつ）を続（つづ）けたいとも思（おも）っているよ」

　俺（おれ）は正直（しょうじき）な気持（きも）ちを伝（つた）えた。

　これからどうなってしまうか分（わ）からないけれども、好（す）きな女（おんな）の子（こ）たちと一緒（いっしょ）に楽（たの）しく生活（せいかつ）できるといいなと思（おも）った。

　俺（おれ）たちの生活（せいかつ）はこれからも続（つづ）く……。

　TO BE CONTINUED