[総ルビ]留学生は同棲JKエルフちゃん

第14話 エルフちゃんと遠足

■第（だい）１４話（わ）　エルフちゃんと遠足（えんそく）

　よく四（し）月（がつ）に行（おこな）われる遠足（えんそく）だけども、うちの高校（こうこう）は五（ご）月（がつ）にある。

「――というわけで明日（あした）は遠足（えんそく）だからよろしくお願（ねが）いしますね」

「「「はーい」」」

　担任（たんにん）の二十四（にじゅうよん）歳（さい）、三保（みほ）灯里（あかり）ちゃん。

　生徒（せいと）たちには「アカリちゃん」と呼（よ）ばれている。

　アカリちゃんが説明（せつめい）をし終（お）わると生徒（せいと）たちは元気（げんき）よく返事（へんじ）をした。

　翌日（よくじつ）。学校（がっこう）から貸（か）し切（き）りの観光（かんこう）バスに乗（の）って近（ちか）くの山（やま）まで移動（いどう）する。

「これが遠足（えんそく）なのでしょうかぁ」

「説明（せつめい）された通（とお）りバスから降（お）りて歩（ある）くんだよ」

「そうみたいですぅ」

　学校（がっこう）指定（してい）のジャージはなく、みんなバラバラだ。

　今日（きょう）はララちゃんもジャージだった。赤（あか）いジャージは似合（にあ）っている。

　一方（いっぽう）の俺（おれ）とアキラは黒（くろ）のジャージ。ハルカはピンクのジャージだった。

「バスはここまでです。みなさん降（お）りる準備（じゅんび）をしてください」

「おおぉ、この山（やま）を登（のぼ）るんですかぁ」

「うん」

　市内（しない）の北西部（ほくせいぶ）には西（にし）に続（つづ）く小高（こだか）い山（やま）があった。

　名前（なまえ）は青沢（あおさわ）山（やま）というらしい。

　ここが今日（きょう）の遠足（えんそく）ポイントだ。

「では出発（しゅっぱつ）しまーす」

　アカリちゃん先生（せんせい）の号令（ごうれい）でクラスメートが列（れつ）になって進（すす）んでいく。

　俺（おれ）たちの班（はん）はいつものメンバー、俺（おれ）、ララちゃん、ハルカ、アキラの四人（よにん）だ。

「水分（すいぶん）補給（ほきゅう）はこまめにしよう」

「はいっ、でもいっぱい飲（の）み過（す）ぎちゃうとおしっこしたくなっちゃうから」

「そうですなぁ」

　俺（おれ）が水分（すいぶん）補給（ほきゅう）を提案（ていあん）するとアキラがララちゃんの心配（しんぱい）に同意（どうい）する。

　ハルカはそれを聞（き）いてちょっと顔（かお）を赤（あか）くしてから首（くび）をブンブンと振（ふ）っていた。

　あーうん、これはあれなんだよ。

　昔（むかし）なハルカが遠足（えんそく）の途中（とちゅう）でどうしてもおしっこしたくて隠（かく）れて道端（みちばた）でしたことがあるんだ。

　それを思（おも）い出（だ）して振（ふ）り切（き）ったのだろう。

　ちょっと恥（は）ずかしくなるのも仕方（しかた）がない。

　あの時（とき）はあとでずっと半（はん）べそでなだめるのに苦労（くろう）したっけ。

　平野（へいや）部分（ぶぶん）はすぐに終（お）わり、上（のぼ）り坂（さか）になっていく。

　日本（にほん）の山（やま）っていきなり平野（へいや）から生（は）えてるよな。外国（がいこく）も同（おな）じかもしれないけど。

　こう、なんというか絵（え）に描（か）いたみたいにきっぱり分（わ）かれている。

「お茶畑（ちゃばたけ）ですね」

「おお、この辺（へん）はお茶（ちゃ）の産地（さんち）なんだと」

「へぇ」

　なんって名前（なまえ）だったかな。とにかく日本茶（にほんちゃ）が有名（ゆうめい）らしい。

　生産（せいさん）量（りょう）は多（おお）い方（ほう）じゃないけど、その品質（ひんしつ）は高（たか）く評価（ひょうか）されているとかなんとか。

　丸（まる）く刈（か）られたお茶（ちゃ）の木（き）がカマボコみたいに並（なら）んでいる。

「えいしょ、えいしょ、へへへ、これくらいなら平気（へいき）ですぅ」

「頑張（がんば）って進（すす）もう」

「おいっす。俺（おれ）も平気（へいき）さ」

　声（こえ）を掛（か）け合（あ）って登（のぼ）っていく。

　変（へん）な返事（へんじ）をするのはアキラだ。

　ララちゃんの、うん、それ。おっぱい。重（おも）そうだもんな。

　確（たし）かＥカップで一（いち）キログラムくらいあるはず。

　お米（こめ）や砂糖（さとう）一（いち）キロを胸（むね）にくっつけてずっと登（のぼ）ったらかなりの負担（ふたん）だと思（おも）う。

　ハルカも少（すこ）し苦（くる）しそうだ。彼女（かのじょ）はララちゃんよりも体力（たいりょく）がないから大変（たいへん）だろう。

　胸（むね）は比較（ひかく）すれば軽（かる）いといってもある程度（ていど）の差（さ）しかない。

　俺（おれ）たちは負荷（ふか）なしなんだから、不公平（ふこうへい）といってもいい。

　別（べつ）に男女（だんじょ）で荷物（にもつ）が軽（かる）いとかもないわけで。

　登（のぼ）って足（あし）を動（うご）かすたびに少（すこ）しではあるがぽよんぽよんと揺（ゆ）れる。

　どう考（かんが）えてもこの動（うご）きは無駄（むだ）が多（おお）い。

　かといってブラしていてこれなんだから、これ以上（いじょう）押（お）さえつけるわけにもいかない。

「はい、ちょっと休憩（きゅうけい）しよう」

「ほーい」

「了解（りょうかい）です」

「分（わ）かりましたぁ」

　道（みち）が曲（ま）がるその頂点（ちょうてん）のところが少（すこ）しひらけているのでそこで小（しょう）休憩（きゅうけい）とする。

「うわぁ、うわああ。下（した）、街（まち）が一望（いちぼう）ですぅ」

「そうだな。ここらへん一帯（いったい）全部（ぜんぶ）見（み）えるな」

「そうね。目（め）の前（まえ）が埼台（さいだい）市（し）西区（にしく）、それであっちが私（わたし）たちの東区（ひがしく）」

「ああ、全部（ぜんぶ）丸見（まるみ）えだな。丸見（まるみ）え」

「おい、アキラその言（い）い方（かた）、ちょっとやらしいぞ」

「そうか、そういうふうに思（おも）う景都（けいと）がエッチなんじゃん」

「ぐぬぬ」

　俺（おれ）が悪（わる）かった。

　だって丸見（まるみ）えってなんかこう、すっぽんぽんみたいな、な？

　普段（ふだん）隠（かく）している重要（じゅうよう）な部分（ぶぶん）が見（み）えてしまっているみたいなイメージあるでしょ。

「ハルカ大丈夫（だいじょうぶ）か？」

「あ、うん。大丈夫（だいじょうぶ）。まだ足（あし）も痛（いた）くないし」

「そっか。無理（むり）するなよ」

「うん。ありがとう」

「お、なになに景都（けいと）、ずいぶん優（やさ）しいじゃん」

「ちゃかすなアキラ。俺（おれ）は真面目（まじめ）な話（はなし）をしている」

「そうだけど、なにララちゃんだけじゃなくてハルカちゃんにも手（て）を出（だ）す気（き）か」

「手（て）を出（だ）すってなんだよ」

「ぐははは、エロ時代（じだい）」

「もう知（し）らん」

「いけず」

　こいつバカだったわ。

「第（だい）一（いち）ララちゃんにだって手（て）は出（だ）してない」

「そうなんだ。よかったなハルカちゃん」

「うん」

「うおぉおおい」

　ハルカも素直（すなお）にうなずいているし。

　手（て）は出（だ）していません。

　一緒（いっしょ）にお風呂（ふろ）にも布団（ふとん）にも入（はい）っていません。本当（ほんとう）です。

　誘（さそ）われただけで俺（おれ）は悪（わる）くないんです。

　国際（こくさい）重要（じゅうよう）人物（じんぶつ）だからな。丁寧（ていねい）におもてなししてますよ。

　こいつらにはそういう事情（じじょう）は言（い）ってないので軽口（かるくち）も言（い）われるのだろうけど。

　説明（せつめい）したらしたで気（き）まずくなるのも困（こま）るしなあ。

　その後（あと）は一度（いちど）休憩（きゅうけい）したからか、頂上（ちょうじょう）まで登（のぼ）り切（き）った。

「着（つ）きましたあぁぁぁ」

「到着（とうちゃく）っとおつかれさん」

「おつかれっした」

「お疲（つか）れ様（さま）です。ううん、いい天気（てんき）」

　制限（せいげん）のお昼前（ひるまえ）には全員（ぜんいん）到着（とうちゃく）した。クラス一同（いちどう）、脱落者（だつらくしゃ）なし。遭難者（そうなんしゃ）なし。

　みんなでシートを敷（し）いてお昼（ひる）を食（た）べる。

「今日（きょう）はお弁当（べんとう）です」

　ハルカが唐揚（からあ）げやブロッコリーが入（はい）ったお弁当（べんとう）を見（み）せてくれる。

「うまそうじゃん」

「でしょ？　あっ景都（けいと）とララちゃんの分（ぶん）も作（つく）ればよかったね。私（わたし）うっかり」

「まあ今更（いまさら）言（い）ってもしかたがないな」

「えっえっ、俺（おれ）はねえ俺（おれ）は」

「アキラ君（くん）の分（ぶん）は予定（よてい）にないです」

「うわああんん」

　崩（くず）れ落（お）ちるアキラ。

　まあハルカからの好感度（こうかんど）はあまり高（たか）くないからな。

　バカなエロい発言（はつげん）ばかりしてるからそうなる。

「俺（おれ）たちはコンビニのサンドイッチだぞ」

「はい。こういうのも新鮮（しんせん）でいいですぅ」

「ララちゃんには好評（こうひょう）でよかった」

　俺（おれ）とララちゃんはミックスサンドを食（た）べる。

　ついでにヒトクチチキンが一人（ひとり）一（ひと）つずつあった。

　学食（がくしょく）もいいが、こういうのも悪（わる）くはない。

　帰（かえ）り道（みち）は下（くだ）り坂（ざか）だったので行（い）きよりは楽々（らくらく）で降（お）りてこれた。

　帰（かえ）りのバスに乗（の）り込（こ）んで感想（かんそう）を言（い）い合（あ）う。

「草花（くさばな）もいっぱいあって、ちょっとエルフの森（もり）を思（おも）い出（だ）してしまいましたぁ。ぐすん」

「ああ上（うえ）の方（ほう）なんて山（やま）だったもんな。木（き）と草（くさ）ぼうぼうで」

「そうなんです。全然（ぜんぜん）景色（けしき）は違（ちが）うのに草木（くさき）があって。なんだか懐（なつ）かしくて……」

「そっか」

「私（わたし）なんだか、胸（むね）が苦（くる）しいです……」

「お、おう」

　ララちゃんがしんみりしてしまった。

　これが布石（ふせき）だとは思（おも）っていなかった俺（おれ）はこの時（とき）、かなり軽率（けいそつ）だった。