[総ルビ]私たちだけ24時間オンライン生産生活

６．物々交換

◆６．物々（ぶつぶつ）交換（こうかん）

　二日（ふつか）目（め）の朝（あさ）。明（あか）るくなって、自然（しぜん）と目（め）が覚（さ）めた。

　現実（げんじつ）時間（じかん）と明記（めいき）していない限（かぎ）り日時（にちじ）はすべてゲーム内（ない）時間（じかん）を基準（きじゅん）にしてあるのでよろしくです。

　ゲーム内（ない）では、お風呂（ふろ）やシャワー、トイレ、歯磨（はみが）きなどは必要（ひつよう）ない。

　お風呂（ふろ）はぶっちゃけほしいけれど今（いま）はない。

「クルミ、サクラちゃんおはよう」

「あー、おーはーよー」

「おはようございます」

　朝（あさ）ご飯（はん）は、お金（かね）がないので、携帯（けいたい）食料（しょくりょう）を食（た）べた。説明（せつめい）どおり「ぱさぱさして不味（まず）い」味（あじ）だった。

　気（き）になったので、ウサギの干肉（ほしにく）を分（わ）けて試食（ししょく）してみた。

　なんだろう、ササミのハムみたいな感（かん）じで、塩味（しおあじ）でそれほど悪（わる）くなかった。

　干肉（ほしにく）に比（くら）べたら、携帯（けいたい）食料（しょくりょう）は食（た）べられたものじゃない。

　お水（みず）は、宿（やど）の人（ひと）がおなさけで、ただでくれた。

　昨日（きのう）分（わ）かったことだが、このゲームは、空腹（くうふく）度（ど）が二つあって、お腹（なか）が空（あ）くだけでなく、のどが渇（かわ）くのだ。

　水筒（すいとう）が欲（ほ）しいような気（き）がする。

　宿屋（やどや）のマリッジおばさんに相談（そうだん）したところ、他（ほか）の冒険（ぼうけん）者（しゃ）に、ウサギの干肉（ほしにく）を売（う）って、空（あ）き瓶（びん）をもらって来（く）れば、井戸（いど）のお水（みず）を詰（つ）めてくれるという。

　露店（ろてん）用（よう）風呂（ふろ）敷（しき）というのをマリッジおばさんに頂（いただ）いた。なんでもそれで、最初（さいしょ）の小（ちい）さな露店（ろてん）が開（ひら）けるという。

　初（はじ）めに出現（しゅつげん）した村（むら）の中央（ちゅうおう）広場（ひろば）に、風呂（ふろ）敷（しき）を広（ひろ）げ、ウサギの干肉（ほしにく）を並（なら）べる。

　干肉（ほしにく）を一つ小（ちい）さく千切（ちぎ）って、試食（ししょく）用（よう）に分（わ）けた。

　●ウサギの干肉（ほしにく）(塩味（しおあじ）／試食（ししょく）用（よう）)ｘ３０

　　塩味（しおあじ）と肉（にく）のうまみが凝縮（ぎょうしゅく）してうまい。小（ちい）さく千切（ちぎ）った試食（ししょく）用（よう）だ。保存（ほぞん）食（しょく）になる。

　　種別（しゅべつ）：食（た）べ物（もの）

　　レア度（ど）：１　　ランク：２

　　満腹（まんぷく）度（ど）：１上昇（じょうしょう）

　残（のこ）りの干肉（ほしにく）は十三個（こ）だからそのうち八個（こ）を売（う）りに出（だ）す。

「ウサギの干肉（ほしにく）いかがですか、空（あ）き瓶（びん）六つと交換（こうかん）しましょう」

　今（いま）の店番（みせばん）は私（わたし）の担当（たんとう）だ。

　クルミとサクラちゃんは露店（ろてん）の後（うし）ろの方（ほう）で、ゲーム内（ない）の公式（こうしき）攻略（こうりゃく）ｗｉｋｉと掲示（けいじ）板（ばん）で情報（じょうほう）収集（しゅうしゅう）をしている。

　公式（こうしき）ｗｉｋｉは、匿名（とくめい）記名（きめい）どちらの設定（せってい）でも書（か）き込（こ）めるが、匿名（とくめい）でも管理（かんり）者（しゃ）はユーザーを特定（とくてい）できるので、警告（けいこく）やアカウント停止（ていし）措置（そち）が可能（かのう）だと書（か）かれていた。

　公式（こうしき）掲示（けいじ）板（ばん）は、記名（きめい）のみである。

　朝（あさ）といっても、ゲーム内（ない）時間（じかん）で十五時間（じかん）あまり経過（けいか）、現実（げんじつ）時間（じかん）で二時間（じかん）半（はん）なので午後（ごご）二時（じ）三十分（ぷん）だ。

　人通（ひとどお）りはぼちぼちあるし、新規（しんき）ユーザーもログインしてきていた。

　開始（かいし）場所（ばしょ）を四か所（しょ）に分割（ぶんかつ）し、かつ時間（じかん）をずらしてユーザーを追加（ついか）しているので、そこまで混（こ）んでいない。

　二人（ふたり）組（ぐみ）の第（だい）一陣（いちじん）と思（おも）われる男性（だんせい）ユーザーが、声（こえ）を掛（か）けてきた。

「干肉（ほしにく）？　携帯（けいたい）食（しょく）もポーションも不味（まず）くてうんざりですわ」

「いらっしゃい、空（あ）き瓶（びん）と交換（こうかん）してくれませんか？」

　試食（ししょく）を二人（ふたり）に渡（わた）して、様子（ようす）を見（み）る。

「うまいな。これなら食（く）えるわ。セシルでもいいけど、空（あ）き瓶（びん）もあるよ」

「ぜひ一個（こ）あたり瓶（びん）六個（こ）でお願（ねが）いします」

　空（あ）き瓶（びん）は一つ１０セシルで雑貨（ざっか）屋（や）で売（う）れるそうだ。

「それじゃ、安（やす）すぎるわ。携帯（けいたい）食（しょく）は１８０セシルで売（う）ってた。引（ひ）き取（と）りは１０８セシルだった」

「じゃあ１８０セシルくらいで」

「分（わ）かった。全部（ぜんぶ）で四つくれ。一つは瓶（びん）六個（こ）と１２０セシル。残（のこ）りは一つ１８０セシルでいい？」

「はい。ありがとうございます」

「そういえば、空（あ）き瓶（びん）も雑貨（ざっか）屋（や）で２０セシルで買（か）えるぞ」

「あら、でもちょっと高（たか）いですね」

「そだね」

　トレードウィンドウを利用（りよう）して交換（こうかん）する。

　セシルは通常（つうじょう）銀貨（ぎんか）とかになっていなくて、数値（すうち）だけだ。もちろんアイテム化（か）してコインを表示（ひょうじ）することもできるが、面倒（めんどう）だもの。

　便利（べんり）なことに標準（ひょうじゅん）で「関数（かんすう）電卓（でんたく）」「自動（じどう）レジ」機能（きのう）がホログラムで利用（りよう）できるようになっている。

　残（のこ）りの干肉（ほしにく）四個（こ）は、空（あ）き瓶（びん）がなかったのでセシルで売（う）った。１８０ｘ４で７２０セシルなり。

「空（あ）き瓶（びん）買（か）い取（と）ります。一つ１５セシルです」

　まだ紙（かみ）とペンを買（か）っていないので、通（とお）りかかる人（ひと）に声（こえ）を掛（か）ける。

　午前（ごぜん）中（ちゅう）で、二十個（こ）３００セシル分（ぶん）買（か）い取（と）りできた。残（のこ）り１，０００セシルなり。

　空（あ）き瓶（びん）をどうするのか聞（き）いた人（ひと）に、水（みず）を詰（つ）めて水筒（すいとう）にすると言（い）うと、それもいいねと言（い）っていた。

　でもポーションの瓶（びん）はコップぐらいの大（おお）きさなので「空（あ）き瓶（びん）(大（だい）)」があるんじゃないかとのこと。

　ポーションを入（い）れるときは瓶（びん）の半分（はんぶん）ほどは空（あ）いている。

　なるほどね。そうだよね。

　とりあえず、宿屋（やどや）のおばさんの所（ところ）に戻（もど）り、水（みず）をもらう。

　●水（みず）の入（はい）った瓶（びん）

　　普通（ふつう）の水（みず）が入（はい）った瓶（びん）。特（とく）に味（あじ）はしない。

　　種別（しゅべつ）：飲（の）み物（もの）

　　レア度（ど）：１　　ランク：２

　　満腹（まんぷく）度（ど）(水分（すいぶん）)：１０上昇（じょうしょう）

　これは料理（りょうり）になるのだろうか、それとも薬師（くすし）の分野（ぶんや）だろうか。

　きっとどっちでもないんだろう。

　三人（にん）分（ぶん）十五個（こ）ほど確保（かくほ）して、宿屋（やどや）でお昼（ひる）を食（た）べる。

　５０セシルなので知（し）っている中（なか）で一番（いちばん）安（やす）いと思（おも）う。

　残（のこ）りは８５０セシルだ。