大したことがないと思われるであろう火の玉の話

卯野ましろ

大したことがないと思われるであろう火の玉の話

 これは私が小学生だったときの話だ。とある夏の夜、私は親戚たちとメルヘンなテーマパークを歩いていると……。


「きゃっ」

「うわっ!」

「何だ今の……?」


 光っている丸いものが、私たちの目の前をボワァッ……と横切った。


「あれは……タバコの火?」

「ホタルなんて……いないよなぁ?」

「もしかして、火の玉……?」


 様々な意見が出てきたが、私は火の玉かなぁと思った。禁煙であるテーマパーク内で歩きタバコをしている人は見ていないし、ホタルの光とは色が異なるものであった。何よりもメラァッ……としていたところが、私には火の玉らしく感じたのだ。あれは間違いなく、燃えていた。

 また、このとき誰も火傷等を負っていなかったので私たちはホッとした。あの至近距離ならば、もしもタバコによるものであった場合、誰かが大変なことになっていたと考えられる。驚かされはしたが特に何事もなかったので、このまま私たちはテーマパークで楽しい夜を過ごした。

 私たちを驚かしたこと以外は、大して迷惑をかけていない火の玉の話であった。




 ……と本当は終わりたいところだが、終われない。あの火の玉がプラズマなどによる科学現象だとしたら、この話は怪談ではなく単なる思い出話になってしまうということを、正直に書いて終わるとしよう。

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