【ボイスドラマ】花火よりもうるさい君が好き。〜クラスカースト一位の関西弁ギャルが万年ぼっちの僕に何故か絡んでくるのだが?〜
青 王 (あおきんぐ)👑
第1話 四月の朝。僕は両手で自分の目を覆い隠した。
四月某日。今日は高校生である彼らにとって一年で最も重要な日。
そう。クラス替えの日だ。
生徒達は校舎の入口の扉に貼り出された大きな紙に群がり、ここぞと言わんばかりに一喜一憂していた。
僕はその群衆の最後尾からその紙を見た。
「えっと……。
そして自分のクラスを確認した僕は、そんな彼らを横目に――
「クラス替えなんてくだらない。どうせ一ヶ月も経てばいつも通りの日常を送ってるくせにはしゃいじゃってさ……」
――と吐き捨て、さっさと自分の教室へと向かった。
そう。僕は友達なんて一人もいない、所謂ぼっちというやつだ。
だからこんな皆が大騒ぎするイベントでも、どこか他人事の様に感じてしまうのだ。
◇
教室へ到着すると中には誰もおらず、黒板には全員の席が指定された紙が貼られていた。
「はは。僕が一番乗りか……」
僕は自分の席を確認し、窓際の一番後ろの席に座った。
暫くすると他の生徒達も次々と教室へ入って来た。
その後ほどなくして、『〇〇も同じクラスだったんだー!』や『一年間よろしくねー!』などの声が教室中に響き渡る。
しかし教室に一番乗りしていたぼっちな僕に話し掛けて来る猛者は一人もいなかった。
そして僕は小さなため息をついて、机に顔を伏せた。
どうせ僕は今年もぼっちだ。
誰が同じクラスになろうと関係ない。
もう全てがどうでもいい……。
僕は心の中でそう呟き、そのままそっと目を閉じた。
それと同時に僕の右肩を誰かがバシッと叩いた。
「うわっ……!!」
僕はその衝撃に驚き、飛び起きると柄にもなく大きな声をあげた。
そして僕は右肩を押さえつつ、後ろへ目をやった。
すると――――
「アッハハハハ! 何をそんなにビビってんねん! 寝てるみたいやったから起こしたろ思てちょっと肩叩いただけやん! おはよ! あっきー!」
――――そこにはオレンジがかった長い茶髪をポニーテールにし、制服を当然の様に着崩した、とてもわかりやすいギャルがいた。
そしてその彼女の声は、他の女子達と比べ一際大きく騒がしいものだった。
「何よ? ぼーっとして? もしかして今ので魂抜けてもうた!? ぷぷぷ」
僕を見て笑っている彼女の名前は、
本人曰く、小学三年の時に大阪から東京へ引っ越して来たらしく、その特徴的な口調はその名残で、高一の時に『関西弁は関西人の誇りや! 絶対標準語なんかに負けへんで!』などと息巻いていたのを覚えている。
そしてどうやら彼女は今も変わらず、その誇りを持ち続けているようだ。
「なぁって! なんで無視すんの? 泣くで?」
そう言いながら悲しそうな顔をする彼女を見て、僕は自分が何も言葉を発していない事にようやく気が付いた。
「あ、あぁ……ごめんごめん! おはよう、難波さん」
「ふふ。全然えぇよ! あ! 今年はまたおんなじクラスになれたみたいやし、一年間よろしゅーね! あっきー!」
「そ、そうなんだ! こちらこそよろしく、難波さん!」
彼女は高一の時に同じクラスになってから、何故か僕に執拗に絡んでくる。
去年は違うクラスになった事もあって、絡んで来る事はなかったが、今年は同じクラスなのか……。
……騒がしくなりそうだ。
「うんうん! いやー、今年はあっきーとおんなじクラスやし、楽しい一年になりそうやなぁー!」
そう言い彼女はまた僕の肩をペシペシと叩いて来る。
「い、痛い、痛い! 肩を叩かないでよっ難波さん!」
「もー、大袈裟やなぁー。そんなに痛いー? え……。もしかして折れたん? なぁ、骨折れたんちゃうん? それやったらウチが見たるから早よ見せてみ!」
僕がそう言うと、彼女は茶化しながら僕の肩を触り、更に距離を詰めてきた。
彼女が近くに来ると、着崩された制服から白くて大きな胸の谷間が見えた。
僕は慌てて目を逸らしたが、その光景が脳裏に焼き付いて離れない。
「あ〜! 今ウチのおっぱい見てたやろー? エッチやなぁー!」
「み、見てないよ……! 興味ないし……!」
「ふーーん。じゃあなんでそんなに顔赤いん? 耳まで真っ赤かーやで?」
「いや、これは……! その……」
彼女がその様に僕をからかうと、僕は更に顔が熱くなった。
すると彼女は僕の耳元で――
「なぁ……。ウチの胸揉みたい? あっきーやったらえぇで? 揉んでも……」
――と小声でそう囁いた。
「は、はぁ!? な、何言ってるの難波さん!?」
僕は慌てて椅子を窓際ギリギリまで引き、彼女との距離を取った。
そして囁かれた事で更に熱くなった耳を手で覆う。
すると次は、学校で定められているはずの長さより遥かに短く設定されたスカートから伸びる、細くて綺麗な脚が目に入った。
加えて、腰に巻かれた紺色のカーディガンが彼女の肌の白さをより際立たせていた。
「あー! 次は脚見てんのー? ほんなら触るの……脚にしとく?」
「ば、バカ! そんなの、駄目だよ……!」
そう言いながらニシシと笑う彼女は、どこを見ても僕をからかいそうだった。
だから僕は両手で自らの目を覆い隠した。
「アッハハハハ! 冗談やんか、じょーだん! あっきーの反応がおもろーて、ついからかい過ぎてしもたわ。ごめんなぁ。でもウチ、見た目はこんなんやけど、カレシじゃない人には、ほんまはそんなんさせへんねんで? こー見えて一途やねんから!」
「そ、そうなんだ……。だったら、もうからかわないでよ。難波さん……」
僕はケタケタと笑う彼女にそう言うと、恥ずかしさのあまり再度机に顔を伏せた。
「えー? また寝んのー? もう言うてる間にセンセー来るで? ちゃんと起きとかな叱られるで?」
僕は彼女にそう言われると、悔しいが正論だった為に、ゆっくりと起き上がった。
「……わかってるよ。僕の事はもういいから……。難波さんも早く席につきなよ」
そして僕はせっかく彼女が優しく注意してくれたのにも関わらず、さっきの事が恥ずかしくて、つい冷たくあしらってしまった。
「なんやー、冷たいなぁ。わかったよーだ! べっ!」
すると、僕の態度がお気に召さなかったのか、彼女はそう言うとそそくさと自分の席へ戻って行った。
「はぁ……。何で難波さんは僕にあんなに絡んで来るんだろう……」
僕は一人、窓の外に向かってそう呟き、考えを巡らせた。
が、何もわからなかった。
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