第34話 逃げ切る
漫画を描こう 34
小型装甲車が唸りを上げるように走り出す。
その後を追うように2台の単車が走り出す。
小型装甲車のドライバー、ドウカティがモニターで後方を走る2台の単車がカーブを切り、装甲車から離れたのを見ると、
「頼むぜ、逃げ切ってくれよ」
と呟く、そして今は亡き防音族の総長に語りかける、
「なぁ、龍さんよ。俺はさ、死を恐ろしいと思ったことはないんだがな、今回だけは別だよ。いや、違うんだ、龍さん。今更怖気付いたんじゃねぇんだ。その逆なんだよ。嬉しいんだよ。人の役に立てるってさ、結構気分が良いもんだなって。それがよ、世界を救える事に繋がるんだぜ、この俺がだよ、イカしてるじゃねぇか。最高の気分さ」
その時、装甲車両内のスピーカーから声が流れる、
「おさむだ、聞こえてるか? 電波が届かなくなる前に聞きたいことがある」
「なんでも答えるぜ」
「ドウカティ、本当の名前を知りたい」
「そんなものは捨てちまったさ、ドウカティ、それで良いよ」
「分かった、ドウカティ。強いて言うなら生きて欲しい」
「そうさね、でも、それはあんたの方だ。モニターでガンシップを確認できた」
暫くしてから返事が返ってきた、
「了解、こちらでも確認できた」
「生きて会えそうにないな」
「逃げ切ってほしい。最後の最後まで」
「さよならだ」
「また会うんだ」
「ああ、いつか、あの世でな」
「ドウカティ」
「おさむさん、俺は族の仲間以外に信用できる奴なんていなかった。あんたに会えて良かったよ。それじゃお話はこれまでだ。無線を切るぜ」
ドウカティは無線を切ると、見慣れないパネルを横目で見る。
役に立ちそうなスイッチはあるか?
今度はモニターを見ながらガンシップに語りかけるように言う、
「へっ、そうさ、そうだよ、そのまま追いかけて来てくれよ。戦闘ヘリちゃんよ。俺は確かにこの世界で生きていたんだ。その証拠をお前に見せてやるからな。光栄に思いやがれ」
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