第32話 無い者

漫画を描こう 32


 泣き崩れて動けないおさむに二人のライダーが近寄る。


「おさむさん、この状態は尋常じゃねぇ。多分、向こうの海軍基地から何かがやって来て、俺たちのダチ公を殲滅したにちげぇねぇ」


 もう一人のライダーが言う、


「そう言うことだったら、とっととズラからねぇと、今度は俺たちの番だ」


 二人のライダーがおさむの肩を両方から持ち上げるが、思ったよりもおさむの体が軽い。


「分かっているよ、大丈夫だ。自分の足で立てるさ。さぁ、行こう」


「何処へいけば良い」


「デスパイアの前線基地だ」


「あそこは既に制圧されていたんじゃねぇのかい」


「いや、再び戦闘が始まっていると思う。しかも、デスパイアの秘蔵っ子である精鋭部隊が動いているはずだ」


「どう言うことだい? 俺たちの頭じゃ、おさむさんの言っていることがね、どうもピンとこないんだ」


「お前たちの総長、龍之介が言っていたんだ」


「龍さんが? 何を?」


「あのカマロ。シボレーが燃える前に龍之介が言ったんだ。デスパイアは追いかけている車に乗ってはいなかったと」


「別の車に乗ったってことかい?」


「それは考えられない」


「と言うと?」


「奴は、奴だけは車に乗らずに基地に残ったに違いない」


 その言葉を聞いて、もう一人のライダーが悔しそうに言う、


「なんてこったい、俺たちは無い者を追いかけて、皆んな死んじまったってことかよ」


「基地へ戻る」


 おさむは、そう言うと一人で小型の装甲車に向かった。

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