第49話飛んでいる
軋轢の静寂で、出会った数々の夢が、小さな瞳をした少女の憧憬に、夕日を染めていく歓楽の世界で、待ちぼうけを食った、あの場所まで。
走っていく、走り続けていく。
待っていると言った自由の徴が、鮮やかなブルーに震える。
独りきりの時に、愛を語るなら、一つのストーリーが、長い季節に、白く息づく。
香水を振り忘れた晩に、本を開くなら、悲しい記憶が、僕らの心に、過っても。
大丈夫。
そうだよと言って、頷く瞬間に涙がこぼれる。
飛んでいる。僕らは飛んでいるんだ。
まるで、故郷を忘れた鳥のように。
この季節、白い雪景色に、頬をピンクに染めると、何かが起きる気がする。
温かいコートを羽織って、街に出れば、独り寂しい足取りに、夢を乗っける、向こうから車が来て、通り過ぎていく。
一瞬の視線を混ざり合わない僕らの心に、一つの喜びを
叫んでいた。
でも、届かない。
まるで、忘れられた手紙のように。
僕らは、道を行く。
明日がこなくてもいいんだと自分に言い聞かせて。
押し黙る部屋の外の、雪に、僕らは無限の郷愁を抱いた。
抱きしめた。
自分の夢だけを。
それが、身勝手というんだったら、自由の指は凍りつく
まるで、黄昏を待つベッドサイドで。
挟んだしおりに、香水を振った。
彼女の声がした気がする。
飛んでいく。どこまでも。夢が見果てぬから、朽ちていく老木に宿った精霊のように。
どうか、長い雪に、願いを込めて。
やんでしまうんだね
そしたら、明日になったら、雪をかぶった草木が、僕らに語り掛ける。
息が白いから、かぶった帽子をはなしてよ。
君に届かない
言葉じゃなくて、存在なんだ。
愛してるよなんて言う憧憬が、細やかな世界の横で、そっと蝋燭を揺らす風だから。
出会うことも別れることも自由だ。
きっとね。
きっとね。
飛んでいるよと言ってよ
僕の声が、君の耳元で、するのなら。
優しい毛布が重なって、はだけた布団カバーが、君を描く。
弧を描いている鳥が、飛んでいくから、悲しみの夢からそっと起こして。
雪が解けて、世界が、幻を愛すると、見えてくる。
なにがって?
君のストーリーが。
ほら、と促して、君が顔を上げると、目の前に誰もいない部屋でも涙が出る。
その涙の訳が、わからないから、僕らは、あなたを求めているんだよ。
香水の香りが、燻るように、鼻を撫でて、僕らは、この星で、この部屋で、この心で、ただ愛のような夢を語っている、
そうそれだけで、いいと思えるなら、きっと素敵な交差点で、信号機に止まる色とりどりの鳥を追っていく瞳が、瞬いて、飛んでいく。どこまでも、どこへ?
ときかれても、誰にも答えられないけれど。
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