へい…
◆◆◆ (side朱里)
あれ?なんか意識が飛んでた気がする。
そう不思議に思って私は時計を見ると、先ほどまでから4時間も立ってることに気づいた。
もしかして寝てた?まあ最近疲れ気味だし眠気に負けちゃったのかな?
私の前にはやっぱり二次試験合格と書かれた紙が置いてある。よかった〜夢じゃなかったんだ。
私は合格が夢でなかったことに安堵した。
でもまだ面接が残っている、頑張らないといけない。
よし、学校の宿題をしっかり終わらせて、ご飯でも食べるか!
そう思って学校の宿題を机の上に出して取り掛かろうとしたのだが、消しゴムはあるのにシャーペンが見当たらない。
おかしい…確かにここに置いといたはずなのに…
見つけた!全く…こんなところまでは流石にシャーペンでも転がらないだろう。
不思議なこともあるものだなぁと感じた。
最近不思議なことが多い気もするけれど。
◆◆◆ (VTOPにて)
どうやらVTOPの2期生として出すにはどの応募者がいいかどうか、面接の日も近くなっているようなので話し合っているようだ。
もちろん話の中に二次試験を突破した朱里も話に上がっている。
「いやー今回はかなりの逸材が集まっていますね。1期生が活躍してくれたおかげか応募者も多かったですからね。」
そうご機嫌な様子で話しているのはVTOPの社長である
彼は元々チャンネル登録者数100万人越えのVtuberとして活躍していた。そのためVtuber界隈では顔が広い。
VTOPが1期生をうまく出すことができたのは彼の力によるものが大きいだろう。
「そういや二次試験突破者の中に松井朱里さんっていたじゃん?あの人からちょっと気になる手紙をもらっててね…」
周りが急にざわつき出した。「合格にしてくれとか書いてきたんだろ」というような声も上がっている。
「まあまあ黙って?ちゃんと説明するから。」
「なんかね、うん、俺もよく分かってない。なんとなくは分かるんだけどこれが本当だとちょっと大変なんだ。」
そして秀太が読み始めた手紙の内容に周りの面々は困惑していた。
「それが本当だとするとデビューさせた時に人格が入れ替わるって事もあるという事ですか?」
そう聞いてくる社員もいる。皆不安なようだ。
「面接で本人がどんな人間か、本当だとしたらもう一つの人格がどんな性格なのかしっかり判断しないといけなくなる。」
「でも本人が別の人格に気づいていないっていうのはマズイかもしれない。」
「何よりこの手紙を出してきたもう一つの人格に興味が湧いたよ。」
再び場がざわつき出した。
そんなことがあったとは梅雨知らず、朱里はその3日後、面接を受けにVTOPの事務所に来ていた。
◆◆◆ (side朱里)
遂に面接の日がやってきた。これで合格をもらったら遂に!憧れてきたVtuberデビューだ!
私は人生で一度も味わったことのないくらいの嬉しさと心配を胸に抱えながらVTOPの本社の自動ドアを通った。
なんか受付の人の目が険しかった気がするのはのは気のせいだろう。…多分。
というか面接ってどんなことを聞かれるんだろう。
知らない…これ知っといた方が絶対いいやつだと思うんだけど、もしかして私やらかした?
でもまあなんとかなるだろう。
とりあえず頑張ろう…
◆◆◆
この感覚はなかなか慣れない。なんせかんせ人の見ている景色が自分にも流れ込んでくるのだから。
えっと…今はあの手紙にあった面接をしているのだろう。
主人格は結構いい感じの受け答えをしているようだ。
それにしても面接官が結構探ってくるな…あの手紙が不味かっただろうか…
やっぱり一時の感情で動くのは不味いか。
そんな事を考えているうちに面接が終わったみたいだ。
まあ、受け答えはあんまり面白くはなかったかもしれないけれど、簡単に不合格になるような内容ではなかっただろう。
そういや前スマホでちょっと二重人格について調べたんだけど、調べれば調べるほど自分っていう存在が邪魔なことが分かって来たんだよな…
でもなんか二重人格(解離性同一障害って言うらしい)は幼少期のトラウマが原因で起こることが多いらしいから、主人格もトラウマを抱えているのかもしれない。
ということは主人格の普段を和らげるために俺がいるのだろうか?
考えれば考えるほど混乱してくる、なんせ俺の知らないことがたくさん起こっているのだから。
うーん、俺が出てくるタイミングも調整することは出来ないし俺の存在はやっぱり邪魔だと思うんだけどな…
こういう時に主導権握ってると色々調べたりすることが出来るんだけど、やっぱり主導権がないと、ただ行動に移せないことをただただ考え続けている悲しい人になってしまう。
悲しい人で終わるのも嫌だから今度主導権がきた時にどんな事を調べるか考えておくか…(いつくるかはまったくわからないけれど)
流石に俺の存在に主人格が気づいてもおかしくない頃だと思うんだけど、なんで気づく様子が全くないんだろう。
ああ!考えるべきことがどんどん増えていく。
こんなことを考え続けても何も始まらないと分かっているのに。
だって俺は所詮、ずっと体の主導権を握っていることもないただの人格なのだから。
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