第13話  魔法演舞祭 part3

 第三試合、ルナとインラ君の試合である。


 インラ君はどんな魔法を使うのか気になるが応援はルナに対してすることにしよう。


 ルナの様子は準備万端といったところである。


 杖をブンブン振り回して、準備体操をしている。


 さて、試合が始まった。


 二人とも大量の魔法、魔術を展開している。


 放たれ合う魔法たちは互いにぶつかり粒子となって消えていく。


 その様はまるで花火の夜のようだった。


 未だ外は暗くはないが魔法陣によって埋め尽くされた空は光の通り道を潰していく。


 その結果、暗闇に光る花火のような輝きを放っている。


 両者、縦横無尽に走り合い、その魔法らを放つ。


 時にはその動きが目で追えぬほどの極まりを見せている。


 ぶつかり合う魔法らはその二人の実力をまざまざと示している。


 元々はルナの圧倒的な実力差で試合が決した予選第三試合だったが腐ってもその実力は本物。


 命削り合うような凄みのある試合である。


 そして、ここで見せるは彼女の御業。


 名を「紫焔」という。


 文字通り、白い炎の芯に紫の焔を見せる御業である。


 目を引くはその速度。


 従来の魔法や魔術の数倍もの速さで飛翔する。


 もちろん、この一発だけで終わる御業ではない。


 同時に二、三十発の御業を発動できる。


 インラ君は始め、その速度になんとか適応しながら撃ち合いに応じ、次いで逃げに徹し、そして最終的にその物量に押しつぶされた。


 まぁ、インラ君は相性が悪かったとしか言いようがない。


 そして、彼女の勝利が決定したのであった。




 試合が終わると、インラ君は集まっていた僕らの元へやってきた。


 僕らの元といっても、まぁ、目的は多分ルナだろう。


 彼は一言、試合の礼を言い終わるとそそくさと帰っていった。


 今回の試合の感想をルナに聞いてみた。


「ルナさんや今回の試合はどうでしたかね。」


「なんでお爺さん口調なんですか。祈里君。」


「まぁまぁ、そんなことはさておきだよ。楽しかった?」


「正直、退屈でした。一度御業を切ったら、すぐに試合が決してしまうんですから。」


「正直だねぇ。まぁ、この世界じゃ魔法や魔術は速度が命だ。あなたの御業はこの世界じゃトップクラスにヤバいものでしょうね。」


 正直なところ、僕だってルナと戦ったら勝てるかどうかわからないのだから。


 そして、今は一番それが怖い。


 もし、この先ルナと戦うことになったらと思うと、恐怖で悪寒が走る。


「もしかして、今ビビっていますか?私に。」


「はぁ、ビビってねぇし。そんな簡単にビビるわけえねぇし。」


「ふふ、可愛いですね。」


「うるさいっ。」


 こういうからかい上手なところも少し苦手だ。


 最近の女性ってこういうものなのだろうか。


 さっきの試合とは逆に後ろで何やら一部の人間がニヤニヤしている。


 一人恐ろしい形相の人もいたけれど。




 第四試合、プテラさん対ユンの試合である。


 試合開始の合図が鳴り響く前、二人は睨みあう。


 綺麗な女性二人が対立する構図はなんとも言い難い。


 両者、互いに水の魔法を右手に発動させている。


 それから空中に魔法陣が描かれ、魔法が放たれる。


 さまざまな座標でぶつかり合う魔法たち。


 水による演舞を見ているかのような感覚であった。


 何故か、いくつか空を漂うだけの魔弾もあったりしたがそれはそれだろう。


 さぁ、すでに勝負は中盤戦といったところだろうか。


 両者の額には汗がほんのり垂れている。


 その汗の煌めきを背に凄まじい攻防が行われている。


 その攻防に観客席が震えるほどの歓声が上がっている。


 そして、それに負けず劣らず中央のスタジアムからは魔弾がぶつかり合う破裂音が響いている。


 戦場のあらゆる地点で再度魔弾がぶつかり合う。


 実力は拮抗していると見て間違い無いだろう。


 戦いは千日手のように永遠に続いていく。


 その様に変化はない。


 魔法使いは大気の魔力を扱う。


 よって、その実力とは扱える魔力量で決まるといっても良い。


 それが先ほどの試合からこうも拮抗する試合となると面白いものだと思う。


 そして、ここで変化が起こる。


 本来、真っ直ぐ飛ばすだけのはずの水属性の魔法が曲線を描く。


 多分、これがユンの御業だろう。


 正直、他の人たちの御業に比べたら、魔法の延長線上、というかプラグのように感じるものではあるがその使い方を考えれば、その力の可能性は無限大である。


 大気に水が生まれ、歪み、放たれる。


 その連続が技となり、ユンの実力である。


 動きのある魔法に対して、プテラさんは対策が取れない。


 同じ水属性の魔法を使うだけにその小さく、大きな差は戦いの命運を分けるのに大きなきっかけであった。


 これが同じ属性の魔法使いたちの戦いである。


 一つの小さな実力差が戦いの大きな差を生み出してしまう。


 よって、この戦いの勝者はユンであった。


 


 ユンを囲んで、労っているとプテラさんがやってきた。


「ハーイ、みなさん、お集まりですね。私はプテラ・プニィです。これからよろしくお願いしますね。特に祈里さん、あなたにはこれからお世話になると思います。」


 は、お世話になるってどういうことだろうか。


「はぁ、よろしくお願いします。プニィさん。」


「プテラでいいよ、さんもいらないよ。」


「わかった。プテラ。よろしくね。」


 それにさっきまで戦っていたユンのことをガン無視しているがいいのだろうか。


「ちなみに、ユンに話したいことはないの?」


「ミナさんに対しては先ほどの試合できちんと対話をさせて頂いたので、大丈夫です。」


「ええ、先ほどは楽しくお話しさせて頂きましたから。」


 ユンもそう言っている。


 


 さて、試合もひと段落してお昼ご飯の時間となった。


 生徒はそれぞれ売店で食べるものを買って、観客席で座って食べている。


 我々もそれに倣って売店で焼きそばやフランクフルトなどファストフードを買って口に運ぶ。


 中にはハンバーガーなどもあってその種類はさまざまで実に空腹を誘う環境だった。


 もぐもぐもぐもぐ、しっかり食べる。


 次の試合もあるからちゃんといっぱい食べます。


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