第12話  魔法演舞祭 part2

 本戦第二回戦第一試合は僕とローグだった。


 試合が始まる前に僕たち二人で一つ話し合いをした。


 それはお互いに御業を初めから使おうと言う話である。


 そして、今まさに試合開始の合図がなる。


 と、同時に僕らの右手に魔力が宿る。


 僕の心炎を彼の風栓が包み込む。


 僕の心炎は対象の魂すら焼き尽くす炎、対して、彼の風栓は風で対象のものを封じ込めるものだ。


 つまり、僕の炎が全てを焼き尽くせるか、否かと言う戦いである。


 僕の炎が彼の風の檻を焼き尽くすがすぐに新しい風が生まれる。


 ここで一度、僕の御業が途切れる。


 集中力が切れたのか、魔力が切れたのか、多分前者だろう。


 何故なら、僕の手に宿る魔力の感覚がまだ残っている。


「どうやら、御業勝負は俺の勝ちみたいだな。」


「御業の勝負では、でしょ。こっからが本番なのだから。」


 次に自分たちは魔法勝負、いや僕らの場合だと体術勝負の方がいいのかもしれない。


「じゃあ、いくよ。」


 僕は両手に魔力を集め、身体強化を使う。


 そして、両者走り出し取っ組み合いの喧嘩になる。


 互いに殴り合い、蹴り合い、ほんとの喧嘩みたいになる。


 しかし、ここは魔法演舞祭だ、ちゃんと魔法も使う。


 ローグは地面を操作して、こちらの足場を奪ってくる。


 なので、僕は風の魔法を使って、足場を作る。


 とはいえ、魔法というよりは肉弾戦重視の試合である。


 パワーのある拳を振り下ろすローグの攻撃にたして日本武術を用いて技術で対応していく。


 この勝負は僕優勢の戦いだった。


 決着は早かった。


 ローグの攻撃は僕には届かない。


 そして、僕のカウンターが何度も彼の腹部に突き刺さる。


 ジリジリと彼の体力は削られ、ついに片膝をつかせる事ができた。


 そこで審判の先生が決着を言い渡した。


 当然、この試合の勝者は僕である。


 


 試合が終わり、僕らはスタジアムの外で会っていた。


 そこで僕は疑問に思っていたことを聞いた。


「ローグ、君、身体強化魔法を使っていなかっただろ。」


「ああ、まぁ。俺はそれ使えないからな。」


「それで、あの近接戦の実力か、底がしれないな。」


 そんなところにみんながやってきた。


「どうしたんだい、みんな。そろそろ、メルルは試合だろう。」


「そうです。しかし、お二人のことが気になってきてしまったです。」


「そうか、ありがとう。」


 そんな感じで、和んでいると大会のスタッフの人がメルルを呼びにきた。


「メルル・フォルトさんそろそろ会場入りしてください。」


「はいです。」


 スタッフに呼ばれたメルルはスタジアムの方に向かっていく。


 僕らは観客席の方に移った。




 スタッフに呼ばれて、会場の中を進んでいると対戦相手のメルト君に出会った。


 ちなみに、普段の「―です。」というのは外面用なのでここでは使わない。


「メルト君です?」


「そうだけど、ああ、君が次の相手か。」


「そうです。よろしくです。」


 正直、御業を習った私たちに勝てる魔法使いは一年生にはいないはず。


 だからつまり、私は彼のことを舐めている。


「いい試合にしよう。よろしく頼む。」


 そう言って、彼は握手を求めてくる。


 一応、その手を握っておく。


 まぁ、少しは私を楽しませてほしいね。


 祈里君との楽しい時間の前座として、ね。




 第二試合が始まる。


 本試合の対戦相手はメルルとメルト君である。


 いつものことながら開始の前には睨み合いから始まる。


 開始の合図に合わせて、お互いに魔弾を放ちあう。


 互いの魔弾がぶつかり合い、決定的な一撃には互いに至らない。


 そんな状態で両者近づいたり、遠のいたりいかに相手に魔弾を当てるかに真剣動いている。


 しかし、まぁこの拮抗もすぐに終わるだろう。


 一年生では僕らだけのとっておきの秘密兵器があるのだから。


 御業を使用すれば勝つのは簡単だろうとなんて考えていた。


 そんな考えは一瞬で覆された。


 戦いの中盤、メルルは御業の手札を切った。


 悪魔になったメルルは闇属性の魔法を次から次へと放ち出す。


 が、しかし彼には当たらない。


 彼が陽炎のようになって魔弾がすり抜けていく。


 それは彼も含めて何故か魔法もそうであった。


 これじゃあ、メルルは勝つことができない。


 さて、メルルはどうするのか?


 そんなうちにメルト君の攻撃は続いている。


 それはつまり魔法の同時使用をこなしているということである。


 しかも、二つ以上多分三つぐらいはしているのではないだろうか。


 対して、メルルの魔法は文字通り掠りもしない。


 流石のメルルも冷や汗が頬に滲んでいる。


 もちろん、メルト君の攻撃もメルルには届いていない。


 しかし、同じ攻撃が届かない状況ではあっても、メルト君の攻撃は防がれているのに対せして、メルルの攻撃は効いていないというのが正しい表現になるのだろうか、これではメルルの集中力が切れればそこで終わりがやってくる。


 もちろん、メルト君の体力も勝敗を分かつ要因ではあるのだが。


 ここで、転機が訪れる。


 メルルの魔法に少し変化を感じた。


 相手の魔力を割くような感覚を覚えた。


 そして、メルト君の陽炎のような魔法にメルルの魔法がぶつかる際に起きる火花のようなものが咲く。


 そこからだった、彼女、メルルの魔法をメルト君が防ぐようになった。


 つまり、彼の陽炎を打ち破ったのだ。


 そうなればメルルの勝利は決まったようなものだった。


 双方の魔弾の応酬の中を駆け抜けていく、メルル。


 彼女の邪槍が彼の腹を貫く。


 そして決着がついた。


 審判の先生による私の勝利が表される。


 


退場口に向かうとお兄ちゃんが待っていた。


「メルル、お疲れだよ。」


「アルル、ありがとうです。」


 後ろから、みんながぞろぞろとやってくる。


 みんなと一緒にロビーに行くと反対口からメルト君が歩いてくる。


「ああ、メルルさん試合ありがとう。お疲れか様です。」


「メルト君、お疲れ様なのです。」


 メルト君は握手を求めてくる。


 私は素直にその手を取る。


 何やら、みんなが後ろでニヤニヤしながら見物している。


 たかが握手ひとつでみんな色めき立ちすぎなんだよね。


 私が好きなのは祈里君なんだし、こういう勘違いはしないでほしいよね。


 あ、好きって言っちゃった。


 恥ずかしいなぁ。


 というより握手が長い、そろそろ外してほしいのだけど。


 メルト君、すごく笑顔だし、ちょっと怖い。


 やっとのことで握手をといてくれる。


 メルト君はみんなに「さよなら」を告げ、観客席に帰っていく。


 私たちも一度観客席の方に移動する。

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