第6話 新しいお友達

教室に戻るとまだ帰っていなかったのか、ローグとユンが二人の男女と一緒に話していた。


 太陽は傾き、すでに夕陽とも呼べる時間なのだが二人が真面目に居残り勉強していたとも思えないしな。


「やぁ、二人ともまだ帰っていなかったのかい?」


「ん、ああ、祈里じゃん!いやぁ、お前を待っていようかなって思ってな。」


「そうそう、そしたらこの子たちが話しかけてきてくれたのよ。」


「じゃあ、紹介してもらえると嬉しいんだけど。後ろの君たちは?」


「二人はね。」


 そこで、後ろにいた二人が間に入ってくる。


「アルルだよ。」


「メルルです。」


 アルルといった男の子とメルルといった女の子が左右対称の動きをして挨拶をする。


「アハハ、先に言われちゃった。それじゃあ、さっき聞いた通りアルル君とメルルちゃんだよ。」


「得意魔法は光だよ。」


「得意魔法は闇です。」


「そうか、よろしくね。ちなみに僕は…。」


「アルル、知ってるよ。」


「メルル、知ってるです。」


「よろしくね、祈里君。」


「よろしくです、祈里君。」


「そうか、うん、よろしくね。」


 挨拶が終わり、並んで昇降口に向かう。最近は一人で帰っていたのでみんなで帰るのは楽しいのである。


「二人は選択授業何を取ったの?」


「アルルはね、魔法実技と魔法論だよ。」


「メルルはね、魔法実技と魔道具制作です。」


「じゃあ、魔法実技はみんな一緒なんだ。」


「あれ、俺は?」


「あ、そうだった。ローグのこと忘れていた。」


「おいっ。」


 和の中に笑顔が生まれる。


「そういえば、この学校で魔術専門のひと見たことないんだけど、ある?」


「いや、ないな。魔術師か、ないよなぁ。」


 と、みんなが首を横に振っている中、一人首を縦に振るものが現れた。


「メルルはあるです。というか、私も使いますですし。」


「え⁉あるの?」


「はいなのです。この間、クラスの女性が杖を持っていたのです。」


「しかも、クラスにいたの。まじかー。初耳ですわ。」


「ほんとほんと、まぁ、まだクラスメイトと関わりあんまりないんだけど。」


 それもそうだ。僕たちは僕たちだけでつるんでいるのであんまりクラスメイトとしゃべることはない。というか、どのクラスもそういう雰囲気らしい。最初の日に話したメンツとだけ喋るのが皆のスタンスらしい。


「名前はわかる?」


「確か、ルナ・ホワイトさんです。自己紹介の時にそう言っていた気がするのです。」


「てか、なんでいきなり魔術師を探し始めたの?」


「いや、魔術詠唱って、外国語だからかっこいいんですよね。」


「外国語?そっか、祈里は日本人だから外国語になるのか。」


「そうそう、魔術は英語だからね。」


 魔法は基本的に日本語なのだが、魔術は英語なのだ。


 発音とか難しくて大変なのよな。魔術って。


「よし、ホワイトさんには明日声をかけてみよう。」


「それなら、アルルも行くだよ。」


「メルルも行くです。」


「なら、三人で行こうか。」


「いやいや、俺らも忘れんなよ。」


「そうだよー。」


「じゃあ、みんなで行く?」


『行く!』


 多分、五人で行くとホワイトさんもびっくりすると思うんだけど、まあいいか。そん時はそん時だろう。


 


 家で待っていると、黄昏が帰ってきた。


「おかえり、遅かったね。」


「ああ、悪いがこれから先、これより遅くなることはあっても早く帰ってくることはないよ。」


「そうなんだ。」


「だから、よければ先にご飯食べていてもいいよ。」


「いや、ご飯は二人で食べたい。」


「そうか、じゃあ、頑張ってできるだけ早く帰ってくるよ。」


「じゃあ、ご飯作って待っているね。」


「うん、じゃあ、そろそろママって呼んでくれてもいいんだよ。」


「じゃあ、お風呂入ってくるねー。」


 無視だ、無視。こんな恥ずかしい母親を持った覚えはないからな。


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