第5話 魔法の研究室

翌日、授業のオリエンテーションと実力測定が始まった。


オリエンテーションではこれから先受けていく授業の選択方法とその授業の内容の説明があった。


授業の種類は必須五科目、選択が七科目中二科目の計七科目である。


僕は選択科目を魔法実技と対人戦闘訓練の二つにした。


ちなみにユンとローグはそれぞれ、魔法実技と魔法論、対人戦闘訓練と体術にしたようだ。


必須五科目はそれぞれ魔法実技基礎、魔術実技基礎、体育、魔法論基礎、魔術論基礎の五つだ。


ようは、実技と筆記の基礎全部ということだ。


「よおし、全員授業の登録方法は覚えたな。では、これからの君たちの学園生活について説明する。知っての通りこの学園は七人の魔女によって運営されている。よって、最終的に君たちの成績をつけるのは彼女たちだ。もちろん、私たちも採点するが、最終的な成績の決定はさっきも言った通り彼女たちだ。そして、一定の成績を収め、もしくは何かに秀でており彼女たちに認められた者は星が贈呈される。認められるには彼女たちの茶会に参加する必要がある。一人の魔女から一つずつ計七つの星を集めた者がこの学園の最強だ。全員、励むように。」


『はーい。』


「七つの星を持つものはまだこの学園にはいない。そもそも魔女に好かれるものというのが珍しい。それを七人ともなると奇跡だな。」


 そこまで言うのか。


それはちょっと試してみたくなる。


「そして、七つ星は年に一回行われるはずの魔女全員参加の茶会、ワルプルギスに参加できる。まぁ茶会といっても、魔女と生徒との交友会といったところだな。」


 先生は淡々と学園行事について話していく。


「よしそれじゃあ、測定の方に向かおう。」


 先生の後に続いて、訓練場の方に向かうことになった。訓練場はなかなか広く、感覚としてはローマのコロッセオのような円形闘技場といった感じ。


 そこで私たちは自分の魔法を的に向かって放つことになった。


「よし、一人ずつ撃っていけ。」


 その先生の合図を期に一人一人魔法を放っていく。


 僕は黄昏に最初に習った魔法、蒼炎を使った。


まぁ、反応は人それぞれだったけど、大体の人は顎が外れそうになっていたね。


 ユンは大きな水玉を作り出して的にぶつけていたし、ローグは土人形を作っていた。


 そんな感じで本日の学園は終了した。


 それから、数日間授業に没頭した。


 そして、後日初めての対人戦闘訓練が行われた。


今回は上級生との合同演習だった。


初めて見る上級生の魔法はすさまじいものだった。


 ローグも目を輝かせている。


 演習の中で一人の女性が近づいてきた。


「あなたが、今期の特待生かしら?私はクラーラ・デュエル。少しお手合わせ願えるかしら?」


 上級生か、この人はどんな魔法を使うのだろう。


「ええ、構いませんよ。僕でよければお相手します。」


「それではいざ勝負ですわ。あなたの実力お確かめいたします。」


 それから僕らの戦いが始まった。


クラーラさんの魔法は火属性だった。


まさに花火ともいえる様々な色の炎が演武のごとき勢いで宙を舞っていた。


 対する僕の魔法は最近研究中の風魔法、風で様々な動物を作りぶつけた。


ただし、まったく対等というわけではなく僕の防戦一方という状態だった。


「嵐龍、嵐狼、嵐獅子。」


「蒼炎、赤炎、緑炎、黄炎。」


 圧倒的に手数が足りていない。


そのまま物量に押し切られて負けてしまった。


「勝負あり。勝者、クラーラ・デュエル。」


「あなた、どうして自分が負けたかお分かりですか?」


 突然、クラーラさんがそう尋ねてきた。


「僕の、魔法詠唱が遅いからですか?」


「うーん、あっているようで間違っていますわね。」


「というと?」


「あなたの詠唱速度が遅いのも、もちろんそうなのですけど、何より魔法構築能力が足りていません。魔法を起動してから発動するまでの感覚が長すぎるのです。それさえ何とかすればあなたの魔法威力は学園でも随一なので、速度と連射力を補えばもっと強くなれますわよ。」


「は、はい。精進いたします。」


「なんなら、私の通っている研究所に一緒に行きませんか?」


「おい、そこまでだ。バカ者ども。」


 そこで、声をあげたのはアンリ先生だった。


『アンリ先生⁉』


「このバカ者ども、訓練場をぶっ壊す気か?それとクラーラ、私の研究所に来させることを勝手に決めるな。」


「ええ、研究所ってアンリ先生のところだったのですか?」


「ええ、そうですわよ。」


 まさかの担任の研究所だったとは。


「だから、勝手に決めるなと言っているだろう。それにいいのですか?黄昏の魔女よ。」


そういうと、後方を見上げた。


そこには黄昏の魔女、我が母、アリスがいた。


「いいよ、元よりクラーラやアンリの下で研鑽をさせる予定だったからね。それに彼にはちょっとした秘密を持っている。そのことについて話があるからあとで君の研究室に行かせてもらうよ、アンリ。」


「わかりました。黄昏、待っていますよ。」


 授業が終わり、放課後になるとクラーラ先輩の案内でアンリ先生の研究室にやってきていた。


 部屋に入るとすでにアリスは椅子に座り、紅茶を嗜んでいた。


「やぁ、待っていたよ。一息ついたら話始めようか。」


 そこで、アンリ先生がお茶を用意してくれる。


 なんと、お茶の葉は土属性の魔法で育てた、アンリ先生のお手製らしい。


「ありがとうございます。……美味しいですね。」


「そうか、口にあったのならよかった。」


「私もよくいただきますが本当においしいお茶ですわね。」


 そうして、お茶を一杯いただきながら授業の疲れを癒した。


「さて、それではそろそろこの子の説明をしようか。」


「ええ、それをお聞きするために集まったのですから。」


「この子にはね、私の血を取り込ませたのだよ。といっても、ほんの数か月前の話だからね。だから魔法の威力は高いが技術は全然というあいまいな状態になっているのだよ。この学園には魔法の精度を上げてもらうために連れてきた。」


「なるほど、それで君はあんなにも不安定なんですわね。」


「そもそも、なんで、黄昏が血を分け与えるようなことになるんだ。」


「さぁ?私も血まみれで倒れているところを助けただけだからね。その前のことは私にもわからん。この子話してくれないし。」


 それは僕が話したくないからなんだけど。だって自分の過去とか面白いものではないからね。


「それで、私たちは何をすれば良いのでしょうか。」


「そうだね、先刻も言ったがこの子の魔法の技術や制度をあげてほしい。よろしくお願いする。」


「わかりました。君、毎日授業が終わったら、私の研究室、まあ、ここに来るように。」


「はい、了解しました。」


 最後にもう一杯お茶をもらって、僕は研究室を出た。


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