第3話 魔法学園

そんなこんなで魔法学園への入学の日がやってきた。


「忘れ物はないかい?君はちょくちょくおっちょこちょいなところがあるからね。心配だよ。」


「大丈夫ですよ、ママ。」


 そう言いつつ、荷物を詰めた黄昏からもらったレザーバックを肩にかける。


グッと、肩に重みがかかる。


 ふと、黄昏の方を見ると黄昏は手ぶらだった。


「ママは、荷物は?」


「ん?ああ、荷物なら異空間にしまった。これも魔法だよ。そういえば、攻撃魔法はほとんど教えてきたが便利魔法はそれほど教えてこなかったな。今度、教えよう。」


「そんな魔法があるのですか。それを覚えたら通学が楽になりますね。ただ、難しそうです。」


「ハハハ、大丈夫さ。君ならすぐに覚えられる。」


そんな風に話しながら扉をくぐる。


この家から学校まではほんの十五分といったところだろうか。


魔法を使うまでもないな。黄昏もいることだし歩いて向かうことにしようかな。


「歩いて向かうかい?」


「おんなじことを考えていました、ママとは気が合いますね。」


 それから、ほぼ十五分後に学園にたどり着いた。


入学式ということもあって学園のそこら中が飾り付けられていた。


 周りを見渡していると自分の周囲から視線を受けた。


何やらコソコソ話している声も聞こえる。


はじめは僕に向いていた視線が次第に隣に向かう。


 よくよく考えてみれば隣にいるのはこの学園の理事会の一人だった。


そんな人が学生と一緒に登校してきたら驚くものだ。


 そんな感じで入学式が始まるまで僕はいたたまれなくなるのだった。 




 魔法学園とは中等魔法教育、もしくは誰かの弟子として、魔法の基本的な教育を済ませた者が通う学校である。


僕は一応、黄昏の弟子ということらしい。


 黄昏が言うには魔法使いは基本的にはすべての属性の魔法を使えるらしい。


魔法学園ではそんな魔法使い達が一つの属性を専門分野として研究を重ねていくとのことだ。


 僕は何の属性を使おうか、体術ができるし思い切って運動魔法に全振りしてもいいかもしれない。


ちなみに言うと、黄昏は火の魔法を得意としているらしい、何やら魔法がすごすぎて世界をあかね色に染めてしまったところから黄昏の異名が付いたらしい。




 入学式が始まった。


事前に確認していたクラスの列に並び司会の人の言葉を待つ。


学園長と呼ばれた青年というには年を取った男性が壇上で挨拶をしていた。


その後、後ろに控えていた七人の女性(黄昏がいることから、多分、魔女たちだろう。)が一人ずつ一言挨拶をしていく。


 魔女たちによる挨拶が終わったら、在校生代表と新入生代表が言葉を紡ぎ始める。


 そう言えば、黄昏が言っていたが僕は特待生ということらしい。


何故?とも思ったがよくよく考えたら魔女の血を取り入れ、しかも魔法の講義まで受けているのだから当然か。


 そんなことを考えていたら挨拶も終わっていた。


 入学式が終わり、各教室に移動となった。僕のクラスの入り口には一の三と書いてある札が掲げられているらしい。


 この学園の校舎は、廊下は木造で、壁はコンクリートだった。


 教室に入ってもそこは変わらないようで床は木でできており、天井からは小さなシャンデリアとも呼べる照明が吊られていた。


 座席は自由ということなので適当に座る。


 先生が来るのを待っていると、左右に男女が座る。


「よう、特待生。黄昏の弟子ってマジ?」


「あー、私も聞きたかったの。黄昏様と一緒に登校したって本当なの?」


「う、うん。本当だよ。家から一緒に…。」


「家から⁉ってことは一緒に住んでいるのか?」


「あ、いや、その。」


「ていうか、あなた日本人よね。こっちの世界じゃ珍しいわね。」


 あ、そうだった。この世界では短い音で鮮明にイメージができるってことから日本語が基本的な言語となっているのだが、この世界に、というか魔法使いに日本人が少ないのだ。


 なぜなのか昔黄昏に聞いたことがあるが、さぁと一言返されるだけだった。


「ちなみになんでこっちに日本人が少ないのか知ってる?」


「んー、そういえばなんでなんだろうな。わかんねぇな。」


「おーい、席に座れー。」


 あ、先生がやってきた。


すごく長髪の先生だが声と体型を見る限り男性なのだろうか。


ちょっと分かりづらい。


「よーし、席に着いたな。これから一年間、お前らの担任を務める、アンリ・ベートだ。よろしく頼む。今日はこれで終わりだが明日から授業のオリエンテーションが始まる。それと並行して能力の測定があるからな。ま、今日のところは友達でも作っておくんだな。」


 そう言って、アンリ先生は教室から去っていく。


「それじゃこれからよろしくな、っと、そういえば名前を聞いていなかったな。」


「そういうのは自分からじゃないかな?」


「そ―よそーよ。あ、ちなみに私はユン・ミナ。友達からはユンとかユンミナって呼ばれているわ。」


「はいはい、俺はローグ。ローグ・アルベルト。ローグでいい。そんでお前は?」


 ユンとローグか。


二人ともいい名前だ。


仲良くできそうだ。


「僕は初世祈里だ。僕も祈里って呼んでくれていいよ。」


「オーケー、祈里。よろしく頼むぜ。それで、これからどうする?」


「あ、僕は黄昏の下に行きたいんだけど、どこに行けば会えるかわかる?」


「ああ、それなら研究室にいると思うよ。」


「研究室?」


 聞き覚えのない言葉に僕は耳を寄せた。


「うん、研究室。この学校の先生は一人一つ研究室を持っていて生徒のお手伝いをしてくれるらしい。黄昏の先生もそこにいるんじゃないかな?」


「それなら、一緒に行こうぜ。俺も黄昏の魔女には会ってみたい。」


「わかった。一緒に行こう。」


「はーい、私も行くー。」


 新しくできた友達二人と一緒に黄昏を探し始める。

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