僕のジョブ、表に表示されるのが結界師じゃなくて穴痒師って……

しょうわな人

第1話 クラス転移だって……

 それは突然のことだった。


 僕がまたクラスメートの太川くんや宮坂くん、花川さんや玉城さんに虐められている時に教室が光って、そこにいた全員が気を失ったんだ。


 目が覚めたのは僕が一番早かったみたいだ。


「こ、ここは何処? えっと、教室じゃないよね?」


 僕がキョロキョロしてるとクラスメートたちが気絶してるのが見えた。

 その時にムクッと逆矢細孔さかやさいくさんが上半身を起こした。


「アナくん、気絶したフリをしておこう。私の勘だけど異世界転移だと思う。ここでアナくんが先に目覚めてるとまたタガワたちに勘繰られると思う。ほら、コッチ。私の方のすみっコに来て」


 サイクさんは虐められている僕を表立って庇ったりはしないけど、太川くんたちが居ない時はいつも話をしてくれるんだ。何故ならサイクさんも虐められているから…… そんな僕たち二人はクラスメートには内緒でお付き合いしてるんだよ。


 僕はサイクさんの言う事も尤もだと思ったから言われた通りサイクさんの近くに行って気絶したフリをした。


 するとこの場所に誰かが入って来る。


「フム、まだ誰も起きておらぬようだな。今回は豊作ではないか。一度に三十五名も召喚できたのは初めてだな。侍女や拐ってきた村娘どもを生贄にして正解だったようだ、チャガよ」


「はい、陛下。しかしながらこの三十五名全てが優秀とは限りませぬ。故に鑑定を行い役に立たぬ者は直ぐに追放すべきですな。金貨三枚ほど与えて放り出せばよろしいかと存じます」


「役立たずに金貨三枚もか、チャガ? 金貨三枚といえば庶民の者が五年は暮らせる額だぞ」


「陛下、それには口止め料も含みますゆえに。あちこちで要らぬ事を言われれば折角これまで騙して参りました庶民どもの信頼を損ねてしまいましょう」


「騙すとは人聞きの悪い事を言うな、チャガよ。余は誠心誠意を持って余の為に動いておるのだぞ、フフフ」


「左様でございましたな、陛下。ムッ、どうやらそろそろ気づき始めるようにございます。騎士どもを入れましょう」


「ウム、良きにはからえ」


 多分だけどチャガと呼ばれていた人が外に出て、五秒後には大勢の人が入ってくる気配がした。

 サイクさんはまだ気絶したフリをしてるから僕もそのままフリを続けた。 


 その大勢が入ってくる音で何人かが目覚めたみたいだ。


「うわっ!? な、何だ! ここは何処だっ!!」


「おいおい、落ち着け、宮坂。あそこに居る人たちが説明してくれるだろうよ」


 ああ、太川くんと宮坂くんだね。僕はまだフリを続ける。


 そうこうしている内にクラスメートの大半が目覚めたみたいだ。僕はサイクさんがフリから目覚めたのを見て、起きた。


「ケッ! アナシは相変わらずトロくせぇなっ!!」


 僕が一番最後だったのを確認して宮坂くんがそう言うけど、誰も反応しない。みんながどうしてこんな所に居るのか不思議がっているようだ。


 そこに、甲冑を着た人たちがガチャガチャと音を立てて僕たちの前に整列する。

 その中の一人が大声を出して僕たちに言った。


「静まれいっ!! 勇者の方々に申し上げる! コレより我が国の王より説明がありますっ!! ご静聴くださる事を願います! 騒いだ方は我々が物理的に対処する事となりますので、どうかよろしくお願いしますっ!!」


 拡声器なんか目じゃないぐらいの大声だったよ。体育教師の片山先生もお腹から声を出して煩いぐらいだと思ってたけど、片山先生の声が子守唄に感じるぐらいの大声だった。もしもここが教室だったら窓ガラスがビリビリと震えてただろうね。


 そんな感想を抱きながらも僕とサイクさんは注意深く一歩前に出てきた壮年のおじさんを見る。


「勇者の方々に申し上げる。余がグレゴリー王国第六代国王、ジルベルト·グレゴリーである。先ずは謝罪を致そう。このように無理矢理、我が国の都合によって召喚してしまった事を申し訳なく思う。が、もはや我が国も切羽詰まっておるのだ。魔族だけでなく、魔族の属国となってしまった隣国からの脅威も日々、増してきており我が国としては民を守る為に致し方なく召喚の儀を執り行なったのだ…… 済まぬが勇者の方々よ、どうか我が国に力を貸していただきたい! 勿論、平和が訪れたならば元の世界に戻すと約束しよう! だが、この国に留まりたいと言うならばそれも約束する! なので頼む、我が国を窮地より救ってくれ!」


 助けを頼むのに随分と偉そうな言い方だよね。僕はコソッとサイクさんと目を合わせて頷きあった。この王様の言う事は全部とは言わないけどウソなんだろうってお互いに確信したんだ。

 気絶したフリをしてた時の会話も聞いてたからね。


 王様の言葉に反応したのはクラスの上位存在である太川くんだった。


「ちょっと待ってくれ。助けてくれと言われても俺たちは平和な国で育ったただの学生だ。そんな俺たちがこの国を助けられるとは思わないが?」


 太川くんが正論を述べる。僕を虐める嫌なヤツだけど言ってる事はまともだ。


「そこは私が説明しましょう、勇者様方。私はこの国の宰相をつとめておりますチャガ·スラームと申します。召喚の儀によって我が国へ来られた皆様には強力な力を得ておられるのです。これより皆様が得た力を調べさせて頂きたいのですが、よろしいでしょうかな?」


「ふん! そんな力なんか本当にあるのかよ?」


 宮坂くんが文句を言ってる。宮坂くんは何かにつけて文句を言うヤツだからね。違う世界に来てもそれは変わらないみたいだ。


「ミヤ、ワタシは調べて貰っても良いと思うよ」


 そんな宮坂くんに花川さんがそう言ってる。花川さんは太川くんの彼女だ。


「そうだよ、ミャーくん。私も調べて貰おうっと!」


 宮坂くんの彼女の玉城さんもそう言うと宮坂くんも渋々納得したようだ。


「それでは、お一人ずつコチラの騎士の前に来ていただけますかな? この騎士の持つ水晶に手を触れてください」


 こうして、僕たちはステータスを調べられる事になったんだ……

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