第2話 それが、華やぎの
3日になり、
まだ三が日なこともあるので、お惣菜を始め日替わりのお料理はおせちに入る定番のものにする。お惣菜は子孫繁栄の数の子、家族・家業の繁栄のたたきごぼう、
今ではおせち料理にもいろいろな変わり種もあるが、そういうものこそ百貨店のおせちにはふんだんに詰まっている。なので「はなやぎ」では基本のものを提供するのだ。おせちの数々に込められた意味を大切にしたい。
そして、3日の今日だけお
口開けのお客さまは
高階さんはぶりの照り焼きと八幡巻き、青菜炒めを注文した。まずはお屠蘇で邪気を払い、そのあとはいつものサマーゴッデスのハイボールだ。
今日の青菜はちぢみほうれん草である。冬の寒さに当たって葉が縮んで厚くなったほうれん草は甘さを蓄え、冬ならではのご
「女将は正月休み、どうしとったん。旅行とか?」
「親戚のお宅にお邪魔して宴会ですよ」
「あー、ほんならお年玉用意したりとか」
「はい。小さくは無いですけど、子どもがいますからね。それはもうきっちりと」
姪っ子のふたりは世都と
「親戚の子かぁ。人数多かったらお年玉も大変そうやな。大きなったら金額も増えるやろうし」
「そうですねぇ。でもうちは幸いそこまでは。気楽なもんです。宴会も楽しかったですよ」
「それやったら良かったわ。やっぱり年初めはええことあって欲しいよなぁ」
「そうですね。高階さんはどうしてはったんですか?」
「俺も実家帰ったりとかいろいろやわな。ま、あんま代わり映えせんわ」
「それができるんが、幸せって気がしますねぇ」
「せやな」
世都と龍ちゃんは、その幸せを
自分たちがまだ生きていても良い証明、人に必要としてもらえている実感、そんな人間としての
閉店時間の23時が近付き、もう飲み物もオーダーストップしている。お客さまも帰って、世都と
「あ〜、今年も無事に新しい年を始められたねぇ」
「そやな。何や気が引き締まるわ。今年もがんばろって」
「そやね。龍平くん、……龍ちゃん、あらためて、今年もよろしくね」
「うん、こちらこそ、姉ちゃん」
そうしていると、がちゃりとドアが開いた。カウンタ内にいた世都はとっさに顔を上げる。立っていたのは高階さんだった。
「あら、高階さん。どうしはりました? お忘れ物ですか?」
世都が目を丸くすると、高階さんは「いやいや」と首を振った。
「もう閉店やのに済まんな。ちょっと邪魔してええか?」
「ええ、構いませんよ。どうぞ」
世都は作業台を拭いていたふきんをその場に置き、フロアに出て行った。すると高階さんが入って来て、続いてふたりの男女が姿を現した。世都は目を見張る。
「……お父さん、お母さん?」
予想もしなかった人物の来訪だった。龍ちゃんも「え?」と顔を上げた。
両親は気まずそうな表情で、入って来たばかりの場所で佇んでいた。
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